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好きな人がパーティを追放された  作者: myano
未開拓地探索編

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剣+魔法

 魔導書を冒険者ギルドに持ち帰ってから、およそ1か月が経った。

 その間、俺たちは日帰りクエストを受ける日々を過ごしている。

 こうすることで、ギルドの職員たちが毎日魔導書を書き写すことができるのだ。

 もうすぐ写し終わるらしいので、そうなれば昼間はミレナが持ち歩くことになるだろう。


 クエストの休憩中、ミレナが真剣な表情で魔導書の写本を読んでいた。

 彼女が本から目を離し、「ふうっ」と息をついたタイミングを見計らって声をかける。


「上級魔法?」

「うん。感覚がよく分からなくて……」


 ミレナはそう言うと、上級魔法を書き写したページを俺に見せてくれる。

 綺麗で可愛らしい、丸みを帯びた文字に、思わずドキッとしてしまう。


 書かれている内容を見たが、さっぱり分からない。

 ミレナは俺の様子を見て「ふふっ」と笑うと、ページの上から順に説明を始める。

 正直、教えてもらっても全然理解できなかったが、伝えようとしてくれたことがこの上なく嬉しかった。


 ミレナが魔法の練習をしていると聞くと、根をつめて努力する彼女の姿が想起される。

 顔色からして大丈夫そうだが、念のため訊いておこう。

「体調は大丈夫? 前みたいに無理してない?」

「大丈夫だよ。……中級魔法の時は、ご心配をおかけしました」


 一瞬の間を置いて、二人同時に吹き出す。

 よほど可笑しかったのか、ミレナの目元には涙が浮かんでいた。


「二人とも、楽しそうだね」

「何の話をしていたんだい?」

 リリアとゼフレンも会話に加わり、俺たちは輪になる。

 こうすることで、会話しながらでも周囲を警戒することができるのだ。


「グレインに魔法を教えてたの。教え方が悪かったのか、全然理解してくれなかったけど」

「ミレナ先生! いきなり上級魔法は無茶です!」

「グレインは魔法の才能が無さそうだからなぁ……。そうだ! お兄ちゃんも魔法の練習をしてみない? 初級魔法なら使えると思うんだ」

「ええっ!?」


 ゼフレンが目を見開く。

 リリアだけでなくミレナもうなずいているので、本当に見込みがあるみたいだ。

 そういえば、二人は以前にも『ゼフレンは練習すれば初級魔法ぐらいは使えるかもしれない』と言っていたな。

 そして俺はその時から見込みなし。悲しくなってきた。


「ミレナがいれば十分じゃないかな? それに、剣の攻撃と魔法を使い分けるなんて、僕には無理だと思う」

「それなら、剣に属性魔法をまとわせるのはどうかな? うまく使いこなせば、攻撃の幅が広がるはず」


 武器に属性魔法をまとわせる戦い方は存在する。

 王都では、剣や槍に、炎か電撃属性の魔法を組み合わせているのをよく見かけた。ふと、ムチに電撃魔法を流している人がいて、なるほどと思ったことを思い出す。

 もちろん、魔力や魔法の効果――炎や電気、温度変化など――に耐えられる武器でなければならない。

 武器を使い分ける人もいるようだ。


「なるほど……。それなら、まあ」

 俺の提案に、ゼフレンは微妙な表情を浮かべながらうなずく。

 さっきまでは『絶対ムリ』と言いたげな顔だったので、若干前向きになったのかな?


 ゼフレンがミレナから写本を受け取り、パラパラとめくる。

 リリアが彼の後ろに回り、肩越しに本をのぞき込んだ。


「水属性以外の魔法も書き写したんだね」

「うん。初級魔法だけね。何かの役に立てば、と思って」

「へぇ~。誰かと一緒に使いたかった?」

「ち、違うから!」


 なぜか、ミレナが顔を真っ赤にして俺の方を見る。

 彼女の反応を見て、リリアがニヤリと笑った。


「あれれ? てっきりあたしにも攻撃魔法を使ってほしいのかと思ったんだけどな~。ミレナは誰と一緒に使いたかったの?」

「もうっ!」

 ミレナは口を尖らせてそっぽを向く。

 リリアもやりすぎたと思ったのか、ミレナの隣に駆け寄って「ゴメンゴメン。もう余計なこと言わないからゆるして」と謝罪していた。


 ……平和だな。

 ゼフレンが炎属性魔法のページに真剣なまなざしを向ける隣で、俺はそんなことを考えていた。



 翌日、俺たちはフェルドリッジ伯爵家の屋敷に呼び出された。

 最近は中庭で会うことが多かったが、今日は珍しく、大きめの応接室に通される。確か、中央に大きな円卓が置かれている部屋だったはず。


 使用人が部屋の扉を開くと、正面に座るカティア様の姿が目に入った。

 この部屋にも高級そうな調度品が数多く置かれているが、カティア様の前ではどれも霞んで見える。彼女はそれほど圧倒的な存在感と輝きを放っていた。


「失礼いたしま――す。本日はお招きくださり、ありがとうございます」

 カティア様に気を取られて気づかなかったが、部屋には先客がいた。彼らは入口から見て左側に並んで座っている。

 先客の存在に驚いたせいで、言葉が途切れそうになった。それでも何とか最後まで紡ぎ切り、頭を下げる。


「――っ!」

 俺の隣で、ミレナが息を呑んだ。

 彼女は目を丸くして、先客の一人、赤髪の男性を見つめていた。

 彼も愕然とした表情を浮かべている。


 ――レオディス……。


 そこにいたのは、俺たちが前に所属していたパーティのリーダー。

 そして、ミレナを追放した男、レオディスだった。

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