4月7日 2人目
今日は、情報社会Iという科目の授業だった。50人くらいいた私たちは、10グループに別れた話し合っていた。先生は、時計を見ながら、終了時刻を測っていた。
翆 「こっちどうする?」
私 「うーん。そのままでいいよ」
翆 「おっけい」
今、私の目の前にいるのは、畔上翆。同じ学部の1年だ。たまたま、同じ班になり、プレイングストーミングをしていた。5人班だが、他の人はあまり興味がないようだった。開始10分ほどで意見がまとまり、私たちは先生が話すまで休憩をしていた。
翆 「矢田さんは、一人暮らし?」
私 「うん。翆は?」
会って、まだ10分しか経っていないけど、もう下の名前で呼んでいる自分が凄く感じた。他のグループも、少しずつ終わろうとしていた。
翆 「私は、実家だよ」
私 「実家いいな」
翆 「そう?」
翆は、どこか嫌そうな顔をした。
私 「だって、洗濯とか掃除してくれるじゃない」
翆 「まぁね。でも、一人になりたい時も多いけどね」
私 「そんなものかぁ」
今まで、実家暮らしで一人になりたいと思ったことがなかった私は、翆の感覚が不思議だった。
翆 「矢田さんは、東京の人じゃないの?」
私 「違うよ。長野!」
翆 「長野なんだ。私の友だちにも長野の人いたな」
昔を思い出すかのように、天井を見つめていた。
私 「そっか。意外と、こっちから東京行く人結構多いよ」
翆 「なるほどね」
私 「これから、仲良くしてね」
唐突に挨拶をしてみた。
翆 「こっちこそ。仲良い人できた?」
私 「いないね。まだ、学部で話した人いなくて」
翆 「そっかぁ。私、何人か知ってる人いるから、また紹介するよ」
私 「うーん」
翠の言ってくれたことはありがたいが、自分で付き合う人くらい、自分で決めたいというのが本音だ。
翆 「どうしたの?」
私 「私、仲良くなれそうか自分で判断したいから、紹介してもらっても拒んじゃうかもなって」
交友関係を広げても、対立するだけでいいことがない場面も増える。だったら、自分で決める方がいいという考えだ。
翆 「そうなの?そんな人初めてだ。ハハハ」
私 「そう?私変なのかな?」
翆 「変だよ」
先生は、ブレイングストーミングの終了時刻を合図した。私たちの班の人たちも、先生の方に目をやった。




