襲撃
海賊討伐には約700人参加しています。
作戦開始からしばらく経った囮の商船内部
「あー、暇だ。」
ラッガーがゴロゴロしていた。
「さっさと来てくれよ、海賊。こんな無防備な商船はなかなかねぇだろ。」
「無防備過ぎるから怪しまれるんだ。護衛の船が二隻ぐらい入れた方が良かったかもな。」
「龍儀、よく冷静でいられるなぁ。」
「こういうのは我慢比べだ。先に動いた方の負けだ。・・・ユビスマ4!」
「!?」
ラッガーが龍儀を見るとリチェリアや兵士達とユビスマしている龍儀がいた。
囮から数キロ離れた遊撃部隊。遊撃部隊はチームごとに5隻の船で構成されていた。βを真ん中に右にα、左にγが配置されている。遊撃部隊同士も互いに距離を取って追跡していた。
遊撃部隊α
「なかなか来ませんね、海賊。」
「えぇ、相手は用心深い海賊よ。そう簡単には罠にはかからないわ。」
「そうね。用心深いからこそ、今まで捕まえることが出来なかったんだから。」
ディーネやキラリネ、ルリカ達が海賊の動向を探っていた。
「そういえばキラリネさん、なんでこの部隊だけ女性オンリー?」
「私の趣味よ。」
遊撃部隊β
「大丈夫でしょうか?」
「わからんな。しかし、何があっても大丈夫なようにするだけだ。栄龍儀の噂は聞いている。マスターに気に入られる奴などなかなかいないからな。」
「モルガンさん。」
「気を引き締めろ。もし、囮が襲われたら真っ先に我々遊撃部隊βが迎え撃つことになっているのだからな。」
「はい!」
「ほぅ、元気だな、ボウズ。」
「え?」
「おっと、自己紹介してなかったか。俺はオルシアのギルド、ヴァリエントのギルドマスターのゴルディだ。頼りにしているぜ、少年。」
ゴルディと名乗った男は筋骨粒々のエルフだった。
遊撃部隊γ
「さっさと来~い、海賊~。」
「ははははは、そう慌てなさんな。」
「ん?誰、おじいちゃん?」
「儂はニルクスでギルド、アンファトロスのギルドマスターをしておる。ノリオ・フリウスという。よろしく頼むぞ。ちなみに、恩恵は無い。」
「う、うん。よろしく。」
ライカはヨボヨボのおじいちゃん、ノリオと握手した。
囮の商船内部
「ユビスマ2!」
ラッガーもユビスマに参加していた。
そこに兵士の一人が入ってきた。
「龍儀さん、前方に奇妙な船が。」
龍儀達が甲板に出ると前方に船が向かって右に船首を向け一隻止まっていた。その船は全く動くことなく、誰もいないように見える。
「どうしますか?」
「念のためだ。進路を左へ転回、前方の船から距離をとる。遊撃部隊にもこのことを報告しろ。」
「了解!」
兵士達が龍儀の指示通りに動いた瞬間、後方から大きな衝突音が聞こえてきた。
遊撃部隊β
「モルガンさん、囮の商船が止まりました。」
「何。囮から連絡は?」
「まだ・・・」
ドォン!
兵士の一人が報告しようとした瞬間、何かが船にぶつかってきた。モルガン達が甲板に出ると遊撃船より大きな船が衝突してきたのだ。モルガンが周りを見ると全ての遊撃船が襲撃を受けていた。
「バカな!我々に気付かれずにここまで来れるのか!」
モルガンが状況を確認しようとすると大きな船から大量の男達が攻めてきた。
「襲撃だー!海賊の襲撃だ!」
「そうきたか。しかし、予想範囲内。全員、応戦しろ!」
「了解!」
モルガンの指示でグレン達は海賊に向かった。
遊撃部隊γ
こちらもβと同時に襲撃を受けていた。
「うわっ!いきなりきた!」
「まさか、透明化魔法。しかし、これ程の規模の透明化魔法なんて聞いたことがない。」
海賊の襲撃にトルクラ達は応戦していた。海賊の中には人間だけでなく獣人も多くいた。
「獣人もいるよ!」
「考えるのは後にしろ!今は倒すことだけ考えろ!」
そう言ってノリオはヨボヨボからムキムキになって海賊達を一掃していた。
「うわ~。ノリオおじいちゃん、凄い。」
遊撃部隊α
こちらも他の遊撃部隊と同じタイミングで襲撃を受けていた。
「ちょっと、いきなり出てきたんだけど!」
「そうね。本当に神出鬼没ね。」
キラリネが光の球で海賊達を一掃していると急に違和感を感じた。体に力が入らなくなったのだ。力が抜けて倒れるキラリネに駆け寄ろうとしたディーネも力が抜けて倒れてしまった。
「嘘でしよ。なんで。」
ディーネが周りを見ると戦っている仲間も次々と倒れていった。ルリカはその様子を見た後、ある一点を見つめ炎を放つと何もないところから風が発生して炎を消した。そして、そこから一人の男が出てきた。
「え、透明化魔法。」
「それもかなりの高度な透明化魔法よ。気配まで消していた。僅かな魔力でやっと分かるほどにね。」
「お褒めにあずかり光栄だぜ、ハイエルフのお嬢様。俺はこの透明化魔法に改良に改良を重ね、俺はもちろん、半径100m以内の任意のもの全てを透明化させることに成功した。これぞ、完全透明化魔法!」
「なるほど、神出鬼没の理由はあなたね。」
「その通り。」
ルリカに自慢気に話していた透明化魔法を使う海賊に仲間が駆け寄ってきた。
「それ、ばらしたらだめなやつじゃ。」
「・・・しまった。つい、調子に乗って。」
「おい!」
遊撃部隊β
「このまま海賊を抑えこめ!」
「はい!」
モルガン達は海賊に対し、有利に戦っていた。グレンも昔に比べたら格段に強くなっているため、海賊に遅れをとることはなかった。
すると海賊達は遊撃船から退いていった。
「よし!ここの海賊を片付けたら、各チームの援護をする!深追いはしないように!」
モルガン達が次の動きをしようとした瞬間、遊撃船の一隻が爆発した。
「何!」
モルガン達が爆発した遊撃船を見るとその上に誰か飛んでいた。その者は雄々しい翼と太く長い尻尾を持っていた。
「まさか、龍人!」
「嘘ですよね!海賊に龍人がいるなんて!」
グレンや兵士達が驚いていると龍人はこちらを向き、口から火炎弾を放った。それを見てモルガンは素早くシールドを張り防いだ。
「まさか、龍人が海賊にいるとは。私もまだまだだな。」
龍人は静かにモルガン達を見ていた。
遊撃部隊γ
「おっとっと、なかなかやるのぉ、お主。」
ノリオは熊の獣人と闘っていた。
「じいさんもなかなかやるなぁ。」
ノリオは張り手、熊の獣人はパンチのラッシュを続けていた。ライカ達は他の海賊の相手をしていると遊撃部隊βから爆煙が立ち上っているのが見えた。
「え、何があったの!?」
「今は目の前に集中してください!」
トルクラ達が戦いを続けているとノリオが元のヨボヨボに戻っていた。
「はぁ、年には勝てんのぉ。」
「あぁ、全盛期のあんたなら勝てたかもな。」
熊の獣人がノリオにトドメをさそうとするとライカがノリオを助けた。熊の獣人は二人を追撃しようとするが、トルクラが光の刃で牽制した。
「大丈夫だよ、おじいちゃん。あたしが守る!」
「勇ましいじゃねぇか!守ってみろぉ!」
ライカは熊の獣人に向かった。
囮の商船内
遊撃部隊に何かあったと感じた龍儀達はすぐに戻ろうとすると止まっていた船が急にこちらに向かって突撃してきた。商船に衝突した船から海賊が大量に乗り込もうとした。
「リチェ、ラッガー!」
「えぇ!」
「おぅ!」
龍儀の声かけに応じた二人は逸早く船に乗り込んだ。
船には武器を持った海賊が大量にいた。三人はすぐさま、海賊達を一掃した。その時、三人に水の球が迫ってきた。避けた三人が見るとガタイのいい男が水の球を浮かべながら立っていた。
「いいねぇ!強そうな奴がいるじゃねぇか。」
その男と睨みあっていると遊撃部隊の船が一隻爆発とともに沈んだ。三人は驚きその方向を見た。
「お、派手にやってるなぁ。こっちも派手にやろうぜ!」
「龍儀、リチェリア。お前達はあっちを頼む。こっちは俺が相手する。」
「わかった。行くぞ、リチェ。」
「はい。」
「行かせるかよぉ!」
「悪いがあんたの相手はこの俺!一番熱い男、ラッガーだ!」
そう言ってラッガーは炎の球を男に向けて撃った。男は水の盾で防御し、その隙にリチェリアに乗った龍儀が遊撃部隊へ向かっていった。
「・・・一番熱い男ねぇ。」
「あぁ!何がおかしい!」
「いや、あんたよりうちのガットさんの方がもっと熱いぜ!」
「てめえ、言ってくれるじゃねぇか。」
「あんたごとき、俺が沈めてやる。」
「やってみろぉ!」
男は水を、ラッガーは炎を両手に纏い殴り合いを始めた。
遊撃部隊α
甲板でルリカと透明化魔法を使う男が戦っていた。男は氷で作ったナイフを投げまくり、ルリカはそれを弾きながら魔法を放った。男が下がったのでルリカが進むと足に激痛がはしった。足を見ると氷でできた棘が無数にあり、中には透明化しているのもあった。ルリカが一瞬進むのを躊躇した瞬間、足に違和感を感じ、力が抜けて倒れた。
「効くだろそれ。そいつはクラゲのモンスターから抽出した毒だ。死にはしないが神経毒だから体がしばらく動かなくなる。透明化魔法のスペシャリストが透明化しない時は他に隠したいものがある時だぜ。」
遊撃部隊αの戦いは海賊の勝利に終わった。
遊撃部隊γ
「オラオラァ、どうしたぁ!守ってやるんじゃないのかぁ!」
熊の獣人の攻撃を避けるばかりのライカ。男はラッシュを止めることなくライカを追い詰めていく。
「お前、痛い目みるの嫌がってるだろ。」
「!」
男の言葉にライカが一瞬動きを止めてしまった。男はその隙を逃さず、ライカを殴り飛ばした。飛ばされたライカは咳き込み、迫ってくる男を見て退いた。
「なんだ?もう戦意喪失か。すっかり、怯えた目をしちゃってよぉ。」
「ひっ!こ、来ないで。いや。痛いのもういや。」
ライカに迫る男にトルクラは雷を放つが男は雷を耐え、ライカに迫る。
「戦いなんだから痛いのは当然だろぉ。痛いのが嫌ならひっそり暮らしているんだな。」
トルクラが光の剣で斬りかかると男はジャンプして避けた。そのまま、ライカの前に立つトルクラ。ライカを守るように水のシールドを張り、光の刃を男に放った。男はそれ全て弾き、トルクラ達に迫ろうとすると海賊の一人が男に声をかけた。すると、男は上を向いた後、青ざめ退いていった。
その様子を見たトルクラが上を見ると龍人がいた。
遊撃部隊β
龍人の攻撃をシールドで防御しつつ、海賊達を一掃するモルガン、龍人に風や水の魔法で応戦するゴルディ。グレンはそんな二人を見ながら戦っていた。しかし、疲労がたまったのか最初のようなキレはなくなり、海賊相手に押されていた。
すると、龍人は攻撃を止め一点を見つめその方向に向かった。
龍儀とリチェリアが遊撃部隊に向かっていると前から火炎弾が向かってきた。リチェリアがそれらを避けて見ると龍人が立ちはだかっていた。
「あれは、ミネルヴァと同じ。」
「そう、龍人よ。まさか、海賊の中にいたなんて。」
「・・・マジか。レベル999とか初めて見た。まぁ、レベルが全てじゃねぇ。来い、邪魔はさせん。」
そう言って口から火炎弾を放った。リチェリアは避けたが龍人は周りに雷を発生させ龍儀達に放った。
「龍儀、ここは私が引き受ける。あなたは行って。」
「わかった。」
リチェリアは風を作り、龍儀を遊撃船に飛ばした。
龍人はストームブレスを放つがリチェリアは風の盾で防ぎ、龍人に近づいた。そのままレイピアに氷を纏い、龍人を斬ろうとした。しかし、龍人は手に炎を纏い氷ごとレイピアを粉砕した。そして、リチェリアの両手を掴んだ。
「風魔法を上手く使って飛んでるようだが、ここまでが限界。悪いが沈んでもらう。」
そう言って龍人は雷を纏いリチェリアが見たこと無い技を放った。
《プラズマブレス》
雷とともに放たれた炎と風はリチェリアを包み、彼女を海に落とした。
「なんとか勝てた。こいつは早めに終わらせねぇと。」
リチェリアが沈んだのを確認した龍人は遊撃船の上に行き、大きく息を吸った。
遊撃部隊β
海賊と戦っているグレン達のところに龍儀が飛んできた。龍儀は着くと同時にグレンと戦っていた海賊を斬った。
「龍儀さん!」
「龍儀!そっちの状況は!?」
「囮部隊も襲撃を受けた。今、ラッガー達が抗戦している!」
「やはり全部隊が襲撃を受けているか。ここまでは予想範囲内だが、龍人が相手は予想外だ。」
龍儀がモルガン達とともに戦っていると龍人のいた方から轟音が鳴り響いた。龍人がその方向を見るとリチェリアの姿はなく、龍人が真上にやってきた。
すると、海賊達が一斉に退いていった。その様子を見た龍儀は素早く指示を出した。
「全員、防御魔法を使え!ヤバいのがくるぞ!」
龍儀の指示でモルガン達はシールドを張った。他の遊撃部隊も龍儀の声が聞こえたかどうかはわからないがシールドを張っていた。
「もう遅い。」
龍人は大きく息を吸った後、さっきとは違う技を放った。
《メテオブレス》
土魔法で作った岩石に炎や雷を纏わせ、下にいる遊撃部隊全てに向かって放った。シールドで防いでいるが攻撃に耐えれず、割れてしまい、船に命中した。
囮部隊
「《ボルケーノラッシュ》!」
炎を纏ったラッガーが男を倒していた。
「くそ~。やるじゃねぇか、ダークエルフ。」
「いや、俺は普通のエルフ。こいつはただの日焼けだ。」
「そうかい。」
海賊も粗方倒し、座り込んだ瞬間、遊撃部隊の方で爆発が起こった。ラッガー達が見ると遊撃部隊の船は燃え、壊滅状態だった。
「なんだこれ?」
「あぁ、ギルガザムネのメテオブレスだな。」
「な、ギルガザムネ?」
「あぁ、あんた達がどれほど強くても勝てない相手はいる。うちの海賊にはそんな奴が三人いる。そのうちの一人がギルガザムネ、龍人だ。」
「マジか、龍人がいるのか。」
「あぁ。」
「龍儀・・・」
ラッガーはただ、沈む遊撃部隊を見ることしか出来なかった。




