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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第68話 思想の衝突

 山の空気は、まだ土と血の匂いが混ざっていた。


 救助は続いている。


 だが、大きな混乱は収まりつつあった。


 負傷者は整理され。


 重症者は神殿へ。


 軽傷者は連盟が対応。


 国家が周囲を封鎖する。


 機能している。


 だが――


 完璧ではない。


 助けられなかった者もいる。


 その現実が、重く残っていた。


 村の外れ。


 少し離れた場所で、リオネルが立っていた。


 静かに山を見ている。


 俺はその隣に立つ。


「どうだった」


 短く聞く。


 リオネルは少し考えてから言った。


「予想以上です」


 一拍。


「連盟は、思ったより機能している」


 否定ではない。


 評価だった。


 だが。


「しかし」


 彼は続ける。


「不安定です」


 俺は何も言わない。


 彼は淡々と話す。


「判断のばらつき」


「知識の精度差」


「個人依存」


「すべて危険要因です」


 事実だ。


 連盟は完璧ではない。


 むしろ不完全だ。


 リオネルが振り返る。


「我々の方が安定しています」


 医術連合。


 高度な知識。


 統一された判断。


 再現性。


「誰がやっても同じ結果になる」


 それが彼らの強み。


 俺は言う。


「遅い」


 リオネルの目が細くなる。


「現場は待たない」


「だからミスが起きる」


 リオネルは即座に返す。


「遅れても、確実に救う方がいい」


 正論だ。


 だが。


 俺は首を振る。


「間に合わなければ意味がない」


 沈黙。


 風が吹く。


 リオネルが静かに言う。


「あなたは」


 一拍。


「人を信じすぎている」


 その言葉は、核心だった。


「人は間違える」


「恐怖で判断を誤る」


「知識を誤用する」


 彼は続ける。


「だから管理する」


 知識を。


 判断を。


 人を。


 それが彼の思想。


 俺は言う。


「お前は人を信じてない」


 リオネルは否定しない。


「ええ」


 静かな肯定。


「信じていません」


 一切の迷いがない。


 だから強い。


 だから冷たい。


「だから仕組みで縛る」


「それが安全です」


 俺は少し考える。


 そして言う。


「俺も信じてない」


 リオネルがわずかに驚く。


 ミナトも、少し離れた場所で顔を上げる。


 俺は続ける。


「人は間違える」


「恐怖で崩れる」


「判断を誤る」


 同じ認識。


 だが。


「だから構造を作る」


 リオネルの目が細くなる。


「同じでは?」


「違う」


 短く言う。


「お前は縛る」


「俺は動かす」


 風が止まる。


「管理は止める」


「構造は流す」


 リオネルが静かに言う。


「曖昧です」


「現実だ」


 俺は地面を指す。


「今回の現場」


「全員が専門家だったか?」


「違う」


「でも回った」


 連盟。


 国家。


 神殿。


 医術連合。


 全員が違う役割で動いた。


「完全じゃない」


「でも止まらなかった」


 それが重要だ。


 リオネルが言う。


「犠牲が出た」


「出た」


 否定しない。


 だからこそ。


「ゼロは無理だ」


 沈黙。


 これは、この物語の核心。


「だから」


 俺は続ける。


「止まらない仕組みにする」


 リオネルが静かに息を吐く。


「……理想論です」


「現実だ」


 俺は言う。


「今回、回った」


 事実。


 それ以上でも、それ以下でもない。


 長い沈黙。


 やがてリオネルが言った。


「あなたの構造は」


 一拍。


「不完全です」


「知ってる」


 即答。


「だが」


 彼は続ける。


「拡張性がある」


 ノアが小さく笑う。


「そこに気付くか」


 リオネルは静かに頷く。


「管理は完成形です」


「だが変わりにくい」


「構造は未完成」


「だが変えられる」


 その言葉は、評価だった。


 完全な否定ではない。


 ミナトが小さく呟く。


「……じゃあ」


 リオネルが言う。


「結論は出ています」


 全員が彼を見る。


 彼は静かに言った。


「どちらも必要です」


 風が通る。


 それは。


 完全な勝敗ではなかった。


 だが。


 方向は決まった。


 管理だけでは足りない。


 構造だけでも足りない。


 その両方が――


 世界を支える。


 リオネルは少しだけ笑った。


「気に入りませんが」


 一拍。


「認めましょう」


 そして俺を見る。


「あなたのやり方は」


「世界を変える可能性がある」


 評価。


 そして警戒。


 それでいい。


 世界は単純じゃない。


 だから。


 構造が必要だ。


 山の空に、ようやく青が戻り始めていた。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


あと数話で完結となります。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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