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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第65話 国家の誘惑

 王都からの使者が来たのは、その日の午後だった。


 整った鎧。


 無駄のない動き。


 そして、丁寧な礼。


「アルヴェイン殿からの書簡です」


 封蝋付きの文書が差し出される。


 連盟拠点の会議室に、再び全員が集まった。


 ミナトが封を切る。


 静かに読み上げる。


「連盟の活動は国家として高く評価する」


 誰も否定しない。


 それは事実だ。


「よって」


 一拍。


「連盟を国家支援機構として正式編入する提案を行う」


 空気が止まる。


「……編入?」


 若手が呟く。


 ミナトの手がわずかに震える。


 続きが読まれる。


「資金提供」


「人員増強」


「教育制度の整備」


「全国ネットワーク化」


 魅力的だった。


 あまりにも。


 若手の一人が言う。


「それ、めちゃくちゃ良くないですか?」


 別の者も続く。


「安定する」


「今みたいにギリギリで回さなくていい」


「もっと多くの人を助けられる」


 正論だった。


 誰もすぐには否定できない。


 ノアが静かに言う。


「合理的ではある」


 国家の資源は圧倒的だ。


 資金。


 物流。


 人材。


 それが使えるなら、できることは増える。


 ミナトが俺を見る。


「……どう思います」


 視線は揺れている。


 責任を減らせる。


 判断の重さからも解放される。


 俺は答えない。


 先にアルヴェインの文書の続きを読む。


「ただし」


 部屋が静まる。


「活動方針は国家基準に従うこと」


 若手の顔が少し曇る。


「指揮系統は国家に統一」


「報告義務の強化」


 つまり。


 自由は減る。


 ベテランが低く言う。


「……管理されるな」


 ミナトが黙る。


 その時、扉の外から声がした。


「失礼」


 リオネルだった。


 彼は静かに中に入る。


「興味深い提案ですね」


 誰も止めない。


 彼は自然に話に加わる。


「国家の庇護」


「安定した資源」


 一拍。


「多くの命を救えるでしょう」


 若手が頷く。


「ですよね」


 リオネルは続ける。


「ただし」


 アルヴェインの文書と同じ言葉。


「自由は失われる」


 ミナトが顔を上げる。


 リオネルは穏やかに言う。


「それでも良いのでは?」


 その言葉は、優しかった。


「すべてを自分で背負う必要はありません」


 任せればいい。


 国家に。


 制度に。


 それは楽だ。


 そして正しい。


 ミナトの手が震える。


「……でも」


 言葉が出ない。


 俺は静かに言った。


「便利だな」


 全員がこちらを見る。


「資金も」


「人も」


「権威も」


 一拍。


「全部手に入る」


 否定はしない。


 だが。


「代わりに」


 短く言う。


「動きが遅くなる」


 ミナトが息を呑む。


 それは、この物語の核心だった。


 疫病。


 災害。


 現場は待たない。


 国家は強い。


 だが。


 決定が遅い。


 責任が重い。


 手続きが必要だ。


 リオネルが静かに言う。


「安定と引き換えです」


 その通りだ。


 ベテランが言う。


「どっちを取るかだな」


 ミナトが俯く。


 迷っている。


 正解はない。


 外からの圧力。


 内側の不安。


 すべてが混ざる。


 その時、遠くで鐘が鳴った。


 低い音。


 警報ではない。


 だが。


 異変の合図。


 ノアが窓の外を見る。


「……煙?」


 山の方角。


 黒い煙が上がっている。


 ミナトが顔を上げる。


「まさか」


 リオネルが静かに言った。


「来ましたね」


 一拍。


「証明の時間です」


 議論は終わる。


 次は――


 **現場だ。**

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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