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回復支援職を追放したら、Sランクパーティ全員が死にかけました 〜「数値に出ない支援」が最強だったと気づいても、戦わない俺はもう戻らない〜  作者: 山奥たける


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第47話 管理された善意

 国家の通達は、簡潔だった。


『支援基準・暫定公認。試験地域指定』


 対象は三つの街。


 ルドナも含まれていた。


「……早いな」


 カイルが低く言う。


 アルヴェインは、即座には動かないと言った。


 だが国家は、空白を放置しない。


 試験運用。


 監察官常駐。


 報告義務の厳格化。


「質の保証、だな」


 リーナが皮肉混じりに言う。


 ルドナの治療所は、以前より整然としていた。


 書類が増えた。


 確認印が増えた。


 報告書が、倍になった。


「判断前に、記録を」


 監察官が静かに言う。


「例外処置は事前承認を」


「事前?」


 ミナトが目を見開く。


「緊急時は?」


「緊急の定義を明確に」


 言葉は正しい。


 すべて、正しい。


 だが。


 魔物襲撃が起きた。


 負傷者五名。


 うち一名が出血多量。


「例外処置を!」


 神官が叫ぶ。


「承認を」


 監察官が冷静に言う。


「時間がない!」


「記録を」


 数分。


 わずかな数分。


 止血は間に合った。


 だが。


 処置全体は遅れた。


「……前より遅い」


 ミナトが、唇を噛む。


 基準は守られている。


 誤用もない。


 だが、柔軟性が削がれている。


「改善点として記録を」


 監察官は淡々と告げる。


 悪意はない。


 本気で、より良くしようとしている。


 夜。


 俺はアルヴェインと向き合う。


「報告は受けました」


 彼は、疲れた顔をしている。


「どう思います」


「硬い」


 即答。


「まだ試験段階です」


「制度は、最初から硬い」


 沈黙。


「柔らかくできます」


「時間がかかる」


「かかります」


 彼は否定しない。


「だが、死者は減る」


「減る保証は?」


 彼は、言葉を選ぶ。


「統計上は」


 そこだ。


 統計。


 俺が見ているのは、現場。


 彼が見ているのは、全体。


「あなたの分散は、現場を強くする」


 アルヴェインは言う。


「だが、地域差が出る」


「出る」


「制度は、平均を上げる」


「下も上も削る」


 視線がぶつかる。


「善意だ」


 俺は言う。


「管理も、分散も」


「ええ」


「だが、善意は形を変える」


 制度は、守る。


 だが、自由を削る。


「あなたは、どうする」


 アルヴェインが問う。


 俺は、答えない。


 その代わりに、ミナトの顔が浮かぶ。


 震えながら判断した夜。


 そして今日、承認を待った顔。


 分散は、痛い。


 制度は、硬い。


 どちらも、正しい。


 だが。


 俺が選んだのは。


 自分で立つ世界だ。


「まだ、終わっていない」


 静かに言う。


 アルヴェインは、目を細めた。


「何を」


「形を」


 制度でもない。


 無秩序でもない。


 第三の形が、必要だ。


 試験運用は続く。


 善意は、管理される。


 だが。


 思想は、まだ消えていない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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