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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第44話 守るための鎖

 王都の庭園は、静かだった。


 形式張った会議ではなく、

 アルヴェインは散策を選んだ。


「敵対したくないのです」


 歩きながら、彼は言う。


「あなたとは」


「しているつもりはありません」


 俺は答える。


「分かっています」


 穏やかな声。


「だからこそ、困っている」


 池の水面に、風が波紋を作る。


「あなたの思想は、強い」


「強くはない」


「強い」


 即答だった。


「強いから、広がる」


 否定はできない。


「広がった思想は、力になります」


 彼は続ける。


「力は、構造を必要とする」


「囲うために?」


「守るために」


 言葉の選び方が、誠実すぎる。


「死者が出ました」


 彼は言う。


「あなたは撤回しなかった」


「はい」


「それは覚悟です」


 一拍。


「だが、覚悟は制度にならない」


 そこだ。


 個人の覚悟は、個人で完結する。


 国家は、それを許さない。


「あなたが倒れたら?」


 アルヴェインは問う。


「基準は?」


「残る」


「残りません」


 きっぱり。


「管理されていない思想は、

 必ず歪みます」


 俺は立ち止まる。


「制度は歪まないと?」


「歪みます」


 迷いなく言う。


「ですが、修正できます」


 そこが違う。


「制度は、修正に時間がかかる」


 俺が言う。


「現場は待たない」


「だからこそ、枠を与える」


 視線がぶつかる。


「あなたの分散は、理想です」


「ええ」


「だが、理想は脆い」


「制度は硬い」


「はい」


「硬すぎれば折れる」


「柔らかすぎれば崩れる」


 互いに、理解している。


 敵ではない。


「あなたは」


 アルヴェインが静かに言う。


「唯一無二を否定した」


「はい」


「だが今、あなたは

 “唯一の思想”になりつつある」


 言葉が刺さる。


 分散の象徴。


 それが俺一人なら、矛盾だ。


「制度は、あなたを薄めます」


 彼は続ける。


「思想を殺すためではない」


「均すために」


 均す。


 それは、安定だ。


 だが。


「均された思想は、

 痛みを忘れる」


 俺は言う。


「今回の死は、制度ならどうなります」


「報告書に変わります」


 即答。


「再発防止策が策定されます」


「現場は?」


「従います」


 それが、国家だ。


「俺は」


 息を吐く。


「現場が、自分で考える世界を選んだ」


「そして死者が出た」


「出た」


 沈黙。


「あなたは強い」


 アルヴェインは言う。


「だから、その重さに耐えられる」


 一拍。


「だが、世界は?」


 耐えられるか。


 問いが、深い。


「あなたの思想は、美しい」


「美しさは不要です」


「必要です」


 彼は首を振る。


「人は、美しいものに惹かれる」


「そして、囲う」


「はい」


 否定しない。


 正しい。


 すべて、正しい。


「レオン殿」


 アルヴェインは立ち止まり、真っ直ぐ言った。


「鎖は、必ずしも悪ではない」


 守るための鎖。


 暴走しないための枠。


「あなたは、自由を選んだ」


「はい」


「私は、持続を選ぶ」


 対立だ。


 だが、憎しみはない。


「時間をください」


 俺は言う。


「考えます」


 アルヴェインは、静かに頷いた。


「急ぎません」


 だが、付け加える。


「世界は急ぎます」


 庭園の風が止む。


 自由か。


 持続か。


 分散か。


 制度か。


 思想は、いま試されている。


 戦いではない。


 だが、逃げ場はない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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