そして俺は世界を変えた
目を開けるとそこは夕方、あの時と同じように神社の境内だった。
……また、俺は死に戻ったのだ。
「って! 相手は妹だぞ! これもダメなのかよ!」
一人虚空へと叫ぶ俺の後ろには理子がいた。
「どうしたのまーくん? ねえ見てみて! 理子ね、巫女服に着替えてきたの~!」
「あーっ! 可愛い可愛い! 理子は世界一可愛いよっ!」
「そんな……いざ宇宙一可愛いって言われると……照れる……」
なんてやり取りを繰り広げながらも俺は確信していた。
リア充爆発の呪いも、死に戻りも。
全ては俺の白昼夢なんかではなく、現実の出来事なのだと。
それからというもの、俺は爆発しないように出来るだけ理子と綾の二人と何のフラグも立たないように行動をしてきた。
しかし……。
『まーくんまーくん! 一緒に帰ろ~! あっ! 転んだ理子のおっぱいがまーくんの手に当たっちゃった!』
『……バカやろうっ! そんな昭和のラブコメみたいなことしたら……っ!』
ドッランザアオオオオオオオオオオオオオオオオォオォォォオオオオオオウウウウウウッゥン!!!!!!
そんな不可抗力による爆発死を遂げたり。
またある日は
『お兄ちゃんっ! 見てみて! FITEのゼイバーのコスプレしたの! 可愛い!?』
『お、おう……すげえ完成度だな……金髪のウィッグに青のカラコンがすごく似合っているぞ……』
『でしょでしょ!? ヤバいっしょ!? ねえねえこれで一緒に写真撮ろっ?』
『わっ! バカ! コスプレ美少女とツーショット写真を撮るなんてリア充イベントが起きたら……』
『お兄ちゃん……貴方を……愛して
トッランザアオアアアアアアアアアアアアアアアアァァアァアアアアアアウウウウウウッゥム!!!!!!
なんて具合に意味の分からんことで爆発して体が粉々に弾け飛んだりなんてしていた。
爆発の度に俺は死に戻り、そしてあの日の神社の夕方からやり直しを繰り返していた。
そんな風に美少女2人から毎日毎日生命の危機を感じては逃げ周りつつ、なんとか日々をやり過ごしていた俺は、理子との約束の日曜日を迎えていた。
どうやら神様的判断によれば、理子と二人で買い物に行くというのはギリギリセーフの判定だったらしく、俺はいつ爆発するのだろうかとヒヤヒヤしていたのだが……。
買い物の最中もなるべく濃厚な接触は控え、俺は理子と一緒に帰路についていた。
そして……冒頭の事件が発生したのである。
普段全く外に出ないはずの綾がなぜか俺たちの後をつけてきており、買い物の帰り際に行われた理子の告白とともに乱入してきて、綾自らも俺に告白してきたのだ。
そして美女二人から言い寄られるというリア充イベントによる爆発を回避するため、俺は2人から逃げていたーー。
「ーーくっ! 普段全く運動しないから、ちょっと走っただけでもう限界だ……」
理子が告白してくるのは百歩譲ってまだ分かる。
しかし綾よ、お前までどうしたんだ……?
綾は昔から主にゲームで極度の負けず嫌いである。
どこからか知らんが理子が俺に告白するという情報を聞きつけて対抗心を燃やしてきた……?
「……っ! 行き止まりか!?」
細い路地。2人を撒くために入ったそこは行き止まりとなっていた。
後ろを振り返れば、そこにはまるでゾンビのように俺の事を追いかけ回してきた幼馴染と義妹の姿があった。
「まーくん……」
「お兄ちゃん……」
「理子と綾ちゃん」
「私と理子さん」
「「どっちが好きなのッ!?」」
……修羅場、とは正にこのことである。
この際しっかり考えてみるが俺は一体どっちのことが好きなんだろう。
確かに過去に一度は理子の告白にOKをしてキスまでしてしまった……爆発したけど。
しかしアレは雰囲気に流されてしまった感も否めないし……。
一方綾の方はと言えば、この間の夜の一件を思い出す。
綾はまだ幼い。
学校で上手く他人と馴染めないことから考えるに、綾には俺以外に頼れる人がいないのだ。
兄である俺が……綾を守ってあげなければいけない。
そんな庇護欲は好意……いや、愛と言い換えてもいい。
それが妹という家族に抱くものなのか、それとも一人の女の子に抱くものなのかの違いは今の俺にはきちんと分からないが……。
「まーくん! ちゃんと教えてほしい……理子と綾ちゃん、どっちを選ぶの?」
「お兄ちゃん! 男なんだからハッキリしてよね! ギャルゲの主人公じゃないんだからハーレムなんて許されないんだよっ!?」
なんて風に二人から言い寄られる俺。
……2人とも、顔が近いよ?あんまり近づくと俺、爆発しちゃうよ?
そんな俺の……答えは……。
「理子、綾……俺は、俺はっ!」
幼馴染と義妹、二人とも……。
「二人とも……大好きだあああああああああぁあああああああああっ!!!」
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオォオォォォオオオオオオウウウウウウッゥン!!!!!!
ーー西暦20××年。
一人の男の行動により、地球は爆発した。
後にこれは第二次ビックバンと呼ばれ、新たな生命の誕生の礎になるのだった……。
完
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