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第三十章 貴方に会いたくて(77)

楽しんでくれたら幸いです。


※35万PV突破しました。応援してくれる皆様のお陰です。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

(ロゼside)


ーーーーーーこのアラタという少年、何か気に入らないわ。


それが私のアラタという男に対する第一印象であった。


黒髪黒目の有色人種。私たち白人とは違う風体。肉体労働など一度もしたことのないひ弱で華奢な身体。


少なくとも私の記憶にある男性像とはどれも一致しなかった。


こんな男もいるのか。


私は王族でも貴族でもない、ただの平民である少年にみなが心惹かれる理由が分からないでいた。


まるで王子様のようだと皆一様に口を揃える。


私は暗殺者だ。


まだ王族では殺したことはないが、任務で貴族の最高位である公爵まで手をかけたことはある。


並みの平民が王侯貴族に会うことはない。雲の上の存在故に下々の人間は絵物語で彼らを空想する。


思いやりがあって、勇気があって、女の子を大切に平等に扱ってくれる正に“白馬の王子様”。


そんな空想レベルの産物に彼女たちは一種の憧れを抱いているのだ。


しかし、現実とは残酷だ。


所詮男は女のことなど自分たちより格下の、己の子供を産み落とすだけの道具としか見ていない。


それは平民であろうが貴族であろうが変わりはなかった。


本当に滑稽だった。


自分より格下な存在である女に手も足も出ずに殺されると分かった時の男どもの顔と来たらーーーーーー。


あれほど見ていて気持ちのいいものはない。


正直に言って目障りな男がいないこの世界は楽園であった。殺しの任務がないのはつまらないけど、まぁそれだけだ。


私が“人間派”についたのも、こちらの方がたくさん殺せそうだと判断したからだ。それにこの派閥には“狂犬”という忌み名で呼ばれている凄腕の女傭兵であるケティが所属しているのも大きかった。


自分と同等に強い女が好きだった。


女の身で傭兵という職に就き、そして今日までも五体満足に生き残っている。


それだけでこのケティという女の実力が分かる。


生身の人間で幾人もの魔女を殺してきたケティに私は啓蒙した。


それと同時に畏怖の念を抱いた。


彼女に比べると自分などまだまだ。並みの人間をいくら殺しても何の自慢にもなりはしない。


ケティのようになりたい。


だけどいつしか憧れの念が疑惑の念に変わっていった。


だって矛盾だらけだ。


そもそもだ。


魔女が憎いのに、魔女を殺しまくっているのに、何故彼女は魔女に忠誠を誓っているのだろう。


大体ヴァレンシアはヴァネロペの姉だし、ルーシアはヴァネロペの親友だった女だ。


そんな女たちが人間という矮小な存在を本気で守ろうなどと考えているのだろうか。


元々性根がひねくれている私は我々の派閥のツートップをそういう風な目で見ていた。


疑り深いのは元来の性格と、暗殺者という職業病故か。


心のどこかで私は常に裏切りを気にかけているのだ。


その方がずっと楽に生きれるし、いざという時に何の躊躇いもなく殺せるからだ。


暗殺者である私は、本気で人を愛したことがない。


普段憧れの眼差しを向けているケティも、いざとなれば己の手で殺す覚悟は出来ている。


私が信じているのは己のみ。


だからか、時々分からなくなる。ケティとヴァレンシアの関係性が羨ましく思うことも多々ある。


(ーーーーーー今回この任務に志願したのは、魔女派の魔女の中でも最凶と云われるクラリスの隊に加わったのも、私的に思うところがあったのだろうか? それとも・・・・・・)


自分の感情なのに理解できない。それがすごく歯痒かった。


ケティのことを信じたかったのか。己の腕が魔女に通用するのか試してみたかったのか。


現にケティと合流し、あの“放浪商人”ことマリ・ド・サンスと殺り合うことになった今現在ーーーーーー、私の暗殺の腕では全く太刀打ち出来ず、情けないことに腹部などに中小程度の傷を負ってしまい、ケティの足手まといになるという何とも残念な結果になってしまった。


己の腕を過信し、ケティを最後の最後まで信じなかった自分の慢心と欺瞞が招いた結末だ。


こんな男の癖に隅で震えている情けないアラタとかいう少年以下の体たらくだ。


そんな男に信頼をおくケティにも、私は失望した。


勝手だ、と謗られるかもしれない。


そもそもそんな権利など私にはない。


勝手に憧れて、勝手に疑って、勝手に失望した私が悪いのだから。


容易に殺れると思った魔女に簡単にあしらわれ、身体と心に与えられた恥辱と恐怖という名の傷。


その傷のせいで動くことの出来ない私に比べて、アラタという男が見せた男気という名の勇気に女たちが魅いられるのも仕方ないのかもしれない。


それでも私は男が嫌いだ。


私は男に対する嫌悪感でいっぱいの胸に、ほんの一瞬チクリとささくれた痛みを誤魔化すように、ケティと親しげに話すアラタを睨み付けるのであった。






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