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幕間 儀式の始まり

 短いですが楽しんでいただけたら幸いです。

「ーーーーー”火よ”」


 呪文を唱えると同時に蝋燭に火が灯る。青色の何とも儚い火だ。アラタの身体の周りに立たせた数十本の蝋燭全てに火が灯っていく。


 何とも、何とも綺麗な光景だ。


 すきま風に煽られてゆらりゆらりと揺らめく青色の炎。無数の針ほどの火の粉が空へと上がっては消えていく。


 私はナナカマドの実を数粒ほど口の中へと放り込むと、形がなくなるまでグチャグチャと噛み潰していく。


 もちろん食べる為ではなく、このナナカマドの実は儀式に使う為のものだ。


 完全に噛み潰して吐瀉物に近い形になったナナカマドを用意した器の中へと吐き出し、そこに追加でさっき殺したばかりのカラスの血を垂らす。


 量でいうと小さめのコップ一杯ほど。


 赤黒い新鮮な血がとぐろを巻きながら器の中へと落ちていく。


 見るからに赤々しいその中に追加で私の髪の毛一房とアラタとネロの爪一欠を加える。


 それから擂り粉木で丁寧にかき混ぜながら、空高く満月が昇りきるまで呪文を唱え続ける。



「ーーーーー貴方の血、貴方の骨、貴方の肉。貴方の全てが彼の命の源になる。それが宿命? それは運命? 神が決めたか、彼の命運を。我は嘆き悲しみ、貴方の全てを愛すと誓う」


 

 呪文などどうでもいい。


 私の気持ちが、感情がーーーーー、儀式の要になるのだ。


 結局アラタは一度も目覚める事はなかった。


 私はピクリとも動かない彼に新たに調合した薬を投薬した。


 彼の口に薬を流し入れる瞬間、私の心は激しく落胆し、まだ辛うじて残っていた良心はこの時完全に消滅した。


 何故であろう。


 私はアラタが起きていた方が良かったのてあろうか?


 彼にこの儀式を止めてほしかったのであろうか?

 

 今となっては誰も分からない。


 当事者である私自身もーーーーー、自分で自分の感情が分からない。


 最後の望みは潰えたのだ。


 あとはもう己の欲望のまま、本能のまま突き進むのみ。


 全てはーーーーー、黄金に輝く月のみが真実を写し出す。


 悪夢か、幸ある未来か。


 天に昇った、その時に全てが決まる。


「ーーーーー」


 私は紫色の煙を上げる儀式用に調合した怪しげな液体が入った器の中に、事前に擂り潰しておいた鼠の脳みその粉を振り掛ける。


 ボコボコと泡が沸き立ち、沸騰し始めたソレを見て、私は満足げな笑みを浮かべるのであった。



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