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幕間 野営で交わす談笑(3)

 楽しんでいただけたら幸いです。

 肉が焼ける音と、焼くことで肉が発する食欲を大いに刺激する良い匂いを嗅ぎながら、ローナは隣に座るファズへと声をかけた。


「ーーーーーそれで? 一体どうしたんだ。何か悩みでもあるのか?」


 改まって面と向かって話をするのは・・・・・・、実に気まずい。


 特にこういう状況なら尚更だった。


 ファズが口を開くまで、ローナはジッと待つ。動かずに、喋らずに、ただただ待ち続ける。


「・・・・・・」


 モグモグと魚を食べ続けるファズ。ローナの問いに答えるべきか否か。俊巡しているかのようにローナの目には映った。


 まるで猫が食べたかの如く綺麗に骨だけを残して、無事に魚を完食し終えたファズ。


 ハフ、とどこか満足げな表情を浮かべて、一匹丸々の魚を納めた腹をさする。


 普通ならば魚一匹食べたくらいでは満足しないハズだがーーーーー、今回塩焼きにした魚は中々に大きかったから、まぁそれも致し方ないか。


 女の胃ならばそのくらいであろう(シェルとフリュがおかしいのだ)。


 口に残った魚の身を取り除くべく、しばらくモゴモゴと動かしていたファズであったがーーーーー。


「・・・・・・実はね、ローナ。あたし、もうーーーーー」


 覚悟を決めたのか。ファズは姿勢を直して口を開く。


 満腹になって気が緩んだのかーーーーー、取り敢えずこれでファズの心配事というか不調の原因が分かる。


 杞憂であって欲しいのだがーーーーー、果たして。


 パチパチと時折焚き火の火がはぜる音を聞きながら、ローナはゴクリと固唾を飲んでファズが語り出すのを待つ。


 数秒か、数分か。


 ファズはポツリポツリではあるが、己の抱える悩みを打ち明けてくれた。


「・・・・・・実は、アタシはもう弓を握る事が出来ないの」


 悩みは想像の斜め上を行くほどに重く、悩みを聞いたローナは全身に衝撃が稲妻のように迸った。


 嘘だ、嘘だと信じたい。


 村一番の腕前を持つ狩人であるファズが? 悪い冗談だ。


 この女から弓を取り上げたら何が残るいうのだ。ファズという女は生まれながら一流の狩人だ。


 彼女の腕に惚れている自分が断言するのだから間違いない。


 しかし、一番悲しみ苦しんでいるのはファズ本人だ。


 ならばーーーーー、苦しみの淵に沈んでいる友を慰めるのは他ならぬ私しかいない。


 ローナは努めて明るく振る舞いながら、ファズを励ますべく言葉を選びに選んで口に出す。


「ーーーーーあ、あまり深刻に考えるな!! 腕か手の不調もそう、魔法の後遺症なんじゃないか? お前だけマトモに食らったんだろう? ならばその魔法の効果が消えれば・・・・・・」


 怒濤の様に、一方的に喋ったのはいいが、言いかけてローナはあることに気づく。


 それはーーーーー、考えたくはない。


 最悪な、それこそ誰も望んでいない結末だ。


(このまま、ファズの腕がダメなままだったらーーーーー)


 自身の脳裏に沈んだ最悪な考えに、ローナは否定するかの如く激しく頭を左右に振る。


(大丈夫だ。村に帰れば、きっとルーシア様がファズの腕を治してくれるはず)


 そうすれば全て元通りだ。


 何も悩む必要はない、ないんだ。

 

 それでも落ち込んだ気分はそのままに、ローナは視線を下の方へと向ける。


 視線の先には程よく焼けた肉串が、ジュウジュウと透明な肉汁を溢れされ、何とも香ばしい匂いを発して自己主張していた。


 肉も上手く焼けたことだし、丁度良い頃合いだろう。


 ローナは良く焼けた肉串の内の一本を手に取ると、


「ほら、まずは腹を満たそう。悩むのはそれからでも遅くはない」


 こんがりと焼けた鹿肉串をファズへと差し出す。



 差し出された肉串を取るべきか否か。しばらく迷っていたファズ。それでも肉串の発する甘美な誘惑には勝てなかった様子。


 ローナの差し出された肉串を受け取ると、ホカホカと湯気が昇る肉へと息を吹き掛けながらかぶり付く。


 冷ましながら食べていたのだが、それでも熱かったのだろう。目を白黒にさせたファズが手足をバタバタさせてのたうち回っていた。


 ったく、子供かお前は。


 ローナが苦笑いしていると、丁度鹿肉の加工作業を終えたエルが手を振りながらやって来た。


「あっ、すごく美味しそう~! 私にも食べさせてよ~」


 エルがやって来たこともあり、ファズとローナは互いに顔を見合わしてコクりと頷く。


 折角の楽しい食事だ。


 今だけは悩みも何もかも忘れて楽しもうではないか。


 ファズとローナは笑みを浮かべると、


「エル!! 早く来い。肉ならたくさんあるぞ!!」


「こんがり焼けていてすごく美味しいよ!」


 たくさんある肉串を掲げて、こちらへとやって来るエルを迎え入れるのであった。


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