幕間 野営で交わす談笑(1)
楽しんでいただけたら幸いです。
ここでひとまず視点を変えてみよう。
では誰の?
勿論、クラリスたちと別行動を取ることになった、ファズたち別部隊のことである。
彼女たちはファズを筆頭としたーーーーー、本隊から別任務を請け負うという体で除隊することになった、他四人の少女たちで構成された別部隊である。
この部隊に与えられた任務は、かの”ブロウ・アビスの丘の魔女”ことエヴリディーチェ・ヴァイツェンーーーーー、シャルロット・ヴァイツェンをルーシア様の元へと安全に運ぶこと、であった。
我々の敵であった彼女は、何故か敵であるファズを味方であるハズの魔女たちから助けてーーーーー、深い深い眠りに落ちてしまった。
本来ならば敵である魔女など助ける義理はないし、ルーシア様の村へと連れていくこともないのだが・・・・・・。
ファズを助けてくれたのならば話は別だ。
この小さな眠り姫を我々の村へと連れていこう。
皆細心の注意を払いながら、村へ続く街道を一歩ずつ着実に進んでいく。
一本道とはいえ、村へと続く道の旅は決して楽とは言えなかった。
飢えに飢えた凶悪な野生の肉食獣や小型~中型の魔物らが襲ってきて、ファズたちはそれらとの戦闘をこなしつつ、時折休息を取りながら村への帰路を急ぐ。
そして本日3回目の休息を取った時のこと。
回を重ねてすっかり野営準備ーーーーー、手早く簡易テントを設営し、焚き木の火を起こすファズたち。
いやはや、この短期間で野営に慣れたものだ。
ファズたちは苦笑しつつ、食事の準備に取りかかる。
今日の食事は道中で狩った雌の鹿と、トイレ休憩の際に立ち入った森で拾った木の実。そしてその近くを流れていた小川で釣った魚が十匹ほど。
ファズは時間のロスになるから、魚はいいと言ったのだけれどーーーーー、なるべくバランスのよい食事がしたいとの要望を受けて仕方なく。
「ーーーーー魚はどうする?」
「内蔵だけ出して、串に刺して塩焼きにしよう。塩だけはたくさんあるから」
「了解。塩焼きね」
魚を捌くのは幼なじみであるフリュとシェルであった。まるで双子のように瓜二つな容姿の彼女たちは、和気藹々とした雰囲気の中手慣れた様子で魚の下拵えを進めていた。
趣味が魚釣りである彼女たちの手腕で魚十匹手に入った。ならば魚を捌く権利もフリュとシェルにある。
ファズたちはその様子を横目で見つつ、先ほど狩ったばかりの鹿の解体に取り掛かるべく、血抜き作業中のエルの元へと向かう。
「血抜きは終わった? エル」
「ん? あぁ、ファズたちかぁ。う~ん、終わったって言いたいとこだけど・・・・・・、大物だからねぇ。あともうちょっとってところかな」
額に汗を浮かばせた小柄な少女ーーーーー、エルが振り向き様に応える。
そばかすがチャームポイントの彼女は槍使いのエキスパートであり、ここまでの戦いでも大いにその腕前を発揮してくれた。
そんな彼女の趣味はーーーーー、何と料理だそうで。
彼女曰く、
「ーーーーー最高に美味しい料理を作るためには最初が肝心。だからアタシは食材の調達も自分でするの」
だそうでーーーーー。
獲物の解体や血抜き作業もお手の物らしい。
血抜き作業は危険を伴うので、エルは一人離れた場所で作業していた。その理由は血の臭いに誘われた獣が野営地へ押し寄せるのを防ぐためだ。
勿論、エル自身何も考えずに作業しているワケではない。ちゃんと風下に陣取って極力臭いがしないように配慮していた。
掻き出した内臓や血抜きした血を、まとめて捨てる為の穴を掘ってその中へと捨てていた。
内臓などの臭いが外へ漏れないように、きちんと臭い消しの効果がある薬草などを上に覆い被せて、更にその上に砂を混ぜた土を被せていた。
用心深いエルらしい行動であった。
ファズたちの手伝いなど要らぬと言わんばかりに、下処理の済んだ鹿を手際よく解体していく。みるみるうちに一塊の肉塊へと姿を変えていく。
エルは本日食べる分の肉と、村への手土産に加工する肉とを分けて、
「ーーーーーはい、これ。新鮮だから、なるべく早く食べてね」
有無も言わさず強引さで解体したばかりの、血が滴る鹿肉をファズに押し付けるエル。
「あ~、うん。分かった。エルも早く来てね」
「うん~、これが終わったらね」
エルは背を向けて、余った肉の加工作業に取りかかる。
ったく、仕事熱心なんだから。
しかし、こうなった彼女は何を言っても聞かないことは分かっているので、あえて声をかけずに連れのローナに声をかけて野営地へと戻る。
「~~~~~~ッ!」
しまった。
本調子でないファズの腕はあまりの肉の重さに耐えきれず、思わず肉を地面に落としそうになる。
ビリビリと痺れに似た腕の痛みーーーーー、まだあの魔法が完全に消えていないのか。
そんなファズの危機にいち早く察知し、すかさず助け船を出したのは、
「おい、大丈夫か?」
ガシッとファズの身体を支えると、彼女の持った肉の大半を代わりに持つべく、半ば奪い取るようにして取り上げる。
「ったく、いつものお前らしくもない。一体どうしたんだ?」
「・・・・・・あぁ、ちょっとね。あとで話すよ」
「ーーーーーそうか」
フッとローナは微笑を浮かべて、ファズの横腹を肘で小突く。
気心の知れたローナとファズは笑い合いながら、狩りたて捌きたてで新鮮な鹿肉を調理すべく、焚き火の周りで串に刺した魚を仲睦まじく焼くシェル達の元へと足早に向かうのであった。




