鍋パ開始
お鍋開始しました(*´∀`*)
●12月■日 お昼準備
きゅわきゅわ対にっこり笑顔で挨拶を交わしている二人の頭を両手で撫でながら、私は鍋の準備をしてあるこたつを視線で示し、
「あともうちょっとで出来上がるから、二人でそこの小鉢とかこたつに運んでもらえるかな?」
とお手伝いをお願いする。
「きゅわっ!」
揃ってビシッと手を挙げて元気良く返事をした二人が、仲良く食器を運んでくれるのを視界に端で見ながら、私は鍋の食材を切っていく。
それを料亭のように──は無理なので、適当な感じで大きな白い皿の上に盛って運んでもらう。
きゅわきゅわ言いながら笑顔でお手伝いしてくれる二人が可愛い。
そんな二人から運んでもらう先のこたつだが、今日はこたつに美人さんもインしてもらうつもりなので、いつもより念入りに掃除済みだったりする。
鍋の準備は終わったが、鍋だけじゃ寂しいかと美人さん用に卵料理を数品と、カッパ組用にキュウリの塩昆布漬を用意して準備は完了だ。
腕組みをして仁王立ちをし、うむうむと頷きながらこたつの上へ並べた物を確認して頷く私。
私の両隣で私の真似をして腕組みをして頷いている可愛い子達が二人。
可愛い存在にほっこりしていると、勝手口の開く音がして冷気が室内へと吹き込んでくる。
ハッとして勝手口の方へと向かうと、雪景色をバックにいつも通りの着流し姿の美人さんの姿がそこにはあった。
「……私が来た」
無表情ながら微妙にドヤッとしながら雪の中に佇む青い着流しの美丈夫。とても絵になる。
その少し背後に控えめな笑顔を浮かべながら、ハーピーさんを首根っこ押さえて捕獲しているきゅうさん。
「えぇと、いらっしゃいませ? どうぞ」
なんか有名アニメで聞いた事があるような台詞だなぁとどうでもいい感想を抱きながら、美人さんもときゅうさんを招き入れる。
うむという感じで相変わらずの不思議仕様な足元変化を経て、スリッパで入って来る美人さん。
カッパくんと同じように足を拭いて入って来てくれるきゅうさん。
手荷物のようにきゅうさんによって運ばれているハーピーさん。
「って! なんでうちのハーピーさん捕獲しちゃってるんですか!?」
あまりにも自然な雰囲気だし、ハーピーさんがきゅっとなっておとなしくしてるからつい普通に招き入れてしまってから、ハッとして全力でツッコミを入れる。
「……鍋には鳥の肉」
私の全力のツッコミに、きょとんとして小首を傾げてなんでもない事のように答える美人さん。
これは冗談なのか本気なのか。
次の言葉が出ず私があわあわと口を開閉させていると、微笑んだきゅうさんがハーピーさんを掴んでいた手を離す。
慌てて駆け寄ってハーピーさんの安否を確認すると、驚いて固まっていただけらしくすぐ動き出して「ココ、イエノナカ?」と辺りをきょろきょろし始めている。
「良かった……ハーピーさん元気だ」
元気そうなハーピーさんの様子に安堵しながら、タオルでハーピーさんの体についていた雪を落としていく。
ちなみにだが、うちで暮らすようになったハーピーさんは、シャワーという文明の利器を気に入り、すっかり綺麗好きなハーピーとなってしまい、これだけ近距離にいても日向に干した布団のようないい匂いしかして来ない。
これもあの小屋の中に温水が出るシャワーを備え付けてくれた家庭菜園のおかげだ。
自分で言ってて何一つ意味はわからないが事実を述べているだけなので、あの家庭菜園に関しては深く考えるのは放棄するのが一番だ。
驚き過ぎて思考が明後日の方向へ行ってしまったが、心配そうにこちらを窺うてまりさんとカッパくんの視線に気付いて緩く頭を振る。
私がしっかりしないと、そう気合を入れ直したところに、
「この方が、そうおっしゃられて手土産として…………」というきゅうさんのとんでも発言が聞こえてしまい、思わず美人さんをガン見してしまう。
まさかハーピーさんに食材としての参戦をさせろと!?
「というのは、この方の冗談ですから! 座敷童さんに警戒されて入れないようなので、私達と共になら入っても構わないかと思いまして連れて参りました」
私の顔がヤバい事になっていたのか、常にない慌てた様子のきゅうさんが珍しく声を張り上げ、訂正してくれたので、ひとまず胸を撫で下ろした。
もう気分が上がったり下がったりでどんな顔をすればいいのかわからず天を仰ぐ。
高位存在のジョークは私には笑えない。
「……あの、私、鳥は捌けないので」
頭ぐるぐるの中、しばらく悩んでからやっと絞り出した一言は、たぶん色々間違えてた。
おかげでハーピーさんがビクッとなってぷるぷるしてしまい、最終的にてまりさんとカッパくんから慰められていた。
しっかり謝ったらハーピーさんは許してくれたので、やっと鍋パを始められるが、出だしからとても不安なのは私の心配し過ぎなんだろうか。
とりあえず少し距離のあったてまりさんとハーピーさんの仲が思いがけず良くなったので、今回の一件は美人さんの思惑(?)通りの怪我の功名ということにしてここう。
──美人さんが本当にハーピーさんを食べようとしていたのではないかと一瞬思ってしまった事は、墓場まで持っていく秘密だ。
●12月■日 昼食開始
思いがけない闖入者というか、お土産というか、誘拐被害者が現れたりもしたが、なんとか和やかにこたつへ並んで入って鍋パな昼食スタートだ。
すぐに鍋を楽しんでもらえるように第一弾の具材はすでに土鍋へインして台所のコンロで煮込んであるので、そのまま卓上コンロで少し温め直せば食べられる状態なのだ。
「この取り箸か、おたまで食べたい具材を…………私が取るから好きな物を言ってください」
説明をしながら視線を巡らせると、目をキラキラさせているきゅうさん以外の面々の顔。
少々失礼かもしれないが、きゅうさん以外絶対に何かしでかす気がしてしまう顔触れに、私はセルフサービスを諦めて取り箸として置いてあった菜箸を手に取る。
「……たまご」
一瞬譲り合うような空気が流れた後、この中で一番年長者であり、一番偉いであろう美人さんが口を開いて選んだのは、ある意味ブレないチョイスだ。
ちなみにリクエストされた卵は鍋の具材ではない。
たぶん美人さんが喜ぶだろうと作ってあった卵料理の事だ。
「はい、卵ですね。まずは玉子焼きと温玉どうぞ。それと、せっかくですからこちらの鍋の具材もどうぞ」
玉子焼きを皿に盛って渡し、温玉は美人さん用なので盛り付けてある小鉢ごと、それと鍋から具材を一つ鍋用の取り皿である小鉢へと掬い上げて渡す。
「……油揚げ」
無表情ながら受け取った小鉢の中身を見て何とも言えない反応をした美人さんに、私は自分用の小鉢へ同じ具材を取って箸で割って見せる。
「じゃーん。それは油揚げの中に卵を入れた、餅巾着ならぬ卵巾着でした」
効果音付きでドヤッてから、徐々に恥ずかしくなって小声になりつつ説明する私に対して、美人さんは軽く目を見張って明らかな喜色を滲ませてコクリと頷いてくれる。
どうやら気に入ってもらえたようで良かった。
年功序列ということで次はきゅうさんに……と思ったが、見るときゅうさんは危なげなく自分で具材を小鉢へ取り分けていて、何だったらカッパくんの世話まで焼いてくれている。
「こちらは私にお任せください」
「ありがとう、きゅうさん。じゃあ、てまりさんとハーピーさん、まず何食べたい?」
きゅうさんに任せておけば安心なので、私はてまりさんとハーピーさんへ視線をやる。
てまりさんはにこにこしながら、控えめに豆腐と白菜を指差し、ハーピーさんは「ニク!」とこちらも笑顔で元気よく答えてくれた。
──どうやら鍋奉行タイプはいないようなのでこっそりと安堵しつつ、私は見た目幼女とギャルな二人のために鍋の具を取り分けるのだった。
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食材扱いされかけたハーピーさん。本人(?)は全く気にしておりません。




