穏やかな冬の日々
汗ダラダラで真冬の話を書いています(^_^;)
●12月▲日
「カッパくんはすっかりこたつがお気に入りだね」
「きゅわっ!」
笑みを含んだ私の声にたしっと元気よく片手を挙げるカッパくん。
ただし、しっかりとこたつに入った状態で。
カッパくんの隣には仲良く並んで座るてまりさんが、カッパくんのためにみかんを剥いてあげている。
可愛いと可愛いが可愛い事をしていて、可愛いが飽和状態だ。
そんなこたつの上には本日もみかんの小さな山が出来ている。
家庭菜園が毎日しっかりと生らしてくれた物を、毎朝ハーピーさんが採ってくれて、いつかのどんぐりのように勝手口へ置いてくれるのだ。
おかげでこの冬はみかんを買わなくて済みそうなぐらいである。
うちでは食べ切れないので、お隣さんへお裾分けもしている。
どうせなら少年やゆるいお兄さんへも渡したいが、雪が降った日から二人を見かけない。
雪が降った事によってモンスターとかの挙動が変わって忙しい、とかかなと推測している。
そんな事を考えながらボーッと家の前の除雪をしていると、お隣からこちらへ向かってくる人影が見える。
「おはよう、これでしばらく雪は降らないと思うよ」
挨拶と共に笑顔でそんな情報をくれたのはお隣のおじさま──つまり、お隣の仲良しご夫婦の旦那さんだ。
「おはようございます、そうなんですね。運動不足なせいか筋肉痛になっちゃいましたから助かります」
私が除雪の手を止めて笑顔で挨拶を返すと、おじさまは笑顔でうんうんと頷いてくれてから、
「わかるなぁと言いたいが、君はまだまだ若いだろうに」
とからかうような言葉をかけられてしまった。
そう言われると私は日頃の運動不足な自分を恨むしか出来ない。で、誤魔化すように笑うしかない。
「ラジオ体操はいいぞ。あれは真剣にやると結構いい運動になる」
私の微妙な気持ちが伝わったのか、おじさまはにこにことしながらそんなアドバイスと、手に持っていた荷物をくれた。
アドバイスは置いておいて……受け取った荷物はビニール袋に入った白いトレイと五百ミリリットルのペットボトル二本だ。
「あの、これは?」
反射的に受け取ってしまってから中身を確認した私は、首を傾げておじさまを見る。
「そこそこいい豚肉と、うちの奥さんのお手製の甘酒のお裾分けだ。いつも美味しい野菜や果物を貰ってるお礼だよ」
「そんな、気にしないでください。私だけじゃ食べ切れないので、食べてもらって助かってるぐらいなのに」
「まぁまぁ、遠慮せず受け取っておくれ。持って帰ったら、私がうちの奥さんに叱られてしまうよ」
「……わかりました、ありがとうございます」
これ以上断るのも失礼なので、私は受け取ったビニール袋をしっかりと両腕で抱え込んで笑顔でお礼を言う。
正直なところ、お肉も甘酒も嬉しい贈り物だ。
「甘酒は米麹で作ったやつだから、小さい子でも安心だよ」
「そうなんですか。お気遣いありがとうございます。奥様にもよろしくお伝えください」
それならカッパくんとてまりさんにも飲ませてあげられるなと思いながら再度お礼を伝え、去っていくおじさまを軽く頭を下げて見送ってから私も室内へと戻る。
ちょうど除雪も一段落したので、貰ったばかりの甘酒を早速飲んでみよう。
肉を冷蔵庫に入れてから、汗を掻いていたので着替えて、キッチンへと戻る。
棚を漁って小さな片手鍋を取り出すとペットボトルの中身を注ぎ、火にかける。
ぼんやりと眺めていたら、甘酒が吹きこぼれそうになって慌てて火を止め、何とか事なきを得る。
「危ない危ない、見てて吹きこぼしたら何やってるんだって話だよね」
自嘲気味にそんな事を呟きながら、温まった甘酒をカップへ注いだ。
こたつの上に湯気の立つカップを二つ並べ、姿の見えない同居人を呼ぶ。
「てまりさーん、甘酒飲む?」
私がこちらから来るかなと予想して顔をそちらへ向けて待っていると、予想とは全く別の方から現れたらしく足にとすっと軽い衝撃がある。
見下ろしてみるとそこには想像した通りてまりさんがいて、想像より愛らしい悪戯っ子な笑顔で私を見上げていて。
「可愛い悪戯っ子さん。私が何か持ってる時はしちゃ駄目だよ? てまりさんに怪我をさせたら大変だから」
怒る事なんて苦手だけど、危ない事があるかもなのでやんわりと……だがしっかり目に注意をすると、いい子なてまりさんは真剣な顔をして頷いて聞いてくれている。
本当、うちの子いい子過ぎる。
てまりさんの頭をよしよしと撫でてから、並んでこたつへ入って甘酒を飲んだ。
その後、こたつでうたた寝をしてしまい、ふんすっとなったてまりさんから私が怒られてしまうという締まらない一日の終わりとなった。
●12月■日 お昼前
今日のお昼は鍋だ。
お隣さんからいいお肉を貰ったので鍋をしようと思う。
今日はそういう気分だ。
真夏に鍋を囲むのも否定しないが、やはり鍋は冬が似合うと思う。
カッパくん達をお招きしたので、久しぶりに大きい土鍋の出番だ。
押し入れをゴソゴソとして、しまい込んであった箱に入った土鍋をやっとのことで取り出す。
「お久しぶりだね」
箱の蓋を開けて顔を出した、跳ねる白いウサギが描かれた可愛らしい見た目の土鍋へ、そんな一声をかけるが答えはない。
一人で使うには大きすぎるので少なくとも一年は使っていないが、綺麗に洗ってしまっておいたので特に傷みも無さそうで何よりだ。
あと、異世界転移して喋りだしたりしなくて良かった良かった。
さすがに喋る土鍋は扱いに困るからね。
そのあとは、卓上コンロもガスの在庫も確認。
どちらも問題なかったので、卓上コンロをこたつの上に設置し、洗った土鍋をセットする。
「あとは鍋つゆを作って、具材を切って……」
すべき事を口に出しながら冷蔵庫を開けた私は、ついでに具材の名前も読み上げつつ取り出していく。
「お肉と〜豆腐と〜白滝と〜……あ!」
調子外れの適当な音階付きで順調に具材を出していた私だったが、とんでもない物を忘れていた事を思い出して素っ頓狂な声を上げてしまう。
結構大きな目な声だったのでてまりさんを驚かせてしまったらしく、勢い良く駆け寄って来たてまりさんが私の足へギュッとしがみついて心配そうに見上げてくる。
「驚かせてごめんね、てまりさん。実は白菜無いって気付いちゃって……」
今から買いに行って間に合うかなと脳内でかかる時間を計算していると、足にしがみついていたてまりさんがくいくいと私の服を引っ張ってアピールして来る。
「てまりさん、どうかした?」
そちらを見ると、ニコッと満面の笑みを浮かべたてまりさん。
可愛いなぁと頬を緩ませていると、少し焦れた様子でさかんに家庭菜園の方を指差してみせている。
「…………え、まさか、そんな事が?」
ほんの少しだけ期待をしながら勝手口の扉を開けると、雪に覆われた家庭菜園の中、一部の畝の雪が溶けて植わっている野菜の姿が露わに……。
そこに植わっていたのは、それはそれは見事な白菜だった。
しかも私が使い切れないだろうと気を使ってくれたのか、一玉だけポツンと。
「……白菜、ありがとう」
何処で聞いてたんだろうとか、色々ツッコミたい事はあった。
でももう今更かと飲み込んで、心からの感謝だけを口に出して告げておく。
「どうしよう、てまりさん。うちの家庭菜園がスパダリ過ぎて、惚れちゃいそうだよ?」
勝手口から顔だけ出しているてまりさんに冗談めかせたそんな軽口を言いながら採った白菜を手にキッチンへ戻る。
笑ってくれるかなと思っての、本音半分ぐらいの軽口だったが、てまりさんの反応は予想外だった。
私の軽口を聞いたてまりさんは、目を真ん丸くして家庭菜園の方を一瞬ちらりと見てから、可愛らしく頬を膨らませて私の足にしがみついて見上げてくる。
「……なにこれ、可愛い」
何やら怒ってるアピールだとはわかったが、てまりさんが可愛くて思わずよしよしと頭を撫でてしまう。
そこへ早めにやって来たカッパくんも参戦して、てまりさんと逆側から私の腰辺りにしがみついて「きゅわ!」と絶対よくわかっていない顔で挨拶をしている。
「可愛いが過ぎる……」
処理落ちしそうな可愛いの供給に、私は二人をしがみつかせたまま天を仰ぐしか出来なかった。
──幸いにもきゅうさんが来てくれたので、可愛いが死因にならなくて良かったよ。
いつもありがとうございますm(_ _)m
感想などなど反応ありがとうございます(*>_<*)ノ
誤字脱字報告も大変助かっております!
美人さんも鍋パに呼ばれてますが、そこまで辿り着けませんでしたm(_ _)m




