【第02話】最初の敗北
──テトの村。
冒険を始めた頃に立ち寄った、穏やかな農村。
だが今のレイにとっては、懐かしさよりも違和感が先に立つ。
村の武器屋に入り、鉄剣を手に取った瞬間、顔が引きつった。
片手で軽く振り回せたはずの剣が……持ち上げるのもやっとだ。
「……なんだ、これ……」
「買わねぇなら出てってくれ」
店主の不機嫌な声に、レイはそっと剣を棚に戻した。
武器も持たず、村外れの草原へ向かう。
せめて、近くの魔物くらいなら素手で倒せるはず──そう信じた。
◇ ◇ ◇
草原に足を踏み入れた瞬間、鋭い鳴き声。
子猪のような魔物が牙を剥いて突進してくる。
「猪一匹……余裕だろ」
拳を繰り出す。
──だが、手応えはなかった。
次の瞬間、強烈な衝撃が胸を打ち抜き、視界が反転する。
「ぐっ……はぁ……!」
地面に叩きつけられ、息が詰まった。
骨が軋み、全身が悲鳴を上げる。
さらに草陰から二匹、三匹と現れ、牙を向けてくる。
(……この俺が、こんな雑魚に……)
足が動かない。迫る影に、目を閉じかけたその瞬間──
風を裂く音と共に、猪たちが一瞬で吹き飛んだ。
「……弱いくせに、武器も持たず魔物に挑むなんて、自殺行為だな」
低く、芯の通った声。
顔を上げたレイは、息を呑んだ。
黒髪を束ね、鋭い目をした青年が立っている。
その姿は──かつての自分を思わせた。
「は……?」
混乱するレイをよそに、青年は淡々と剣を納めた。
「……立てるか?」
差し伸べられた手を、レイはただ見つめるしかなかった。