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秘密組織『ルース』   作者: 日々レイオ
第2章 名古屋獣人化編
24/25

秘密24 秘密をあなたへ

俺の両親は名門大学を卒業した医者だ。父は外科医、母は小児科医。忙しい仕事の中、2人は俺をとても大切に育ててくれた。


大和(やまと)さん! 恭也(きょうや)がまたこんなにいい点数をとってきたの!』


恭也の母、京子(きょうこ)が持つ5枚のテストはすべてが98点以上のものだった。そして成績表はほとんどが5段階中5という優秀なものだった。


『さすが私たちの息子だ。恭也、お前は将来何になりたい?』


『ぼくね! お父さんとお母さんみたいなおいしゃさんになる!』


小学校2年生。俺は周りと比べてかなり優秀だった。親からも教師からも褒められる毎日。俺は天才だ、そう自覚していた。























あの日までは。









俺が小学校5年生の時悲劇は起きた。いつも通りテストを持って帰宅すると何やら楽しげな声が聞こえてきた。どうやら小学校3年の弟、(せい)が褒められているようだった。


『ただいま、お母さん? どうしたの?』


『恭也! 青が5教科満点をとってきたのよ!』


『そうなんだ、お母さん俺もこんなにいい点数をとってきたんだ!』


テストを見せた瞬間俺は母親にビンタされた。何が起こったのかわからなかった。ただ頬が痛い。


『何言ってるの! 満点をとらなきゃいい点数なんて言わないの! 青を見習いなさい! この歳で満点よ!』


『……………はい……』


この日から俺の地獄は始まった。宿題でわからないところを聞いた時には


『なんでこんなこともできないの! 青はできてるのよ! 兄である恭也ができなくてどうするの!』


『お前はもっと勉強しろ! この問題が解けるまで飯は抜きだ!』


部屋に閉じ込められ勉強三昧の毎日。この時点で俺の精神はだいぶすり減っていた。仲良くしていた弟が無意識に言った言葉も俺を追い詰めていった。


『兄ちゃん! 見て! ボク、クラスで1番とったんだ!』


弟は俺に懐いていた。兄ちゃん! 兄ちゃん!と駆け寄ってきて抱きつく姿が可愛らしかった。その無邪気さが俺をどんどん地獄へと連れていった。そして小学校6年の秋、夜中トイレへ行きたくて起きたらリビングで話す両親の会話が聞こえてきた。


『……あの子……このままだったら中学受験失敗するんじゃないかしら……』


『……じゃあどうするんだ! 我が家に医者以外の道を進むやつなんていらない!』


『わかってるわよ!……………あんなやつ産まなきゃよかった…………こんなに苦しむこともなかったのに……』


心臓が痛かった。頭も痛い。わけもわからず財布を握りしめて走った。時刻は朝の6時半。持っていけるものすべてを持って新幹線で東京へ行った。僅かな希望を抱いて。今日は学校だった。でもそんなことどうでもよかった。ただあの家から抜け出したかった。そこからどうやって祖父母の家に辿り着いたかは覚えてない。目が覚めた時には俺はこの家に住むことが決定し、東京の小学校に通わされることも決定していた。その後事情を聞いた祖父母は俺を暖かく受け入れてくれた。しばらくして祖父母がゲームを俺に買ってきてくれた。ゲームは決められたルートしか進まない。裏切らない。その2次元の安心感もあり俺はゲームにハマった。


1週間後俺は小学校に通い始めた。残り4ヶ月で転校してくるのが珍しいのか多くの生徒に質問された。けど誰も相手にしなかった、したくなかった。もう誰も信じられなくなった。その後中学に進学した。絶対友達は作らないと決めていた。席につきしばらくするとある1席に人だかりができていた。男女問わず俺以外全員がその席に集まっていた。ちらっと見えたその席の主は周りとは比較にならないほどイケメンだった。


(…………俺はいいや……)


そんな中俺はスマホゲームに熱中していた。入学式も終わり帰宅しようとした時、声をかけられた。さっきのイケメン、蓮介(れんすけ)に。


『……なぁ、君名前は?』


『……お、おれ? 俺は渥美(あつみ)………恭也………』


『俺は日置(ひおき)蓮介、なぁ恭也。俺と友達になろ』


クラス中が俺へと視線を集めた。羨ましいという感情をひしひしと感じた。俺は聞き間違いだと思った。


『あの……聞き間違い……』


『違う、俺はお前と友達になりたい。そう言ったんだ』


この時は正直焦った。断りたいけど断れないどうしよと悩んでいた。


『……い………いいよ……』


根負けして承諾してしまった。俺が承諾した瞬間蓮介は輝くほどのイケメンスマイルを見せ周りの人間はあまりの笑顔に倒れていった。怖かった。それから毎日蓮介と過ごした。楽しかった。でもどこかでまだ蓮介を信用できなかった。きっといつか言えると信じて。












「……………………俺の秘密はこんな感じです…………大したことないでしょ?」


「…………………そんなことないよ」


(あんず)が恭也の手を握りしめる。


「話してくれてありがとう…………秘密があってもわかっても友達で仲間なのは変わらないよ…………それにアタシの秘密だって大したことないよ」


「そんなことないです!」


「ありがと………………ということでアタシたちもっと仲深まっちゃったねー、次れぇくんのば…………」


「杏」


尚人(なおと)? どうしたの?」


杏の言葉を遮るかのように尚人が現れた。


美沙(みさ)(まめ)が呼んでるよ」


「えぇーー……行かないとだめ?」


「だめ」


「ちぇー、じゃあ行ってくるよ……(きょう)くんの話もあると思うから一緒に来て」


「はい」


杏は恭也を連れて美沙と豆の元へと向かった。空いた席に尚人が腰掛けた。


「助かりました」


「いやいや、ギリギリ間に合ってよかったよ。もし君が話していたら力づくでも止めていたよ」


「……あなたに俺を止められますか?」


「………………無理だな」

















「…………あんたなんでビキニ………」


「可愛いでしょ?」


「可愛いけど露出しすぎよ!」


「大丈夫、ラッシュガード羽織るから」


鈴蘭(すずらん)は恭也と約束したプールへと来ていた。鈴蘭が着ているのは可愛いらしいワンピースのような水着。杏はスタイルの良さを活かしビキニを着ていた。鈴蘭が言うほど露出はしていない。


「さぁ行くよ!」


「ちょっ! ちょっと待って! まだ心の準備が!」


「大丈夫だって! 恭くんも可愛いですねって言ってくれるよ!」


「声真似するな!」


合流することを躊躇う鈴蘭を杏が無理やり引きずり出す。


「あっ! 恭くん! うたくん! お待たせ!」


「いえ、俺たちも来たばかりなので………鈴蘭先輩どうしたんですか?」


「遅いから無理やり引っ張ってきた」


「はぁ……」


杏の手から離れた鈴蘭は近くの木の後ろに隠れてしまった。それを見て翔太が杏に耳打ちする。


「鈴ちゃん先輩、恭先輩の前に出るの恥ずかしかったんですか?」


「そうそう、大丈夫って言ってるのにさ、もじもじしてんのよ」


「………鈴蘭先輩……隠れてないで一緒に泳ぎましょ」


「……………うん……」


出てきた真っ赤な顔の鈴蘭が恭也のラッシュガードをくいっと引っ張る。


「……………似合ってる?………………」


「……はい……………すごく可愛いです……」


鈴蘭の顔は信じられないほど真っ赤で頭からは煙のようなものまで見える。


「はいはい! じゃあ波のプール行こっか!」












「やっぱりここのウォータースライダーは楽しいね! 後からもう1回行こっか!」


「いいけど………そろそろ帰らないと尚人さんに怒られるわよ……杏去年も怒られてたでしょ……」


「よしっ! じゃああと1回乗ったら帰ろ!」


2人乗りのウォータースライダーに向かった一行はある問題に直面していた。それはペア決めだ。


「アタシはうたくんと乗ろうかなー」


「はっ?! あたしと乗るんじゃないの?!」


「オレも(あん)ちゃん先輩と乗りたいなー」


杏と翔太がにやにやしている。2人の心の中はこうだ。


((2人きりにしてやるから感謝しな))


「じゃあお先ー」


2人乗りの浮き輪に乗った杏と翔太は先に滑っていった。


(2人…………2人……2人きり………………こいつ………意外と筋肉ある……………じゃなくて!何話せば!)


「鈴蘭先輩」


「ひゃい?! なに?!」


「来年もまた来ましょうね」


「………うん!」













「じゃあまた」


「うん、また1月」


夏休み終了1週間前4人は東京へと戻るため駅で別れを迎えた。見送りは杏と尚人だ。


「みんなー! またねー!」


4人は新幹線のホームへと姿を消した。


「ねぇ……尚人」


「なんだ?」


「今回のうさ耳パーカー、恭くん狙ってた………それなら東京に行けばいいのに……何故か名古屋に来た………つまりあいつ恭くんが名古屋にいること知ってたってことだよね?」


「っ?! まさか?!」


「………名古屋部隊で来ることを知ってたのはアタシと尚人だけだから違う………東京部隊の中に……………あいつの仲間……スパイがいる……」
















真っ暗な研究室の扉を(よん)が勢いよく開けた。


(みつ)兄さん! こんな散らかして! 汚いっていつも言うとるやろ!」


鞠と呼ばれた男は本物のうさ耳を頭から生やしていた。手には試験管を持ち何やら実験をしているようだ。


「今、手が離せんのよ………依、好きに片付けていいからよ。頼むよ」


「いつもの事やからわかっとるって、ほんで、今日も実験?」


「そうだよ……僕は実験が世界一大好きだからよ」


「そやな……そういえば参羽(さんは)を見殺しにしたって?」


「見殺しやないよ、参羽の死は未来のために必要やったからよ、仕方ないよ」


「ふ~ん……」


「まぁ、側近が死んで悲しいのは事実よ。参羽は忠実でいい子だったからよ……………けど……もうすぐ楽しみが始まるよ。待ちきれないのよ」


恭也たちは知らない、ルースに最悪な事態が近づいていることに。


最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。

第二章完結しました。次からは第三章開始です。第三章は短めになります。

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