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8話 勇者と新たな世界

全員と外食をする前に、ガルドに頼んで勇者3人にこの世界の私服を見繕って貰う事にした。


「私はまだ授業が残っているからな…私のひとり授業が終わるまで、ガルド同伴で色々と見て回るといい」


「はい!ローザン様、1人授業頑張って下さい!」


「君達の成し遂げた魔王討伐よりは遥かにマシだ!では、また後で『キヤキ』で会おう!」





そして……学校の授業を1人で全て乗り切った私は、一旦家に帰宅し『匂いが付いても大丈夫な私服』に着替えた後、急いで焼肉店の前へと移動した。



「待たせたな!」


「あっ!ローザン様!」


焼肉店『キヤキ』の前に移動すると、この世界の私服に身を包んだ勇者3人が私を優しく出迎えてくれた。


「こっちは全然大丈夫です!あの、ローザン様は大丈夫でしたか…?」


「ラファー、外で様付けするのはやめてくれ……いやぁ、それがな……帰りのホームルームが予想以上に長引いてしまってなぁ…」


『ホント長かったよねー!シン先生ったら野球ネタで30分も長話してさぁ〜!』


まあ、シンセサイザー(シン先生の渾名)の野球ネタに乗ってしまった私も原因ではあるがな!!



「あっ、そうだ!ローザン様、素敵な衣類や道具を買って下さり、本当にありがとうございます!!」


「メレン!頼むから外で様付けするのはやめてくれ!……で、皆は何処に行ってたんだ?」


「ガルド様が操るクロマに乗って、デパートって言うお店に連れて行って貰いました!待ち合わせの時間もあるのであまりじっくり見れませんでしたが…あの場所には素敵なものが沢山ありました!可愛い服が沢山あって……!」


「周りは小綺麗だし、車輪が2つだけ付いた乗り物やクロマ?が沢山走っていたな……デパートの中には見た事が無い楽器や本も沢山あって、目が回りそうだった……」


「あのクルマ、生き物が入れるスペースも魔力も一切無かったのに、馬より速く走れるなんて……!僕もクルマが欲しくなりました!」


どうやら3人は外の世界を思い思いに楽しんだようだ。


「あっ、それよりも……此処がローザンさ…さんの言っていた焼肉のお店なんですか?」


「そうだ!高い肉や美味いデザートが沢山あるぞ〜!!」


「高い肉…!」


「美味しいデザート…!!」


「ミノタウロス…!!!」


「残念だがこの世界にミノタウロスは無い。では、店に入るか!!」


お店に入ってから直ぐに店員に案内され、私達は広い個室へと通された。




「今から1時間食べ放題だぞ!肉は基本ガルドが焼いてくれるから、好きな肉を食えるだけ自由に注文するがいい!!」


『やった〜!久しぶりの焼肉だ〜!』


「これがメニューか、イラスト付きで凄く分かりやす……ん?イラストがどれも生肉だな……それに、テーブルの中央には網……まさか、肉はこの場で焼くのか…?」


「あっ、本当だ!メニュー表に載ってる絵が全部生肉だ!!」


「全てお客さん任せなんて…此処のお店のシェフは何をしているんですか〜?」



どうやら焼肉店は肉料理を専門に出す店だと思っていたようで、3人の焼肉店に対する第一印象はあまり良くないようだ。


「まあまあ…ほら!私が先に頼んだ牛タンがやって来たぞ!!まずはこれを食ってみろ!!」



数十分後……



「すいません!牛タン5人前追加お願い…あっ、ネギ塩の追加もお願いします!!」


「牛カルビの追加も頼む!!3人前で!!」


「すいませーん!トリプルアイスを一つ下さい!」


勇者3人組は夢中になって肉やデザートに食らいついている。すっかり焼肉が気に入ったようだ。


それにしてもこの3人は本当によく食べるな……





「あー!凄く美味しかった…!」


「ああ、最高だった…!生肉を客に焼かせる事で料理人の手間を省いた結果、客に素早く肉を提供できるようになったんだな…!店主は本当に頭が良いな…」


「デザートも最高でした〜!」


「君達が満足してくれたようで良かった!」


「それにしても、先ほどからゴコさんの姿が見えませんが…彼女は一体何処に行ったんですか?」


「ゴコはカードに戻した。もしゴコも焼肉に誘ったら店が大変な事になるからな…」


因みに、ルーナはまだ学校で仕事中だ。


「そ、そうでしたか……」


「そうだ!ローザンさん!」


「ん?何だ?」


「魔王討伐後についての話です!僕達、あれから色々考えたのですが……



僕達はローザン様に付いて行く事にしました!」


「ほう……」


「ローザンさんは僕達が落とした命を再び拾い上げて下さった上に、魔王討伐の為に全力で手助けしてくれました!なので僕達は、この命をローザンさんの為に使うと決めました!!

お願いします!僕達をローザンさんの側に置いて下さい!!」


「成る程……まあ、何となくこうなる事は分かっていた。それに、私に拒否権は無いしな……



いいだろう!君達を私の側に置いてあげよう!!」



「えっ!ホッ、ホントですか!ローザン様、ありがとうございます!!」


「ローザンさん!本当にありがとうございます!私、全力で頑張ります!!」


「ローザン、ありがとう…!この命は全てローザンの為に……!」


「いやいや、私が居る限り君達を再び死なせるような真似はさせない!もう少し気軽に考えてくれないか…!」



『(ねえ、ガルド……何で智恵に拒否権が無いの?)』


『(理由は簡単です。本来はあの場で終わってしまう予定だった勇者様の命を、主が無理矢理生き返らせてしまったからですよ)』


『(ええっ!?もしかして3人を生き返らせたのは良くなかったって言ってるの!?ガルド酷い!!鬼!!悪魔!!)』


『(違います、生き返らせた事で勇者様の運命を大きく変えてしまったのです。

それに、勝手に人を生き返らせておいて、後は野となれ山となれなんて…そんな粗略な対応をする方がどうかと思いますよ?)』


『(うっ……)』


『(ですが、主には膨大な魔力と3人を養える程の財力がありますから、勇者様がどのような結末を望もうが適切に対応出来たと思いますよ?)』


「(まあ、厳密に言うと私の金じゃ無いのだがな…ガルド、いつもありがとう)」


『(いえ、私の力は全て主のものですから)』



(とりあえずは異世界に飛んでしまったクラスメイトを回収する手助けも欲しかったから、私にとっては逆にありがたい申し出だったのかもしれないな……)



「さてと、とりあえず君達には寝泊りする宿が必要だな?ガルドのマンションにはまだ空きはあったな?」


『はい、もしもの為に何部屋か空きは作ってあります。折角なので主の家に近いマンションの方にしましょう』


「よし!では、今からガルドのマンションへと向かうとするか!!」



焼肉店から出た後、私達はガルドの高級車に乗って、ガルドが所有しているマンションへと移動した。


「凄い…!此処がガルド様が所有する建物…!」


「で、デカい……!」


「凄く綺麗だ……」


「此処はセキュリティも高いから安心して暮らせるぞ、まあ君達にセキュリティは必要無いとは思うが…」


「よく分かりませんが凄い場所なんですね…!」


とりあえず3人の指紋登録を済ませ、勇者達の部屋へ移動している最中に3人に1枚ずつICカードの鍵を配った。


「ローザンさん、これは何ですか?」


「これは部屋に入る為の鍵だ。絶対に無くすんじゃないぞ?『解錠』!!ほら、此処が君達の新しい家だ、入ってみろ」


「ローザンさん、今魔法使いました?」


「とりあえず入ってみろ」


「わ、分かりました…」


私は扉に掛かっている鍵を開け、3人を室内に招き入れた。 


「うわぁ……凄い!!」


「凄く綺麗だ……!!」


「めちゃくちゃ広い!!」


室内には物が一切置かれていないが、それを抜きにしてもこの部屋はとても広くて綺麗だった。


ガラス戸の向こうには3人まとめて余裕で出られるベランダと、ビルの明かりに彩られた綺麗な夜景が見えた。


「外綺麗…!あの、ローザンさん!向こうの大きな建物の中に人が見えるのですが、あれもマンションですか?」


「そんな所まで見えるのか…いや、このマンションの前に他のマンションはまだ無かった筈だから…多分メレンが見ているやつは仕事をする為の施設だな。その建物の中に居るのは仕事をしている人だ」


「へぇ〜!こんなに暗くなってもまだ仕事をするんだ〜!お仕事大好きなんだね!」


「成る程……それにしても、僕達にこんな凄い場所を貸していただけるなんて……!ローザンさん、本当にありがとうございます!!」


「僕達……?一応言っておくが、部屋は1人1部屋だぞ?」


「……ん?」


「…えっ?」


「えええっ!?!?此処は1人分の部屋なのか!?」


「そうだ。君達にもプライベートと言うものがあるだろう、個人で自由に使ってくれ」


「こ、この広い部屋を1人で…!?」


「夢みたい…!」


どうやら勇者3人組は部屋も気に入ってくれたようだ。



「あっ、そうだ!あの…ローザンさん…」


「ん?ラファー、どうしたんだ?」


「あの……此処までしていただいてから更に言うのもアレなのですが……僕達もローザンさんと同じ学校に通わせてくれませんか?」


「学校?」


「ローザンと同じ学校に通えば、いつでもローザンを護衛する事が出来るしな」


「それに、この世界の事も勉強してみたいし、普通の人と一緒に普通の授業を受けてみたいですし…」


「成る程……そうだ。白黒、お前は人間の記憶をある程度いじる事は出来るな?」


【……まあ、出来るけど……】


「おお!流石だな!では、この3人を私と同じ学校に通わせる事も出来るな?」


【……どうせ僕に拒否権は無いんでしょ?分かったよ……やればいいんでしょ……】


「よし!ついでにこの世界の言語やある程度の勉学も勇者3人に付けておいてくれ!」


【はいはい……じゃあ、来週の月曜日から君達3人は転校生として高校に通えるようにしとくから……】


「ありがとう白黒!と、言う訳だ!確か君達は私と同い年だったから、これからは君達は同級生だ!だから私とは…まあ、慣れるまででいいが、なるべくタメ口で接してほしい!」


「えっ!?あの……学校に通わせてくれるのは有難いのですが、流石に命の恩人である賢者様に馴れ馴れしい口を聞くのは……」


「言っただろう、この世界では私はただの一般人であると…その一般人が同年代の学生に恭しい態度で接されているのを他者が見たら、世間でたちまち私に関する変な噂が流れてしまうだろう……」


「……わ、分かりまし…分かった。これからは貴方…君とは?同級生…だ……ね……?」


「まあ、急に変えなくても最初はくだけた敬語でも全然大丈夫だ。ラファー、ゴドー、メレン、これからも宜しく!!」


「「「よろしくお願いします!!」」」


こうして勇者3人は暫くの間、私と同じ世界に住み込む事になったのだった。



「そうだ、折角こんな大きな部屋を手に入れたんだし、最低限の家具や家電を買っておかなくてはな!明日は皆で大きなデパートに行こう!」

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