エピローグ
数か月後、拘置所に移送された槻源蔵は病に倒れ、そのまま帰らぬ人となった。今度こそ、本当の遺言に従って、一人残された英介がその全てを継ぐことになっていたが、流石にまだ学生の彼は、会社を継ぐことは辞退したようだった。
今、彼は源蔵の葬儀や諸々の手続きのために、再び新潟の実家に戻っている。
その彼から、電話が入った。
「実はさ、蔵の中の隠し扉、開けてみたんだよ。祖父は隠し財産の事も嘘だと言っていたけど、あの中には結構なお宝が隠されていたよ。多分あの時は、どうにかして、兄さんを説得しようとしてたんだな」
「それで? お宝自慢するために電話したってことか?」
「いやいや、違うよ。その中の一つに、興味深いものを見つけてね」
「興味深いもの? やっぱり自慢じゃないか」
「最後まで聞けって。実はな、あの徳川埋蔵金の在処を示した文書が見つかったんだよ。だけどちょっと問題があって……」
「問題?」
訊きながら、何か嫌な予感がした。
「暗号だよ。そのお陰で、はっきりとした場所がわからないんだ。ちょっとこっちに来て、一緒に探してくれないか?」
「ダメダメ、もう暗号はこりごりだ。俺に頼らないで自分で考えたらどうだ?」
「そう言うと思った」
その声は、突然背後から聞こえた。まるで携帯の中から実体化したかのように、はっきりと聞こえたその声に、俺は反射的に振り返った。
「お前……なんでこんなところにいるんだよ」
英介が携帯を片手に、にやにや笑いながら立っていた。
「どうせ行かないって言うと思ったから、俺が無理やりに連れて行こうと思って、戻って来たんだよ」
「ちょっ、マジでやめてくれよ」
割と必死で抵抗したものの、気づいたときにはやはり上越新幹線の車内で、駅弁を頬張っていたのであった。