071.ザラメちゃん武器錬成に失敗する
■
観測者である貴方が普段通りの日常生活を送っている合間、ちょうど昼食時だ。
あなたの観測対象のひとりザラメ・トリスマギストスはアイテム作成に没頭していた。
昨日は行方知れずになり大騒動で心配させられたが今日はおだやかな展開で一安心だ。
彼女の頑張る姿にはなんとも元気づけられるものがある。
直接は手助けできないまでも助言や応援をして、見守ることにも意味があるはずだ。
「調合錬金! 【創出錬成】!!」
ユキチ・フリシキルの防具作成につづいて、ザラメは同じ亡霊素材で武器を作った。
【その場しのぎのバタフライナイフ[250DM]】
【品質:★★☆☆☆】
【特殊効果『その場しのぎ』:このアイテムの耐久値と価格は通常の1/3になる】
「し、失敗作だコレ!?」
貴重な素材と調合時間が水の泡だ。お気の毒に。
【舐めるとゲロ苦いナイフ[931DM】
【品質:★★★☆☆】
【特殊効果『ゲロまず』:これを食す、または料理に使用すると猛烈にまずくなる】
【バナナのショートソード[1500DM]】
【品質:★☆☆☆☆】
【特殊効果『バナナ滑り』:強く握りしめると刀身が柄からつるんとすっぽぬける】
【ごぼう[50DM]】
【品質:☆☆☆☆☆】
【特殊効果『ごぼう』:この武器は食品『ごぼう』としても扱う】
「な、なんでー!?」
ああ、ドツボにハマっている。しかしBランクの武器作成に何度もミスるとは。
少々、不自然なくらい失敗がつづいている。
――というかごぼうは一体どうやったんだ? 金属素材ちゃんと入れてたのに……。
「うう、一体なぜ……」
そしてザラメ当人も他の観測者の助言もその解決の糸口が見つけられていない。
これまでザラメの創出錬成の成功率はかなりの高さだった。
急に失敗がつづくが、これといって精神や体調に異常もなさそうにみえる。
あなたはすこし時間を割いて、その原因をしらべてみる。
そしてひとつ推論に辿り着き、助言することにした。
『 』
「え……? わたし、“武器づくり”が苦手……なんですか?」
ザラメは目をぱちくりさせ、貴方の指摘におどろく。
『 』
「た、確かに……普段、武器に興味はない、かもですね。いわゆる男の子の趣味?」
ザラメは50DMのごぼう(もはや武器かもあやしい)を眺めてため息をつく。
無理もない。
小学五年生の女子児童の興味ジャンルに武器が含まれないのはごく普通のことだ。
「つまり、わたしの“イメージ力”が全然まったく足りてないせいで武器は苦手、と。……そもそも錬金術の成功率にわたし個人のイメージが影響するんですか?」
『 』
あなたは懇切丁寧に説明する。
ゲーム仕様上、固定された調合結果を求めるには【調合レシピ】が必須である。
ザラメは【調合レシピ】を外部から用意せず、独自に閃いたレシピで開発してきた。
独自レシピは個人のセンスが大きく問われる為、個人のイメージができないものを独自レシピで作ろうとするのは困難を極める、ということだ。
そしてもうひとつ理由がある、とあなたは説明する。
「え!? 錬金術師って鉄や鋼の武器や防具が苦手!? 錬“金”術なのに!」
『 』
「……あー、職工師。忘れてました。確かに鍛冶職人より錬金術師の方が鋼鉄の剣や鎧を作るのが得意っていうのはおかしい、ですよね。ドラマギは四大生産職があるんだからなんでも万能で作れないのは、それはそう」
ザラメは少々落胆しつつ失敗の原因がわかって落ち着いたようだ。
「ぐむむ、そろそろユキチくん達に合流しないと……」
ザラメは一旦上級個室を後にして、施錠する。今日一日はこの部屋を借りているのでまた戻ってきたら作業を再開するつもりのようだ。
ともあれ、ザラメが元気そうな様子にあなたはホッとしてることだろう。
なにせ、昨夜はとても心配させられた――。
毎度お読みいただきありがとうございます。
お楽しみいただけましたら、感想、評価、いいね、ブックマーク等格別のお引き立てをお願い申し上げます。
いいよね、クソみたいな武器ガチャ結果!
使い物にならないハズレアイテムも御愛嬌デスヨネ。