072.ドワーフは土の民
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遡ること被災二日目夜、ザラメは地下街での取引の渦中にあった。
この時、観測不能の状態がつづいていたザラメの代わりに、観測者であるあなたは黒騎士たちの観測を行うことでこの場に居合わせていた。
つまり、黒騎士をはじめとしたクランメンバーはこの取引現場に駆けつけていたのだ。
しかし警備は厳重――とても力付くの救出劇とはいかず、チャンスを伺うしかなかった。
地下街の警備網を変装や隠密行動を駆使してバレないように潜み、それらが不得手な黒騎士は建物の上に隠れて待機していた。
そこへシロップ・トリスマギストスが現れ、ザラメを12億5000万DMという桁違いの身代金で引き取っていき、盗賊シチはどこかへ消えて裏取引は終了した。
その後、シロップは馬車で第二帝都錬金術協会の敷地へとザラメを連れていく。
「……くっ、参った、隙がない」
『 』
「……わかってる。あの様子なら無事なはずだ。わかっているが、ああ、もどかしい!」
今すぐ救出しに行きたい。それができない。黒騎士は目に見えて苛立っていた。
しかし黒騎士は冷静さを欠くことはなく、所在を確認したところで撤収を選んだ。
「格好悪いが、今は待つしかない……」
あなたは黒騎士をはげまし、その日の観測活動を終えた――。
そして翌朝、クランは正規ルートでザラメに接触するユキチの第二隊と不正規ルートでザラメを救出する第一隊に分かれて活動を開始した。
不正規ルートとはすなわち――。
「あなをほる作戦だ」
「あなをほる!?」
大真面目になに言ってんだこいつ、と言いたくなる作戦立案を黒騎士は説明する。
「第二帝都パインフラッドには元々地下空間が存在するのは知っての通りだ。地下街や地下水路を経由して協会施設の敷地直下にまで地下通路を形成して、いざという時のために脱出路を作っておく。平和裏にザラメを奪還できるならそれに越したことはないが、強奪するならこれに限る」
「いやいや脱獄映画の見すぎでしょ!? そんな地下を掘るなんて悠長すぎるわよ!」
ネモフィラのツッコミに黒騎士は憮然と答える。
「だが地下掘削を想定するNPCはいない、そうだろ?」
「穴掘りの手段はどうすんのよ!?」
「俺とドンカッツ、エビテンの三人でやる。狼とドワーフは穴倉で暮らすものだ」
ドワーフ夫妻はすかさずえっへんと胸を張る。
「わしらドワーフは種族特徴【土の民】がありますからのう」
「あなた似合ってるわよ! ドワーフらしくていいじゃないそれ」
「ふぉっふぉっふぉっ」
ロールプレイを楽しむ夫妻はさておき、この【土の民】や地下に暮らすドワーフの種族設定はたしかに地下通路を作るには最適のようだった。
「交渉は任せるぞ、ユキチ」
「は、はい! まかせてください、黒騎士さん!」
こうして地下通路の工作活動がはじまった。
黒騎士は元々パワーが凄まじく、ドワーフ夫妻は【土の民】のおかげでスコップやピッケルを使わせれば驚くほどハイペースで地下通路を開拓していった。
地下空間を生活領域とするドワーフにとってはまさに朝飯前といった感じだ。
ザクザクザクザク、カンカンカンカン。
土も石も何のその、ゆっくりと歩く程度の速さでどんどんと穴が掘られていく。
「ほいほいっと! そーれい!」
「なんだか楽しくなってきたわねー、あなた」
しかもこの夫妻、恐るべきことに掘削作業をすると経験点が増えるのだ。
土木工事でもレベリングできてしまうのは【土の民】を有するドワーフならでは。
そしてついに黒騎士とドワーフ夫妻は――。
「……これは、レア鉱床、か?」
「ぬおお! か、輝いておる……!」
錬金術協会直下への途上で、偶然にも希少鉱石の眠る鉱床を発見してしまう。
この結果、成長の鍵【鉱床発見】を得たドワーフ夫妻のレベルが5に到達したのだった。
観測者である貴方にとっては、ひたすらつづく地下採掘のたいくつな様子をだらっと垂れ流していた甲斐があったというものだった。
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