逃避行の後
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トオルはヨシュリアの面倒な事件に巻き込まれつつも、何とか過ごしていたが…
逃避行
トオルは家に帰ってベッドから天井を見上げて溜息を吐いた。
昼間にあったヨシュリアの事で、その祖父であるアルドにもの凄く必死に説明した。
アルドは頭を抱えて、話を聞いてくれて
「すまんの。突拍子もない孫で…」
と、何とかヨシュリアと引っぺがして、家に帰らせたが…その必死に掴んでいるアザが左腕に残っている。
ヨシュリアは
「いや、です! この人のお嫁さんになって、ネオデウスに乗るーーーー」
もの凄い力で左腕を掴まれ、腕が千切れると思った。
トオルは「はぁ…」と溜息を吐き横を向いた瞬間
「こんばんわ」
と、声を掛けるヨシュリアがいた。
「う、うおぉ!」
トオルはベッドから飛び退き、床に転がる。
ベッドにいるヨシュリアを指さし
「な、なんで、ここに?」
ヨシュリアは悪戯に笑み
「ちょっとした追跡魔法を、つけたんです」
トオルは顔を引き攣らせる。要するに勝手に追跡して忍び込んだのだ。
ヨシュリアがベッドに立ち
「さあ、朝まで共に寝る! それはすなわち夫婦である証! よって!」
と、ヨシュリアがトオルに飛びつくも、その顔をアイアンクローするトオル。
「なんでーーーー」
と、叫ぶヨシュリアを、ベッドのシーツで蓑虫にして、顔を出させて担ぎスチールフォースで運ぼうとしたが…アルドの家が分からない。
ので、隣のフェーリルの家のドアを叩き。
「フェーリルさんーーーーーー」
と、トオルは声を張る。
暫し後、フェーリルがドアを開け
「なんだ? こんな夜中に…」
トオルは蓑虫包みにしたヨシュリアを見せ
「コイツを預かってください。後で、アルドさんに届けます」
フェーリルはヨシュリアを見て
「ええ! アルドの所のヨシュリアが、どうして!」
ヨシュリアが叫ぶ
「私は、この人のお手つきになったんです! だから、貴方達は関係ありません」
混乱するフェーリルに、トオルは
「事情を説明します」
と、家の中に入る。
そして、次の日の朝…結局、トオルから事情を聞いたフェーリルがヨシュリアを預かり、トオルはヨシュリアを朝早くスチールフォースに乗せて、フェーリルから聞いたアルドの屋敷へ向かう。
ヨシュリアはトオルと一緒にスチールフォースに乗りながら
「一緒に、ご挨拶にいくんですね!」
全く違うので、トオルは無言だ。
そして、アルドの屋敷がある集落に到着すると、アルド達家族がヨシュリアを探していて、トオルが連れてくるヨシュリアを見て
「ヨシュリアーーーー」
と父親のアルファドが駆け付ける。それにアルドも来てトオルが連れている事情を見て察した。
その後、ヨシュリアはコッテリと絞られて、アルドはトオルに謝る。
トオルが帰り際、ヨシュリアが窓から顔を出し
「絶対に、諦めませんから!」
「バカモンが!」
と、父親に頭を掴まれて引き込まれた。
トオルはドッと朝から疲れた。
◇◆◇◆◇◆◇
それから毎日、ヨシュリアはトオルの元へ通う。
どうやって屋敷を抜けて来るのか? 移動手段は、ヨシュリアは父親アルファドからマキナを受け継いでいるので、それで来ているのは分かる。
トオルの家の裏にマキナの足跡があるからだ。
その度に家に戻される事、一週間。
トオルが諦めた。もう、好きにすればいい。
ヨシュリアは両手を挙げて喜び
「やったーーーー 公認ですね!」
トオルは顔を引き攣らせ
「違うけどな」
もう、本人が止められないので、アルド達も諦めた。
ヨシュリアが学院での勉強を終えると、トオルがマキナを作っているディランの屋敷に来てトオルの傍にいる。
トオルの邪魔をする訳ではない。
トオルが作るマキナを見上げて驚嘆したり、ちょっと乗ったりもする。
ヨシュリアはトオルを口説こうと本気だが、トオルにとってはペットの子猫が纏わり付く程度だ。
まあ、所詮は、若い頃にある一過性の何かだろう…とトオルは、そんな感じでヨシュリアに接する。
だが、ヨシュリアには違うようだ。トオルは、落ち着いていて、着実に物事を進める。それは、冷静で知的な大人に見える。憧れと恋心との共存があった。
そんな日々が過ぎ行くとある日、ディランの屋敷に数名の獣人族の男性達が来ていた。
獣人族の男性達は、ここから東の果てにあるデウスマギウスの騎士で、ディランにとある事を交渉していた。
「お願いです。ゴッドジオ級を倒したとされる方のお力をお貸しください」
と、三人は頭を下げる。
東のデウスマギウスでは、ゴッドジオ級が猛威を振るって生活が困窮しているのだ。
ディランはウンとは言えなかった。
トオルの扱いは、国の重要に関している。
三人は、自分達の国を救う為に、必死だった。
その話を、同じデウスマギウス出身のルリナと、ヨシュリアがドア越しに聞いていた。
苦しそうな顔をするルリナと、その顔を見るヨシュリア。
二人の傍にディランの妻のマリアンとデリアナが来て
「何を勝手に聞いているのですか!」
と、マリアンが戒める。
「すみません」とルリナが謝る。
ヨシュリアが
「彼女を責めないで、私が悪いのだから」
デリアナが
「とにかく、ドアから離れなさい」
二人は、ドアから離れた。
◇◆◇◆◇◆◇
トオルは、黙々とマキナを建造して、その内に自分でマキナを設計するやり方を憶えつつあった。
そして、自分がどのくらいの大きさまで建造できるか?シミュレーションをしているとそこへ
「トオル…」とヨシュリアが呼び掛ける。
トオルはマキナの建造祭壇から下りて
「なんだ?」
ヨシュリアが
「話を聞いて欲しい」
トオルはヨシュリアから、東から使者が来てゴッドジオ級を倒したトオルの力を借りたいと頼み込んでいると…。
トオルは頭を掻き考える。
ヨシュリアが
「ねぇ…トオル。行ってあげようよ」
トオルが首を横に振り
「おいそれとは行けない。色んな調節があるんだ」
ヨシュリアが
「その間に多くの人達が犠牲になっているんだよ」
トオルは肯き
「分かっている。だがなぁ…許可無しに行動すれば、オレ一人の咎で済むならいいが、それを助長したヨシュリアだって咎を受けて、ヨシュリアの両親や弟妹が大変な目に合うかもしれないんだぞ」
「でも…」
と、ヨシュリアが納得しない顔をだ。
トオルは
「行かない訳じゃあない。少し待て…」
◇◆◇◆◇◆◇
トオルは家に帰ってフェーリルの家に行き、何時もの様に夕飯を共にしていると、静かなトオルをフェーリル達が気付いていた。
何かを考えている。
だが、ムリには聞かなかった。
トオルは一晩、考える。
ヨシュリアの考えは間違っていない。だが…だが…だ。
自分だけの問題なら…。
翌日、ディランの屋敷に行きディランに
「ディランさん。話は聞いています。私を東のデウスマギウスに派遣してください」
ディランは首を横に振り
「ダメだ」
トオルは渋い目で
「どうして…」
ディランも渋い目で
「君は、このウィルフトにとって貴重な人物になっている。大型のマキナ・アーサーを製造できるマキナ・マイスターは貴重だ。君の管理は、王国の直轄になっている」
トオルが
「来た彼らも、相当な権限を…いや、説得材料を持っているんじゃないですか?」
要するに、それ程の重要人物を派遣して欲しいに辺り、タダではないのだ。
ディランが
「東のデウスマギウスの国々の鉱物に関する権利を…融通するという権利書を持って来た」
トオルは驚き無言になる。
相当な条件だ。つまり、自国の鉱物に関する権利を譲渡するというのだ。
そんな国の重要根幹と引き替えにしてまでもゴッドジオ級の猛威が凄まじいのだ。
トオルは無言のままだ。
そんな超級条件を持ってしてもトオルを派遣しないとしているのだ。何にも言えない。
マキナの力とはそれ程までに強いのだ。この世界では…。
ディランは無言になるトオルに背を向け
「そういう事だ」
と、トオルの頭の良さを知っているので、そこで終わりにした所へ、ノックがされて
「アナタ」と妻のマリアン入って来た。
「アナタ…また、昨日の方達が…」
ディランは肯き
「分かった。行こう…」
ディランがトオルの横を通り過ぎると、マリアンが
「トオル様、そんなに救援に行きたければ…ルリナを嫁にして、この国に根付いて頂ければ…直ぐにでも叶いますよ」
ディランが足を止めてトオルを横見する。
トオルは拳を握り締め
「つまり、人質を作れと…」
マリアンが
「いいえ、トオル様が、絶対に帰ってくるとする居場所を持つべきと…」
トオルは無言だが、マリアンがドアを開き
「ルリナ…」
と、ルリナを入れて
「ルリナ…構いませんよね」
ルリナは微笑み「はい」と頷いた。
トオルは俯き、ディランとマリアンはその背を見つめる。
トオルは「それでいいのか? 君は…まだ」と口にするとルリナが
「トオル様が良いです」
トオルは顔を上げ
「分かった。君を妻にしたい。こんな意気地無いの夫だが…よろしく頼む」
◇◆◇◆◇◆◇
その後、速やかにルリナとトオルとの挙式がディランの後押しで進み、エルフの村落やアルド達は喜んでいた。ヨシュリアとサリーアは終始、怒った顔をしていた。
トオルの家に来たルリナは、色んな日用品の買い出しをして、本当に二人だけの生活が始まる実感が出て来た。
ルリナと過ごす一週間後に、トオルは東のデウスマギウスへ行く。
トオルは自分の家で、自分の倍も若い妻ルリナと食事をして
「その…これからよろしくお願いします」
と、トオルは告げルリナは
「はい、こちらこそ」
二人は一週間の間、夫婦として濃密な時間を過ごした。
そして、出発の日、トオルは仕度を手伝ってくれるルリナに
「その…一週間程度で帰ってくる。ゴッドジオ級を倒すだけだから」
ルリナは微笑み
「はい。待っています」
トオルはルリナの肩に手を置きルリナを近づけると、ルリナとキスをした。
我ながら…一週間で相当に入れ込んでしまった。
ルリナは優しい子なので余計にだ。
トオルは手を上げて
「直ぐに帰ってくるよ」
ルリナが手を振って
「いってらっしゃい」
トオルは、東から来た使者と、どうしてか…付き添いを粘ったヨシュリアと共に、東のデウスマギウスへ向かう、マキナ戦艦に乗った。
トオルは一緒に来るヨシュリアに
「なんで、一緒に来るの?」
ヨシュリアは青筋額で
「浮気しないか、監視する為です」
トオルは額を抱え
「どこにそんな要素があるんだ?」
と、悩むのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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