プロローグ
ここはいったいどこだろう。
何もない白一色の部屋――いや、部屋というには扉や窓が存在しない。どこまでも広がる白い空間と呼ぶのが相応しいだろう。
「――さぁ、ここでお別れだよ」
優しい男の人の声がした。"私"は首を横に振ってその人物を見上げる。彼の容姿や表情は霧に覆われていて確認することができない。
「嫌だよ! なんで××××お兄ちゃんとお別れしないといけないの!?」
小さな"私"。目に涙を浮かべながら必死で訴える。彼はそんな私の涙を人差し指で拭いながら語りかける。
「ごめんね。でもこうしないと駄目なんだ。これは定められたことだから」
「嫌だ! 嫌だよ! ずっと一緒にいてくれるって約束したじゃん!」
ついに涙を流し始めた私。そんな私を見て彼がどんな表情をしているのか見て取ることはできないが、悲しい顔をしているに違いないという確信が私にはあった。
「――じゃあね。次に会う時、僕たちは互いのことを覚えていないだろうけど、また仲良くしてくれると嬉しいな」
「嫌だ! ××××お兄ちゃん! 離れ離れになるのは――えっ…?」
彼は私の額に人差し指を当てる。それと同時に私の意識は遠くなり始める。
「嫌……だ。お別れ……なんて……」
必死で意識を保つ私だが、視界が徐々に狭くなっていく。
薄れゆく意識の中で、私はこの空間に自分達以外のものが存在することに気付く。
高さが数十メートルはある白い門。
赤いドレスに身を包み妖艶に笑う女性。
そして、心配そうにこちらを見つめる私と同じぐらいの背をした小さな少女。
それらがいったい何を意味するのかはわからない。
そして何もわからないまま、彼からの最後の言葉を告げられる。
「きっと近い未来にまた会えるから。それまでおやすみ――"レイ"」




