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第48話 多くの仲間たちと共に


―聖人視点―


 動物系兵器のプラモデル達【アニダー】による、重力砲、プラズマ粒子砲、荷電粒子砲はまさに圧倒的であった。



「ぎゅうぇえええええええ」



 矢川のタブレットを失われた我が家のモニター代わりに戦況を確認していると、突然現れた援軍の力によって簡単に汚い悲鳴を上げながら消滅する小さい大佐武朗達。



「な、なんだアレ……。まだあんなにあったのか!?」


 矢川はあまりにも多いグイム達の登場に驚いていた。



「各防衛部隊からこっちにワープさせたのか!? 黒地子は全国に居るんだぞ!」


 俺の驚きは別で、萌恵さんの実家を含め、各家を守っていた部隊は全て対黒地子ように配備していたグイム達だ。

 こっちの戦線が不利になったからと言って、元々守る予定の土地を放棄する理由は無いはずだ。

 だから、アパートの土地を取られてしまうのはまずいので、アパートのグイムの数は他の家を守るグイムの数よりも多かった。

 各地のグイム達の内訳はだいたい、


・城野家(聖人の実家):310


・梅岸家(萌恵の実家):350


・鎌田家(聖人の祖母の弟):50


・城野家(トメが住んでいた田舎の家):310


・祖母の弟の息子一家:50


・祖母の弟の娘一家:50


・叔父一家(第一子長男):50


・従兄一家(叔父の長男):50


・従兄一家(叔父の次男):50


・叔母一家(第二子長女):50


・従姉一家(叔母の娘):50


・従弟(叔母の息子。社会人一年目一人暮らし):15※部屋が狭いためこの数が限界


 という内訳である。

 城野家や梅岸家以外のほとんどが光学迷彩が得意なグイムであるため、この土地を防衛するグイム達の中の光学迷彩持ちは非常に少ないのはそのためだ。


「はい、今届いた情報によりますと、神澤の関係者と名乗る者が、各家の防衛をしてくれたようでして……」


「神澤? って! あの祖母ちゃんを助けた関係者の神澤さんか!?」


「そのようです。梅岸家に襲来した黒地子の手下を返り討ちにしたそうなので信頼できるかと……」


「そんなことが……」


 通信回線が混雑していたのか、こっちまで情報が届かなかった……のか?


「私の家、また襲撃されたんだ……」


 と、萌恵さんが不安な表情をしていたが、


「今は神澤殿の関係者が守っているそうです。ですので現地判断となりますがこちらへ援軍に来ることができたようです。

 各拠点防衛隊の指揮官は軍法会議は覚悟しているとのことです。私も部下だけの責任とは言わず覚悟を決めます」


 副指令がそう言うが、


「いや、罪には問わないよ……。だけど、各家が危なくなったらすぐに俺達のことはいいから守る為に向かうように言ってくれ」


 そう俺は答えた。


 すると、タブレット端末を覗き見ていた萌恵さんが、


「あれ? 作った覚えがないものが……」


 と、萌恵さんも不思議がっていた。

 俺もあのアパートでは作った覚えはない。


「あれは……。もしかして、俺が昔作ったやつか?」


 そう。俺は高校になるまでに多くのガゾプラだけではなく動物系兵器のプラモデルも作りまくった。

 いつしかブームが廃れてしまったことにより販売されなくなったのは残念だったが、ニュースでここ最近新シリーズや他メーカーによる展開をしていることは知っていた。



「お見込み通り、議長閣下のご実家からの援軍の中には、押し入れに眠っていた『動物兵装アニダー』達が含まれております!」



 と、副指令となった『グイム地球同盟軍総司令部防衛隊隊長機』が答える。


「えっ、そんな! だって実家のアニダーは……どうやって動かしたんだ!?」


 あんな土地じゃなければプラモデルも動かない。そもそもアニダーはただの動物で人ではないのだ。

 人型ならば人間のように思考するかもしれないが、アニダーは動物型の兵器。つまり猫型なら猫っぽくなってしまうのではないかと思った俺は、そう副指令に問う。


「はっ。今受けた情報ですと、グイム補給型から噴出させたエネルギーを浴びたところ、アニダーの中に入っていたパイロットと共に動き出したそうでして……」


「マジかよ」


 それで動き出すのか。

 そう言えばアニダーのコックピット内にパイロットフィギュアあったな。

 小さい大佐武朗相手に大活躍するアニダーは、基本1/144サイズのグイムと同等以上の大きさを持つ。

 元々1/72というサイズからか、パイロットフィギュアも付属しており、更には様々な動物をモチーフとした兵器が登場するため体格差はガゾギア以上にある。例えばドラゴン型のアニダーは平均的なガゾギアプラモデルの6倍の大きさだ。


「聖人。いったいいくつ作ったのよ」


 と、カリーヌが聞いてきた。


「うぅん……」


 そう言われても作った数を正式に覚えてなんかいない。


「今来た報告によると、城野家の過去に議長閣下が制作されたアニダーの数は318。グイムは483とのことです。」


「「「そんなに作ったの!?」」」


 副指令の回答に、矢川、萌恵さん、カリーヌが驚く声を出す。


「い、いやぁ……若気の至りというかなんというか……」


 俺がそう言い訳をするが、


「確かアニダーってガゾプラに比べて高級品だったはず。作り過ぎだろう……、グイムも400以上って数にも驚いたがよく親は何とも言わなかったなぁ」


 と、矢川は不満そうに言った。


「いや、親父も面白がってたし、グイムの多さは懸賞で【グイム大西洋戦線セット】の96機が当たったのもでかいから」


「あぁ、あの常人なら同じ機体を永遠と制作し続けて発狂するっていう伝説のセットか……。あんたそれ完成させたんだな……」


 俺の言い訳に狂人を見るかのような目で見てくる矢川。おい、少なくとも鉄ヤスリをぺろぺろしていたお前に言われたくは無いぞ。

 などと思いながら、俺は再び視線をタブレット端末へと移そうとしたのだが、


「ん?」


 俺はふといつもなら会話に参加するお菊が声を出さないことに気付き、彼女を見た。

 お菊はタブレット端末ではなく外を見ているようである。


「どうしたお菊」


 外は小さい大佐武朗とガゾギア達が戦闘を続け、まるでアニメのようなチカチカする光が空いっぱいに広がっていた。



「ワシも……ワシも行くぞ!!!」


「は!? どうしたっ! おい、お菊っ!」


 すると、お菊はいきなり窓を開け包丁を抱えてぶわっと空へと飛んで行こうとする。そう言えばお前飛べるんだったな!


「ちょっと!? お菊っ?! 待ちなさいよ! あんた、そんな刃物で戦えるわけないでしょ!」


「むっ、何をするのだカリーヌ!」


 カリーヌに無理矢理引き留められたお菊は不服そうにしていた。


「ならどうすればいいと言うんじゃ? このままただ見ていろとでもいうのか?」


 お菊はカリーヌに詰め寄り彼女の胸ぐらを掴む。


「おい、お菊何やってんだ! やめろって。カリーヌが言う通り、包丁一つで何ができるんだよ!」


 俺は二人を引き剥がそうとするが、カリーヌは片手で俺に手を向け大丈夫だというアピールをしてくる。

 そしてカリーヌはとんでもない事を言い出した。


「何も行くなとは言ってないでしょ」


「「え?」」


 これには俺やお菊も驚く。

 どうやらカリーヌは行くこと自体は問題ないという考えらしい。

 しかし戦闘能力がグイムよりも低い日本人形では手も足も出ないのでは……?


「カリーヌ。何を言っているの!?」


 これには萌恵さんも黙ってはいられなかったようでカリーヌに詰め寄るが、


「萌恵。これはあなた達を守るための戦いなの。優先順位は絶対的に萌恵達が一番。私達なんて二の次という事は忘れないで」


 と、カリーヌが萌恵にそう言った。


「カリーヌ!? 本当に何を言って……」


 萌恵さんは困惑したようにカリーヌを止めよと手を伸ばすが、カリーヌは後ずさりをして萌恵さんの手に収まる事を拒んだ。

 そしてお菊に、


「こっちよ」


 とカリーヌはお菊によって掴まれていた胸ぐらの手を強制的に外し、その手を引いて車内の座席の下へと潜った。

 俺や萌恵さんは当然座席の下など潜れないので出てくるのを待つだけだ。。

 それをいいことにカリーヌ達はどんどんと奥へと進んでいったようで、ガサゴゾと何かを手にして座席から這い出てきた。


「おい、何をしようと……ってなんだそれ」


 カリーヌとお菊の手には様々な兵器がくっ付けられている服が手に捕まれていた。。

 服の上にはむき出しのフレームが付けられており、周囲にはミサイルポットやバズーカやライフルが装備されている。

 背部には飛行用の羽が装着されている。それらは俺もよく見知ったもので作られているようだ。



「おい。それってまさか、グイムの余剰パーツか?」


 そう。これらは全てグイムを作った時に出た余剰パーツや別売りのオプションパーツであった。

 俺がそう指摘すると、


「そうよ。いざという時の為にグイム達に頼んで車内と押入れにそれぞれ隠しておいたの。練習もこっそりとしていたわ」


 カリーヌは自慢げにそう言い手にした重武装の服を着こんでいく。


「はぁ……。小娘には感謝せねばいかんのぉ。頭に血が上りすぎて忘れていたわい」


 やれやれと首を振りながらお菊は自分の手に持っていた重装備の服を着た。


「お、おい! 二人とも何を!?」


「カリーヌ! お菊ちゃん!」


 俺と萌恵さんは彼女たちの行動に不安を覚え、二人を止めようとした。

 しかし、


「萌恵。大丈夫、私が必ずあなたを平和な日常に戻してあげる」


 とカリーヌは言って外へと飛び出していく。


「聖人。トメの孫であるお前はワシが必ず守る」


 そしてお菊も外へと行ってしまった。


「おいっ! 戻ってこい!!」


「カリーヌゥーーーー」


 俺達が呼びかけても止まる様子も無くそのまま戦場へと進んで行ってしまった。



「これじゃぁ土地の自爆はしばらく待っていた方がよさそうね」


 と、それを見ていた亜矢子は言うのであった。











 タブレット端末には、グイム達だけではなくお菊とは違う日本人形達が炎を出したり氷の槍を出したりしながらまるでファンタジーアニメに出てくる魔法のような技を使って戦っていた。

 その日本人形達はどこかで見たことがあるな。と思っていたら、思い過ごしではなかったことがすぐに発覚する。


「お菊殿! すぐにお戻りを」


「えぇい、離せ! 今それどころではない!」


 追ってきたグイムの腕を振り解き、お菊は日本人形達へと近づく。

 すると日本人形達は向かって行ったお菊達の姿に気付いたようで、



「あ! お菊お姉さま! ご無沙汰しております」


「ふむ。周囲の『ぐいむ』という連中から聞いてはいたが、封印から解かれたのだな?」



 と、2体の日本人形がそれぞれお菊に話しかけたではないか。


「お涼、お辰! 久しいのう。お前達の姿を見て居ても立っても居られなくなって飛び出してきてしまったわい。いや、今はそれどころではない。おぬしら、それぞれトメの子供らや源吉の所へ行ったのではなかったのか?」



 そう。現れた日本人形達は祖母の形見で各家に散った人形達だったのだ。


「えぇ、そうですわ。ですが聖人ちゃんが呼んだ神澤という人の仲間が私達が行った先の家を守ってくださるらしいの。

 この地に来るには『ぐいむ』の『わーぷげーと』とかいう移動装置は人間だと使えないらしいので、私達が先に来たのです」


「我の家も同様だな。実際梅岸という家の助太刀をして、悪漢を追い払ったらしいではないか」


「うむ。それは聞いた。じゃがワシが聞きたいのはそこではない。なぜお前達が戦いに出てくるのかと聞いておるのじゃ!」


 お菊は早く帰れと言わんばかりの勢いで日本人形達に言った。

 しかし、彼女達は互いに顔を見合わせ。


「ふふふ。お菊お姉さまは私達の事をなんだと思っておられるのですか?」


「そこら辺に居る『ぐいむ』という輩より、我らの方がよっぽど強いぞ」


「……なにを?」


 グイムよりも強い。お菊はきっと何を言っているのだろうという気持ちになったはずだ。

 お菊はグイムよりも弱い。

 俺の命を狙っていた頃のお菊は毎晩グイムにボコボコにされていたからだ。


「百聞は一見に如かず。我の力、見てみるがよい」


 やたらと偉そうな話し方をする日本人形。お辰だったか? お辰が、空中に魔方陣を形成し、



「これが絹江きぬえが見ていた魔法少女の技という奴だ!」



 絹江とは俺の従姉の名前である。

 お辰は魔方陣から極太ビームを発射し、空中に展開していた小さい大佐武朗を消滅させていった。

 あぁ、その援軍に駆け付けた時の極太ビームを発射した奴。お前だったのか。


「な、ななななんじゃそれはぁぁぁぁぁ」


「なにそれぇぇぇぇぇぇぇ」


 お菊とカリーヌがそれぞれ驚くが、



「あら! そこに居るのはもしかしてカリーヌ?」


「む? おぉ! 久しいなカリーヌ。息災であったか?」


 と、お涼とお辰はカリーヌの方を見ながら嬉しそうであり懐かしいように語り掛けたのだった。


「う、うん。あ、えぇ、久しぶりね。こうして話すのは初めてだけど……」


 そうカリーヌが言うと、


「む? おぬしら互いを知っていたのか?」


 と、お菊はそっちの疑問を感じたようで質問をする。


「えぇ、そうですね。お菊お姉様がトメとトメの母君が就寝する部屋として使っていた場所で飾られていた頃、カリーヌはあの家にやってきたのですわ」


「その後、カリーヌはトメの友情の証として知恵という娘に引き渡ったがな……。知恵は今どうしている?」


 お辰の問いにカリーヌは寂しそうに首を振る。

 その答えを察したお涼とお辰からも寂しそうな雰囲気を感じた。


「そうか……。トメも逝った。きっと天で2人は再び会えたことだろう」


「そうですわね……。私もまた知恵とも会いたかったのですが」


 2体が感傷に浸っていると、


「いや、それよりも今おぬしらどうやってあんな攻撃をしたのだ! ワシはあんなのできんぞ!?」


 ここが戦場の真っ只中という事を思い出したお菊が慌てて2体に問う。


「それよりも。と言うが、話題を変えたのはお菊だろう」


「ボケたんですか? お菊お姉様」


「ボケてなどおわんわっ! お涼、貴様許さんぞ!」


「落ち着け。まったく、ここが戦場だと忘れているのではないか?」


 お辰が今にもお涼に飛び掛かろうとするお菊を止める。


「まったくもぅ、いいですわ私から説明しましょう」


 お辰に守られながら、お涼がやれやれといった感じで説明を始めた。


「いいですかお菊お姉様。私達があんな攻撃が出来た理由、それは想像の力によるものです」


「そ、想像の力ぁ?」


 半信半疑といった感じでその説明を聞くお菊。


「考えてみてくださいまし。お菊お姉様は今どうして空を飛んでいるんですか?」


「それは昔からできたからであって……」


「それはおかしいですわよねぇ? 人形はそもそも空は飛びません。人だって何か道具を使わなければ空を飛ぶことはできないのです。

 ですが、私達は意識がある人形は空を飛べるもの。と考えていたのではないですか?」


 お涼にそう言われるとハッとした表情になるお菊。


「そ、そうか……。トメが話してくれた怪綺談に空飛ぶ人形の話があった。源吉が飛行機の真似とか言ってワシら人形を掴んで空を飛ばせる真似をして空を飛ぶ感覚を掴んでいた。まさかそれが原因で?」


「そうですね。私達は無意識の内に、動き回る人形は空も飛べると思い込んでいたのです。

 それが想像の力が作用し、本当に飛べるようになった。私達が住んでいた土地や聖人ちゃんが新しく住んでいた土地はおそらくそう言った性質を持つ力が出る土地なのです」


 お涼はそう説明したが、聖人ちゃん呼ばわりはなんだか恥ずかしいな。


「我は、絹江が見ていたアニメの技を参考にさせてもらった」


「つまりはそういう事ですわ。グイム達はエネルギー現がとか物理法則がなどと頭が固いようですから教えてもうまくできませんでしたけど。もう自分達がとっくに超常現象的な存在だと言うのに」


 と、2体は締めくくる。


「そうか……だがワシも負けてはおれん!」


 するとお菊は装備していたバズーカを手に取り、ミニ大佐武朗の集団に向け引き金を引いた。




ズゥゥウウン!



 バズーカからは弾が放たれ、一気に十体ほどのミニ大佐武朗の数を削ったのである。


「ははっ、お菊もやるようだな」


 と、お辰が笑い、


「ミサイルやバズーカといった武装をてんこ盛りにしている日本人形とか恐怖でしかありませんわね……」


 お涼は呆れた様子であった。



「よし……いくぞ! 今度もワシは大切な人を守るのじゃぁああああ」



 攻撃の有効性を確認したお菊は他の日本人形やカリーヌ達を引き連れ、そのまま大佐武朗が居る場所へと突撃をする。

 その動きにグイム達数十機も追随した。




「「人形如きがぁあああ!!!」」



 大佐武朗は向かってくる人形達に苛立っているようで、ミニ大佐武朗と共に彼等に向かっていく。

 両者は衝突し、激しい戦闘となった。


「ははははは! 撃てば当たるなぁ!」


「くっ、余裕ぶってる場合じゃありませんことよ、お辰!」


 激しい乱戦に嗤いながら両手からビームを放つお辰。苦言を言いながらもお辰と同様の攻撃方法で相手を屠るお涼、そして他の日本人形達も次々とミニ大佐武朗を倒していくが、ミニ大佐武朗の量の多さに押され気味だ。


「なめるなぁあああ!!」


「いい加減諦めなさいよ!」


 その中でも、お菊やカリーヌは手持ちの兵器の高火力や連射速度により善戦していた。グイム達の加勢もあっての活躍かもしれないが、それでも前へ前へと進んでいく。



「撃て撃て!」


「空中で戦っている連中の援護をするんだ!!」


 地上では陸専用グイム達がお菊達を支援するために砲撃やミサイルを飛ばしまくる。

 もはや戦局は最終段階である。

 徐々に追い詰められていく大佐武朗は、汚い声で喚き散らしながら人形達を威嚇する。


「貴様ら如きが、人間様に逆らうなどあってはならん! あってはならんのだぁぁぁぁぁぁ」


「人間を止めたような奴が、人間を騙るなぁああああああ!!!」


 ついにミニ大佐武朗の壁を突破したお菊がそう大佐武朗に向かって言い放った。そして、両手にビームライフルとミサイルランチャーを構えている。

 突破したのはお菊だけではない。続く他の人形達も同様に各々の武器で大佐武朗を狙っていた。


「アンタなんかに萌恵の幸せの邪魔をする権利なんかないのよ! この欲張りジジイ!!」


 カリーヌもそう言ってバズーカやマシンガンを構え、お菊と共に引き金を引く。




「ぶもぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」




 ミサイル、ビーム、実弾。様々な攻撃が大佐武朗の体へと吸い込まれるように当たる。

 大佐武朗は痛みからか汚い叫び声をあげ、大佐武朗は光の中へと消えていった。


 そう。お菊とおカリーヌがミサイルランチャーから放った一撃には対艦用反物質ミサイルが含まれていたのだ。





 一方、俺達はと言うと、車内でその光景を見守っていた。

 だが、そんな余裕が無い者が一人、



「うわぁああ! お、抑えきれないぃいいい!?

 おげぇぇぇぇぇ」


 俺の前の席に座る亜矢子である。

 結界の周囲に被害が広がらないように術を張っていた亜矢子達可部和見家であるが、お菊達の攻撃が大佐武朗を貫通した先の結界に当たり、結界とお菊の攻撃がせめぎ合う形となってしまっていたのだ。

 自身の霊力だけではなく、土地から吸い上げた力を使っても間に合わないほどの高威力があるお菊のビーム。それを受け止めるだけの結界を維持することが難しのだ。



「ぐぎぎ。ぐぎ」



 次第に女の子がしてはいけないような顔になってくる。

 なぜ俺の前に座っているのにわかるのかと言えば、苦しいのか体を捻りグルングルン首を振ってこっちに顔を向けているからだ。


「あ、亜矢子様! 大丈夫ですか!?」


 と、運転をしている部下の男。


「あぁぁ。嫁入り前なのになんてお顔を」


 と、亜矢子の隣に座る部下の女が泣きながら言っていた。

 敵対していた時の恨みが無いわけではないが、さすがに可哀想になってくる。


「お、おいお菊、さすがにヤバい! なんというか結界もヤバいが人の名誉的にもヤバい」


 タブレット端末越しに俺はそう言うがお菊には聞こえていないようで、



「うぉおおおおお――――――」


 と、叫んでいるだけだ。


「流石お菊お姉さま。伊達に長く生きていませんね!」


 などとお涼が喜んでいるが、喜んでいる場合じゃない。



「あぐぅ……」



 一方車内の亜矢子は白目を剥き意識が朧気になってしまっていた。



「亜矢子様! 術は安定しましたぞ。よくぞやってくれました!」


「結界は維持されておりますぞ!」


 亜矢子の部下がそう亜矢子に言うのだが、言われた本人は意識が朦朧としているようなので聞こえているのかわからない。


「結界の維持は私が引き継ぎます」


「あぁ、頼んだ」


 亜矢子の部下である女の方が気絶寸前の亜矢子の術の維持をするようで、運転手の男はいつでも逃げられるように運転に集中する。

 今のところ俺達は黒地子のボスである大佐武朗から一番離れている場所で待機している状態なのだ。

 ここ一帯家や電柱、看板の瓦礫が道を塞いでいるので車で進めばまるで迷路のように行き詰まる。もし車でこれ以上進めなければ最悪徒歩で移動するしかない。

 気絶寸前の亜矢子やある程度回復したとはいえ怪我人の塚村を運びながらどこまで逃げることができるだろうか。



「あっ、カリーヌ達が」


 俺が脱出方法について考えていると、萌恵さんがお菊達が動き出したことを伝えてくれた。

 おいおい。これ以上危ないことをするんじゃないよ。お前達は戦闘用の人形じゃないだろう。いや、戦闘用の人形なんてこの場にはいないだろうけど、お菊は戦争関連の作品に登場したキャラクターではない。

 そんなことを思いながらもタブレット端末から彼らの様子を見守った。




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次話は明日の予定です。

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