第47話 各地の戦闘
急遽追加した話です。迷いましたが投稿します。
時は聖人が住むアパート周辺にて最終決戦が始まってすぐ。
―梅岸家―
「はぁ……」
梅岸家を守るために可部和見 亜矢子から指示をされた一人の男、国島 涼雅は、一人梅岸家の庭でテントを張り黒地子家の襲撃に備えていた。
国島 涼雅。彼は萌恵の両親を誘拐しようとこの家に乗り込み、グイムの部隊に撃退された男であった。
一緒に萌恵の両親を誘拐しようとした仲間はグイムの攻撃により負傷し、現在可部和見家に関わりが深い病院にて入院中である。
そんな彼は一人寂しくテントの外で結界の状態を確かめながらため息を吐いていた。
彼がため息を吐いた理由。それは――――、
「本部にて戦闘が開始されたと報告あり」
「なんだと! 此方へ援軍の要請は?」
「それはまだない」
「いや、そもそも援軍の要請があるとは思えん。我々はここに襲撃してくるかもしれない黒地子に対抗する為の部隊だ。
我々が離れて副議長閣下のご両親を守れなくては意味がないだろう」
と、同じく外でワチャワチャと話しているプラモデル達の存在が原因であった。
梅岸家襲撃後、今度はこの家と住人を守る為に派遣された彼は、彼等の事を亜矢子やグイム達本人から詳しく聞くことになる。
「(こんなに動いて言葉も話すプラモデルって――――夢を見ているかのようだ……)」
付喪神や妖、悪霊、式神などを多く見てきた彼にとっても初めての体験だ。
グイム達の性質としては付喪神のようだが、作成されて直ぐに動き出す付喪神など見たことも聞いたことも無い。
「(俺はプラモデルに負けたのか)」
と、それなりに退魔士としてプライドがあった彼の自尊心はボロボロになってしまっていた。
そんな事を死んだような目をしながら考えていると、
「おぉい、涼雅君。スイカが切れたぞ」
「グイムちゃん達もいかが?」
と、萌恵の両親が台所のガラス窓を開け、そう話しかけてきた。
「え、あ。はい。頂きます……」
「我々は人間と同じ食事はできないので遠慮いたします。それと、今夜は危険なので家の中で身を隠していて下さい」
「あらあら。そうなの? それは残念ねぇ」
「(なんで俺達を普通に受け入れてんだよ!!)」
グイムや涼雅に対し普通に話しかけてくる萌恵の両親。そんな彼等に心の中でツッコミをするが、そもそも自分達を受け入れるように催眠を掛けたのは可部和見家の術者である。
正確には可部和見家の者の意見を何に疑問も覚えず受け入れるようにしているので、グイム達を受け入れろと涼雅が指示をしたのでこのような事になっている。
「(それよりも! 亜矢子様達は戦闘が始まったのか。なら、黒地子の連中はこっちに来るのか?
いや、ここに来る程連中の戦力はあるのだろうか? 少なくとも土地確保に動いているなら、こっちに来る可能性は限りなくゼロに近い)」
グイム達が先ほど話していた通り自分達も援軍に行った方が良いのかと考えながらスイカを食べる涼雅であったが、
「不審なSUV車3台を確認! こちらに向かってきているようです!」
「ブフー」
「うわぁ、きたねぇ」
グイム達の会話を聞き、思わず食べていたスイカを吹き出してしまった涼雅。
「不審な車!? それは本当か!」
と、隊長格グイムへ報告をした一般機のグイムに詰め寄る涼雅。そんな彼へ迷惑そうな態度をしながら、
「えぇ、まっすぐ此方へ向かってきています」
そう一般機のグイムは答えた。
「直ぐに確かめる。方向は?」
涼雅はそのまま周囲の警戒目的で飛ばしているフクロウ型式神を移動させようとしたが、
「映像を出せ」
「はっ」
隊長グイムの命令で一般機により立体映像がその場で出された。
無駄に解像度が高いその立体映像を拡大していくと、近付いてくる車に乗る者達の顔や服装もしっかりと確認できるではないか。
「(俺の式神より高性能じゃね?)」
などと感じつつも涼雅は目を細め乗っている者達を確認する。
一般人であるかもしれないし、仲間かもしれない。誤った判断をしてしまえば大惨事なのだが、
「黒い狩衣。それに見覚えがある顔の奴も居る。間違いない、黒地子の連中だ!!」
「総員出撃開始! 交戦の許可を出す」
隊長グイムの判断は早かった。
次々と梅岸家から飛び立つグイム達。
梅岸家には、他の家より多くのグイム達が配備されている。
理由は一度狙われたという事もあるが、萌恵の部屋をまるまる一部屋基地化できたという点が大きい。
周囲も民家などは無く、田畑や空き地が目立っており、そこの草むらからも隠れていたグイム達が飛び出し黒地子家の車に先制攻撃を始めた。
黒地子家もただ攻撃を受けるだけではなく、式神を多く飛ばしグイム達に対抗をする。
「(あれ? これって術者同士の戦いなんだっけ?)」
そう思うほど涼雅の出番が無い。
一応防音と認識阻害の結界は張っているので全くの役立たずではない。
しかし、梅岸家の空には戦闘の光が眩くチカチカと光る。まるで戦争だ。
ミサイル、対空砲、ビーム。あらゆる兵器の光が空を明るく照らす。
そしてその様子が肉眼でもグイムが映し出す立体ホログラムから見ることができた。
「黒地子の出した小型機による攻撃、激しさを増しています!」
「此方に比べ攻撃力はありませんが、数が違いすぎます! このままではっ――」
黒地子の部下達に比べ、誘導兵器、高威力の兵器を持つグイム達であったが、戦況は本部――城野家のアパート――での戦い程優位ではなかった。
魔術師から購入し、改造したカラス型使い魔700。式神2000以上。
式神を多く操れる術者を多く揃えたのだろう。数の暴力で勝負を仕掛けてきた黒地子に対し、梅岸家防衛隊は徐々に押されていく。
「くっ、こうなれば」
涼雅は自分も。と、式神を出すのだが、その数10体。焼け石に水である。
梅岸家防衛隊のグイムには広範囲を攻撃できる反物質搭載の対消滅弾を配備していない。これは聖人が周囲への被害を嫌った事もあるが、対式神戦を想定していなかった事が原因である。弾速が遅いバズーカや機敏に動かすことができない大口径砲等を装備して対人戦を想定していた彼等には分が悪いのだ。
「あぁ!?」
案の定涼雅の式神は黒地子の式神と衝突後、黒地子の式神に飲み込まれ消滅してしまう。
「ちっ。このままでは……」
梅岸家防衛隊隊長のグイムもこのままではまずいと判断したのだろう。自爆をしてでも黒地子の式神達の勢いを削ぐこと視野に入れていると、
「「「「「ちゅんちゅん」」」」」
スズメの群れが戦場となっている夜の空を横切った。
野生のスズメなど気にしている余裕はグイム達には無い。
当然黒地子の式神達も無視をしていた――――のだが、
「「「「「ちゅんちゅん」」」」」
突然スズメ達は速度を増し、黒地子の式神や使い魔達に突っ込み、その腹を食い破った。
ありえない行動をした第三者に対し、両者はあっけにとられる。
その隙に次々とスズメ達は黒地子側を攻撃し続け、多くの黒地子の式神達が撃破された。
そして、クチバシによる突撃攻撃だけかと思えば、スズメ達はつぶらな瞳から光線を出し式神達を焼いているではないか。
「はぁ!? なんだアレは!」
このセリフは黒地子側だけではなく、グイムや涼雅からも出てしまう。
しかし、
「あれは……まさか式神? だが、あまりにも高度な……。あんな式神を作れる人間が日本に居るのか?」
と、そのスズメ達を観察した涼雅からはそんな感想が出た。
そしてあれはただのスズメではない。敵である。と判断した黒地子の式神達は、攻撃目標にスズメ達も含めたのだが、一度崩された均衡を見逃すグイム達ではない。
「総員、この機会を逃すな!」
隊長グイムの一言で体勢を整えたグイム達は、ひとまずスズメ達は援軍と考えた。
優先的にスズメを倒そうとしていた黒地子側は、死角からグイム達に狙われる。今度はグイム達に集中すれば、スズメの羽がミサイルのように追尾して式神へ刺さり大爆発をする。
形成は一気に逆転した。
やがて、黒地子の術者達にも被害が及び、グイムのビームにより片足を吹き飛ばされる者。レーザーソードにより腕を切られる者等が出始め、降伏をするという事態にまでなってしまった。
「何がどうなっているんだ……」
15分程度で終了した戦闘。しかし、思い描いていた術者同士の戦闘とは違うものとなった涼雅はそんな感想しか出なかった。
気付けば自分はほぼ戦闘では何もしていない存在である。
「!? 反対方向より、こちらへ近づくセダンタイプの車を1台発見!」
しかし、直ぐにまた緊張が走る。
黒地子の増援部隊か? そう梅岸防衛隊の誰もが思ったのだが、
「白旗? 接近中の車両から白旗が上げられています。それに、え? スズメが……。援護をしてくれていたスズメ達が目標の車へ接近」
「味方か? 攻撃はするな! ただし警戒は続けろ」
一般機のグイムが報告した通り、梅岸家防衛隊を助けたスズメ達は新たに現れた車両の上を輪になって旋回し、車の窓からは白旗が出されていた。
やがて梅岸家の前に停まった車から降りてきたのは、運転手の青年と後部座席に乗る高校生位の少年だった。
二人ともスーツを着ており、高校生位の少年が白旗を持っている。
「な、何者だ?」
防衛隊唯一の人という点から交渉役を名乗り出た涼雅が車から降りた二人に問う。
敵ではなさそうだが見た事が無い人物達だ。
しかし、少年の方はなんだか厄介そうな悪霊が複数体憑りついているかのような不穏な雰囲気を涼雅は感じとっていたので警戒をした。
「突然連絡も無く失礼しました。我々は敵ではありません。"神澤"さんから頼まれて支援に来ました」
すると、高校生位の見た目の少年が自己紹介を始めた。
まるで彼がこのメンバーの代表かのようである。
「神澤?」
「神澤って……」
グイム達は顔を見合わせ驚く。
「(神澤って誰だよ)」
一方、涼雅はそんな人物には心当たりが無いので首をかしげる。
残念ながら彼には情報は行っていなかったようである。報連相が行き届いていないのは可部和見家が混乱していたから――なのだろうか。
「(俺にできそうなことはもう無いようだ)」
残念ながら交渉役は隊長グイムに任せる事になりそうなので、彼は大人しく後ろへと下がり事の成り行きを見守ることにした。
「えっ、神澤? それは議長閣下……いや、我等の創造主の城野 聖人様が連絡を取られたという?」
自己紹介に応えたのは防衛隊隊長のグイムであった。
彼は以前、本部からの報告で神澤という名を知っていた。城野 聖人が助けを求めた人物であるが、今まで音沙汰も無かった人物の名前である。
「私の名前は『尾野 駿』と申します。遅れて申し訳ありません。人員手配等で時間がかかってしまいました。こちらの体制の不備で申し訳ない。
ですが安心して下さい。各地で既に我々の仲間が動き出しています」
尾野と名乗った少年がそう言うと、
『こちら城野家実家防衛隊。神澤殿から派遣されたという者達による介入により黒地子家を撃退』
『鎌田家防衛隊。こちらも同じ状況だ。攻めてきた黒地子家を倒せたぞ!』
と、隊長に通信が入る。
「で、では本当に我々を助けに?」
これによりようやく"助かった"という安心を感じることができた隊長であったが、
「しかし! 本部が! 城野 聖人閣下のアパートが襲撃を受けております! それもこちらとは規模が全く違う程、激しく戦闘が起きているのです!」
本部から送られてくる通信はどれもまだ激しく続く内容ばかり。しかも神澤の縁者の介入がある前の梅岸家防衛隊と同様になかなかと苦戦しているようである。そして通信内容には神澤の名が付いた援軍が来たと言う情報は皆無であった。
「それに関しては申し訳ない。我々も急いでいるが、そこまでたどり着くまでに黒地子の妨害に遭っている。
住民が居る民家が多く、人知れず処分しながら進むのに時間がかかるのです」
そう尾野という少年が言う通り、神澤に介入されると予想した黒地子 大佐武朗により、聖人が住む地域に多くの黒地子家の部下が配置されていた。
それを静かに始末しながら聖人のアパートに近付いているため、救援が遅れている状態だった。
「そう……でしたか」
その話を聞き、頭を悩ませる隊長であったが、ふとある事を思い出す。
「ワープゲート。そうだ! 我々にはワープゲートがある!!」
緊急の移動手段であるワープゲート。
試験をした結果、グイムであれば通過は大丈夫だと判断した転送装置である。
その後、各地の防衛隊のグイム達は、苦戦している本部への援軍を決意する。
本来であれば任されている地を守る彼等であったが、心強い味方が現れ、安全と判断されたであろう今、本来守りたかった人を守れなかったという結果を迎えたくは無かった。
「この地に何かあれば我々が責任を取る」
と、各地の隊長グイム達の判断により、援軍を出すことが決定され、各地の防衛隊のグイム達がワープゲートへと突入するのであった。
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簡単に援軍が現れた辺りの理由が薄かったり、アパート以外での戦いが書かれていなかったので急遽追加した話となります。<(_ _)>
尾野 駿:作者の作品の一つである『18禁ゲームの世界に入りました。助けてください』からのゲストです。もしよろしければそちらの作品もブックマーク、評価よろしくお願いします。
彼は本来別の仕事に就いていますが、全国で広く活動する黒地子に対抗する為、神澤が人手に困っていたところ、相談され駆り出されたという経緯があります。
チート級の力を持つ為、出番は少なめ。この作品では彼の出番は終了です。ここからは人形達と城野聖人とその仲間達に活躍してもらいます。




