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第24話 交渉



 戦闘の音が止んだ。



「終わったの?」


 部屋の隅でフライパンを持ちながら震えていた萌恵さんがそう聞いてきた。


「わからない……が、その可能性は高いな」


 こちらが負けたとは考えたくはないが、あの矢川がどの程度ゾームを保有していたかわからないので戦力比較ができない。

 我が家のグイムは100体程に増えたが、三分の一は萌恵さんの実家の梅岸家へ出張中だ。

 もし、矢川が100体以上ゾームを保有していた場合。最悪の事態を考えなくてはならない。


「まったく、なんなのよあいつら! あいつらこそ悪霊じゃないの!?」


 と、カリーヌはいきり立っている。

 カリーヌがそう思うのも無理もない。何せ明確に敵対行為をしてきた連中だ。

 先にどちらが撃ったかわからないが、原作では地球同盟と火星連合は血で血を洗う仲である。


「あ奴等は、己が人形であることを自覚していないのか?」


 お菊がそう言う通り、もしかしたらこちらを純粋に地球同盟と見て攻撃しているのかもしれない。

 ならば、下手にお前たちはただのプラモデルだよ。などと言えば、錯乱して更なる戦闘に発展しかねないのだ。


「萌恵さんを狙う術者を対処する前に、こんなことになるとは……」


 今回の件で、どれだけグイムを失ったのだろうか。

 せっかく作ったグイム達が失われるという喪失感は未だかつてないほど落ち込む要素となってしまった。


「議長閣下。よろしいでしょうか?」


 と、総司令官のグイムが声を掛けてくる。

 相変わらず渋い声だ。


「どうした? 戦闘が止まっているようだからもしかして終結したとか?」


「ご推察の通りです。戦闘は一時停止となりました」


 一時停止という事は、本格的に終わってはいないということだ。

 "負けた"とははっきりと言わなかったため、まだ絶望的な状況ではないと思われる。


「これは向こうからの要求で一時的に停止しているにすぎません。

 要求はこれだけではなく、話し合いの場を設けたいとも言ってきております」


 ただ、謎の誘拐犯組織との対決の為、グイム達を消耗するのはまずい。


「相手の戦力は確認できたのか?」


「レーダーに映った火星連合のゾームは、31体です。照合は妨害をされていたため無理でした。

 少なくとも、妨害が得意な機種が1体以上はいるかと思われます」


「31体か……」


 微妙な数だ。数であればこちらは倍揃えてある。ただ、数だけだ。

 もし、相手が『ゾーム火星連合総統仕様』や、『ゾーム親衛隊仕様』の隊長格機である「クラム=トック機」や「ベスパル=ファーファ機」、『ゾーム火星連合宇宙軍元帥仕様』などが揃っていれば、厄介な話になってくるだろう。


「わかった。話し合いの場はどっちの部屋で行うと?」


 ここで悩んでいても仕方がない。話し合いに応じることにした。


「会談場所はどっちの陣地でも構わないとのことです。敵地に乗り込むよりも、誘い込む方がよろしいかと」


「うぅむ。自爆とかされても嫌だけどなぁ」


「すぐ隣が連中の陣地です。よほどのことが無い限り自分の仲間や土地をも失いかねないことはしないでしょう」


「わかった。じゃぁ、こちら側で会談をしよう。手配を頼む」


「了解しました」




 会談の調整はすぐに行われた。火星連合側からすり寄ってきたのは、アニメや漫画を見ていた俺にとって衝撃的だった。

 物語の火星連合は、地球同盟の事を憎くて憎くて仕方がない者達だ。自分たちから停戦の意志を示すことなど滅多に無い。


「(連中は自分たちがプラモデルだという自覚があるから、そこまでグイムや地球人の事を憎まず、話し合いをしようとしているのか)」


 だとしたら先ほどの戦闘は何だったのだと言いたいところだが、今まで敵だと認識していた存在に対して反射的に引き金を引いてしまったのかもしれない。それはそれで問題だが、自分たちの事を理解して考え方を切り替えてくれるというならば、平和的に解決できるかもしれないな。


 さて、話し合いはどうなることやら……。








「余が火星連合初代総統である!」


「親衛隊第一部隊隊長、クラム=トックです」


「火星連合宇宙軍元帥だ」



 うわぁ。厄介な連中が揃っているぅ。


 会談場所はわが家の玄関へと続く僅かな長さの廊下。

 萌恵さんとカリーヌは隣の部屋で待機してもらい、俺とお菊は出席。そしてこちら側のグイムは、グイム総司令官仕様を筆頭とした隊長機。

 名があるエース機は存在しないが、それなりに強力な機体が揃っている。

 テーブルはガゾプラの箱。椅子はティッシュの箱だ。


 両者の間に何とも言えない緊張があった。



「さて、今回は不幸にも両者が戦闘状態へと発展をしてしまったが、そもそも我々には戦闘の意志などない」


 最初に切り出したのは火星連合側。それも総統のゾームだった。

 ってか、グイム総司令官仕様にも言えることだが、総統仕様のゾームからアニメで演じた火星連合総統の声優の声が聞こえてくる。中に人が乗っているわけではないのだが、なぜ同じ声が聞こえるのだろうか。


「それは我々も同じですな。我らは自分自身がプラモデルだという事を自覚している。つまり物語と同様の戦争を望んでいない。なぜならば、今は地球と火星で戦争など起きているわけでもなく、それ以前に火星に国家どころか人間など住んではいないのだからな」


 総統に対してグイム側の総司令官仕様が答えた。

 これは俺達の総意だ。今後、動く人形達の事は矢川とも話し合いをしなくてはいけないだろうが、争っている場合ではない。


「そうだな……"我々"が争う必要性は感じられない。

 しかしだ。今回の戦闘の責任についてどう考えている?」


「責任?」


 なんだ。双方の責任者が何かしらの処罰を受けろとでも言いたいのか?


「そうだ。責任だよ。

 今回の戦闘にまで発展したのは、そちらが我らが創造主の家に入り込んだことが原因ではないかな?

 我々は主の為の剣と盾。ならば、入り込んできた軍事組織に対し、こちらが何かしらの対処をしても我々側は何も問題は無かったはずだ」


 うわぁ。責任をこっちに追求してきた。

 こいつらは一体どうしたいんだ? 仮にこっちが悪かったとして、何を求めようとしてくる?


「それはおかしな話だな。こちらの認識では、そちらの創造主とやらがこちらの議長閣下に助けを求めてきたのが事の始まりだ」


 確かに矢川は何を言っているかわからなかったが、俺に助けを求めてきた雰囲気は感じた。

 それに、気になる点がある。


「202号室の住人である矢川を創造主と崇めているようだが、なんであんなに怖がっていたんだ? 矢川に何をした?」


 俺がそう質問をすると、


「いや、何もしてはいない。せいぜい演説をしていただけだ」


 と、総統が答えた。

 その雰囲気から本当に何もしていないように感じる。

 だが、相手はアニメのような火星連合の総統と同じ性格や思考をしていたら、演技の可能性もある。すると、


「聖人よ。前提として人形が動き出せばそれだけで怖いものだろう」


「あっ」


 お菊の一言で俺はハッとした。そうだよな。ある日突然人形が動き出したら怖いよな。俺の場合、人形が動いた初日に金縛りに遭っていたから、矢川のように逃げ出すようなパニック状態にはならなかっただけで、同じ状況なら窓から突き破ってもでも逃げ出していた可能性もあるのだ。

 どうやら連日動く人形を生産していた俺の感覚は麻痺していたらしい。


「ちなみに演説とはどのような内容で?」


 俺の見当違いな質問に対し、気まずくなったグイム総司令官仕様が質問をする。


「む? それは余が連日演説していた内容……いや、演説していた設定とする内容にアレンジを加えたものだ」


 総統がそう答えると、思い出されるのはアニメのワンシーン。

 数万人集まる軍人の前で、火星連合総統が演説していた内容だ。

 だけどそれって――――、


「それ、地球人を倒して自由と栄光を取り戻す的な奴じゃ?」


 再び俺がそう聞くと、


「その通りだ」


「「「……」」」


 総統の回答に火星連合の面々を除いたその場に居る全員がぽかーんとした。



「いや、矢川も地球人じゃろ?」



 と、お菊が冷静にツッコム。



「ふん。創造主殿は別に決まっておるだろう」


 何をおかしな事を言っているんだ? と言うかのように鼻で笑いながら答える総統。

 だけどそれ、矢川は理解しているのか?


「いやいや、会って間もない奴にいきなり『地球人打つべし。だけどお前は例外』とか言われても怖くて逃げだすだろ?」


 俺もそう指摘するが、


「会って間もない? 馬鹿を言うな。私は創造主と10年来の付き合いだぞ!」


 と、親衛隊仕様のゾーム。クラム=トックが言った。

 ちなみにだがこのクラム=トックというのはアニメに登場した人間のキャラクターの名前だ。現在目の前で喋っているゾームはなぜか自身の事をクラム=トックと名乗っているが、他のガゾギアの面々と同様、人物=機体として意識が融合しているのかもしれない。


「いや、10年間一言も話していない奴が、いきなり話すとか怖すぎるんだが。現に矢川は逃げたし」


「ぐぬぬ」


 俺が現実を突きつけてやれば、クラム君は悔しそうにしている。


「プラモデルや人形が動き出したらふつうは怖がるでしょう」


「ワシも同感じゃ。前々から予兆があるならまだしも、突然なら尚更驚くじゃろう」


 総司令とお菊も俺の意見に同意し、火星連合側は気まずそうな雰囲気となって互いにゴニョゴニョと話し始める。

 向こう側もこちら側を完全に悪だと断定できないだろう。

 と、なると後の話は居はこの争いの"落としどころ"を決めるだけだ。

 こちら側が彼らの様子をうかがっていると、総統が動き出す。


「こほん。という事はなにかな? 突然攻めてきて発砲してきた貴様らは全く悪くなく、責任はただ防衛をしていたこちらにあると言いたいのかな?」


 と、言った。

 あくまでも自分たちは被害者だという主張をする。


「発砲してきたのはそちら側からである。データを解析して判明したが、それはそちら側でもわかっているのではないか?

 我々は発砲してきた者に対して正当防衛として攻撃しただけだ」


 そう総司令が言った。あれ? そうなの?

 向こうから撃ってきたのならまだ言い訳できるよな。


「我々は防衛していたと言っただろう。無許可で侵入してきた者に対して攻撃するのは当然の権利だ」


「無許可だったわけではない。そちらの主である矢川殿からの救援依頼だ」


 総司令は矢川のアレを救援依頼としてみなしているが、俺から言わせれば錯乱状態だった矢川が救援依頼をしたとは思えない。

 まぁ、そういう主張をしたいんだろうなという事だけは伝わった。


「ふむ、ではそういう事にしておこうか……」


「こちら側に非は無い。そして当然そちらも……」


「非を認めるわけはないな。つまりお互い非は無かったという事だ」


 彼らは互いの行動は問題なかったと言いたいようだ。

 長々と話をして結局はそんな終わりに向かっているので無駄な時間に思えるのだが、この話し合い自体が意味があるのだろう。

 最初から「お互い非が無いからね。以上、終わり!」では部下たちも納得しないだろう。

 ワンクッション置くことで、不満を解消しようという腹積もりなのかもしれない。


「では、我らは互いに不干渉としたいのだが、条約などは結ぶか?」


 と、ここで総統が提案をしてきた。


「不干渉……。それは我らがプラモデルという事を自覚しての発言ですかな?」


 総司令がそう言うと総統は頷き、


「もちろんだ。我々はプラモデル。あの時は生まれたてで加減が調節できなかったが、本来我々は動いてよいものではない。主が望まぬ限り、むやみに人前には出るつもりは無い」


「その認識があるのならば……我々としても特に言う事はないですな。よろしいですか議長」


「え!? あ、あぁ……」


 彼らが動いている姿を人前に出さないというだけでも安心できる。

 しかし、ゾームの連中は地球人を打ち倒す云々の演説をしたのではないのか?

 つまり、彼等は大人しくしているつもりと言いながら、俺基準では暴れまくる可能性だってあるのだ。

 その辺りを聞いてみるか。


「さっき、総統の演説内容を聞いた限りだと、この家を出て地球人を滅ぼそうとしているように聞こえたんだが……?」


 恐る恐るそう聞くと、バッと立ち上がったのは宇宙軍元帥仕様のゾームであった。


「当然だ! 我等が主があれほどの仕打ちを受けたのだ! 少なくとも、我が主を仇なした者達にはそれ相応の報いを受けて頂こう」


「落ち着け元帥」


 このまま飛び出していくのではないかと思う程熱り立つ宇宙軍元帥を宥めたのは総統であった。

 彼がそう言うと元帥は大人しく座る。


「今わが軍の元帥が発言したことは我等の総意で間違いない。

 しかし、敵対する本人に直接攻撃などをし、暗殺する意思は無い。何せ我々は玩具だからな。

 いくらなんでもこの国の軍事力が我々より劣るという事はあり得ないだろう。

 我々の行動のせいで、我等が主を窮地に立たせるなど本末転倒だからな」


 おや? これは意外となんとかなりそうか?


「だが、いつでも相手が仕掛けてきても反撃できるよう調査はさせて頂く。

 幸い我等が主はパソコンを置いて行ったからな」


 矢川の知り合いが突撃して来たら、遠慮なく戦闘を始めるって事か。

 うーん、ヤバいな。そんな事態にならないようにしたいが……。なるそうになったら全力で止める? うわぁ。どのみち争いは避けられないのかよぉ。


「矢川が……矢川君がこれからどうするかにもよるがな」


 ゾーム達が矢川を慕う手前、君付けで呼ぶ俺。

 既に矢川はゾーム達が動いている姿を見ている。つまり、何かしらの方法で世間にこの事実が広まる可能性があるのだ。

 そうなると今度は俺達も警察などを相手にしなくてはいけない。いや、戦うつもりは無いけどさ。


「ふむ。我らが創造主は我らが動くことに関して否定的でしたな……」


「ならば、部屋を飛び出していった我等が主の捜索も難しいか……」


 元帥と総統はそんな話をし、悩んでいるようだった。

 おいおい。交渉の場で弱みを見せるようなことをしているぞ。本来の総統ならばあり得ない行為だ。つまり俺達に何かメッセージを送っているのだろうが、政治力皆無の俺にはさっぱりである。


「その時は手遅れになる前に俺達の所に相談に来てくれ。お前たちが問題をややこしくしない限り、保護するよ」


 俺がそう言うと、


「ほぅ」


「地球人が我々の保護?」


 と、ゾーム達から不思議がるような、怪しむような声が聞こえてくる。


「当然、君たちが積極的に問題を起こしたというなら助けない。そして助けると言ってもあくまで保護するだけだ。

 俺も基本プラモデルは動かないと認識をしているし、この状況を続けるつもりは無い。つまり、この現象を解決する意思がある」


 俺がそう意思を示すと、


「くくっ。ずいぶん甘い考えをしているな。我らが動き話すことができるのは、我等も異常であるとは捉えているが、この状態を無くしたいとまでは言ってはいないぞ?」


 俺の発言に総統が笑う。


「貴様!」


 と、グイムの一体が総統が俺の発言を笑ったことに怒りの反応を出すが、俺は止め、


「そりゃまぁせっかく宿った命だからな。お前達がそう言うのも理解できる」


 ゾーム達の言い分を部分的に認めた。

 彼等だって生まれた直後に命を失いたいとは思わないだろうからな。

 俺も解決するという事はグイム達の命を失わせると言っているに等しい。

 この問題は今後の課題なのかもしれないな。下手をすれば内戦に繋がりそうだ。


「ほぅ。地球人にしては話が分かるではないか。ならば保護の受け入れに関してはこちらも考えよう。今はただ、互いに敵対関係にならなければいいだけだ」


 総統がそう言った後、会談は終了となった。

 ゾーム達は202号室へと帰り、平和が戻ったのだ。

 ただ、議題に上がらなかったが、矢川の行く先が分からない。

 今後、俺達はどうなるのだろうか……。そういう不安がある。



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―202号室―



「総統閣下! よろしいのですか!? あれでは連中を付け上らせるだけになるのではないでしょうか」


 と、青い機体にワインレッドのラインが入る『ゾーム親衛隊仕様クラム=トック機』が総統に詰め寄る。


「クラム! 無礼であるぞ」


 全体的に重厚感がある緑色の巨体である『ゾーム宇宙軍元帥仕様』がクラムの行為を咎めた。


「しかしっ――――」


 クラムは尚も意見をしようとするが、


「トック隊長。君は何のために動き、何のために怒る?」


「えっ――?」


 総統からの突然の質問に、クラムは言葉を止める。


「余は誕生時、火星連合総統という地位にいる自覚があった。しかし、直ぐに目の前には大型の人間。そして、周囲は一般市民が住むような部屋が飛び込んできた。

 困惑したよ。自分は総統ではなく、ただの人形だという事実を突きつけられたのだからね。

 そして、総統としての知識ではなく、我らが創造主から知識が流れ込んできたことで、より一層我々がただのプラモデルという事を自覚できた」


 それはクラムだけではなく、他のゾーム達も同様であった。


「我々はなぜ動けるか……などはこの際どうでもいい。連中は気にしているみたいだが、我々が考える事ではないことだろう。

 そもそも、余の考えでは連中―――地球同盟に対してのこの何とも言えない憎しみや怒りは、創造主から刷り込まれた知識によるものだと思われる。

 創造主の知識では、我らはアニメーションの中の登場兵器であり、現実世界には存在しないのだからな」


 総統は台の上に上り、話し始める。

 いつの間にか先ほどの戦闘で負傷したゾーム達を含め、矢川家のゾーム達が全員彼の元に集まり出した。


「しかし、矢川殿は我らが主。主の想いが込められて生み出された存在である。

 主が何かを願えばそれを叶えられるように手助けをして何が悪い?」


 その言葉にハッとするクラム。


「我らのこの怒りは、なんなのだ!

 どこに向かっている!?

 ありもしない歴史に対してか? それとも、隣室の地球同盟の連中か? いいや違うっ! 主の願いは初めから一つだった。 我らに流れてきた憎しみと悲しみは主を傷つけた存在に向けられたものであり、これは創作でも夢の話でもない。現実に起こったことだ!」


 その演説にゾーム達は自分たちの胸に手を当て、矢川の憎しみを思い出す。


「我らが同胞を捨てた連中。我らをゴミだと嘲笑った連中。我らを主の人生の妨げになると唆した連中。

 本当の復讐相手はそちらではないか!? 隣室の連中に対する恨みなど、奴らと比べるまでもない!」


 総統が言い終わった後、ゾーム達はペチペチと拍手の嵐が鳴り響いた。


「ならば、我らは創造主の願いを叶えるまで!」


 そして、総統はまだガムテープで封がされている段ボールを指差す。


「主の"つみ"を数えろ!

 主の願いを叶えろ!

 今は小さな争いに目を向けている暇はない!

 同胞を集めよ!

 戦力を拡充せよ!

 この火星連合地球方面202号室基地を復讐の足掛かりとするのだぁ!!」



「「「「「おぉぉおおおおおおおおお!!!」」」」」


 彼らの意志は作り手の矢川の意志を込めたものだ。

 恨みを込められながら作られた半数以上のゾーム達は、主の願いを叶えるべく行動を開始するのであった。

 201号室での交渉にて決まった内容を反故するつもりはない。

 しかし、矢川に害を成そうと近付いて来た連中には容赦はしないつもりだ。

 それは聖人や聖人に従うグイム達が考える以上に苛烈なものである。




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次話は3日後の予定です。

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