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Ep.3 表で裏の住人-3

 右手にはアヴァランチ、左手にはガストを握り気配を抑えながらゆっくりと目的の魔物に近づいていく。

 硬い甲殻と硬い宿をもつこの魔物は、カザミ系(カニとかヤドカリ風な奴ら)の中でも特に硬い事で知られていて、大剣や戦斧で叩き潰して倒すのが簡単だと言われている。

 でも、それだと甲殻が砕けて素材として価値がなくなるので素材目当てだと途端に強敵に早変わりする。

 だからか、大体は見て見ぬふりするか依頼があっても避けられる。

 その所為で高級素材と化しているから、彼はそれを比較的安定的に取り扱う事で同業他社と差別化してるらしい。

 取りに行く様に依頼される身としては溜まったもんじゃ無いけど、報酬も悪くないからつい承諾してしまうので我ながら現金だなとも思う。

 駆られることが少なく、数匹単位の集団で行動することで安心しきっているヤドカリ擬き(カルサイトギザミ)の近くの集団の一匹とすれ違う瞬間に、前肢の関節と目の節を切り落として一匹目を仕留める。

 HPが全損するほどのダメージでは無いが、目の節とハサミのどちらかを一度に切り落とされると、倒せるという弱点がある。

 カルサイトギザミは、その自身の甲殻の硬さで襲われる事がなく好戦的ではないけど、仲間が突然やられたとなれば威嚇しながら果敢に向かってくる。

 厄介な硬さの甲殻なのに違いは無いけど、落ち着いて対処すれば大ぶりで重いだけの一撃は怖くない。

 カサカサと向かってくる三匹に取り囲まれないよう気をつけながら、一匹目を背にして対峙する。

 避けながら右のアヴァランチで振り下ろされる爪をいなし、左のガストをいなした爪の関節に突き刺して、剣を回して関節ごと破壊して爪を切り落とす。

 そして、目を落として倒すという手順を繰り返して、3匹とも処理して必要な素材と納品する素材になる鋏の甲殻を分けてストレージに放り込んでいく。

 仕分けが終わる頃には、巻き込まれまいと散り散りに逃げて行った他の集団も、警戒を忘れたかのように元通りになっている。

 鳥頭よりも学習能力が無いとは思うけど、実際狩られる危険は余程の事がなければ見向きすらされないことに慣れた故の習性と思えば、何となく隙だらけなのも分かる。

 そんな脳天気な甲殻類を横目に見ながら、もうひとつの目的のアイテムを取りに先へと進んでいく。

 因みに、17層は前の階層とは打って変わって天然の洞窟のようになっていて、オマケに所々水浸しで動きを阻害して来る厄介な地形になっている。

 魔物たちもそれに合わせて、甲殻類っぽいものや湿気や水場を好むタイプが多めになっている。

 一部はキモイ見た目のも居るけど、前の層と比較すると強さは比較的緩い事もあって、ここまでこられたのなら大した苦労もする事無くボス部屋までは行けるようになっている。

 けれど、その分ボス単体の強さが際立っているのと、見た目がでかいオオサンショウウオの様なのもあって、強さと見た目であいまって苦手意識を持たれやすい。

 当然ながら、でっかい両生類とはわたしは戦いたくないので、ボス部屋の近くにある隠し部屋を使っていつもこのボスを避けていく事にしている。

 その為の隠し通路の前に立ち、周りを素早く確認して誰も居ないことを確かめて壁に向かって魔力を流し込む。

 流した魔力に反応し、壁に隠されている魔法陣が起動して狭い通路の入口が音も無く開くので、サッと体を滑り込ませる。

 壁に入ると同時に入口は元通りのダンジョンの壁に戻り、目の前にぼんやりと照らされた100m程の通路が浮かび上がる。

 その通路を進んで行き止まりの扉を開けて部屋へとはいると、そこにはこの世界の常識とかけ離れた場違いな内装の部屋が拡がっている。

 床は一般的な木材のフローリングだが、壁と天井はコンクリートで作られていて、辺に沿って埋め込まれた間接照明が一部スペースを除いて優しく部屋全体を照らしている。

 照明で照らされている部分は生活スペースになっていて、カウンターが一体のキッチンが奥の壁近くにあり、大きいカーペットを囲うように設置されたL字のソファーとどこかを映しているスクリーンがある。

 他にも本棚を始めとして色々な生活用品が少しちらかっていた。

 ただ、目的の人物はそこではなくて暗くなっている部屋の一角のベッドの上で、気持ちよさそうに熟睡という名の惰眠を貪っている。

 ベッドの主の名前はルリリと言い、ダンジョンコアに変わってこのダンジョンを管理する魔法生命体の1人で、今回の目的の2つ目を手に入れるための協力者だ。

 見た目は、少し小柄な10代後半の女の子で、真っ赤な長い髪が腰近くまで伸ばされている。

 人族のように見えるけども妖精のような種族で、、設定ではヤバめのレズで気に入った相手(女性限定)には倫理観の欠如した事を求めてくる。

 ゲームだった頃は見向きもされなかったけど、いまは立派にお気に入り認定されているので、身の危険を感じることもある。けど、彼女の協力があればあと一つの素材も楽に手に入るのでがまん…


「ルリリ、遊びに来たから起きなよ!」


 何されるのかとちょっと憂鬱な気分を誤魔化すためにカラ元気をはって、彼女から掛け布団を引っぺがして叩き起こす。

 起こされて眠たげな彼女は、引っ張ってくれとばかりに手を伸ばす。その手を掴んで起こそうとするけど、ピタリと止まってしまう。


「もー、悪ふざけはやめてっていつも……」


 抗議を口にしたら、強く腕を引かれベッドに引きずりこまれかける。

 慌てて重心を落とし腰をいれて踏ん張る。


「ん、来てくれた…今日はどっち?」


 再び拮抗した状態になり止まった所で、やっとの第一声が帰ってきた。と同時に、いままでベッドに引きずり込もうとしていた力がなくなる。

 当然ながら、わたしは後ろの床に向かってダイブをする事になるはずだけど、ギリギリでルリリにキャッチされる。


「っぶないっていつも言ってるじゃん!怪我したらどうするの。」


 大丈夫と分かっているけど、心臓に悪いからやめて欲しいと文句を言いつつ、目の前の彼女の瞳に意識を奪われかける。

 眼と眼が合った瞬間、いつの間にかルリリにキスをされていた。

 暫くして開放されるまで、言葉で言い表せない位の凄いのをされた。


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