第045話 水底に眠れ
更新は気分的に、マイペースに、です。
我が妄想。……続きです。
我が姉は、見事な危険回避能力で、もとい、面倒臭い案件を放り投げてさっさとこの場を離脱していった。王女様は逃げる姉さんを追撃しなかった。そして、この場に残されたのは俺とシャウラ二人。逃げ遅れた。今からでも……
「シャウラ後は任せた。俺も……」
「二代目殿、何を言っておる?昨日の夜、調子に乗ってバンバン魔法をぶっ放しておったじゃろうに」
「……あ、はい」
……駄目でした。ニヤ付いて意地悪そうな笑みを浮かべるシャウラに逃げ道が塞がれた気がする。王女様の方も、日中の実地見聞かなんかで戦闘に参加した村の人達にも聞いたんだろうなぁ。
王女様の目は完全に俺に向いているし、完全にロックオンされているようだ。あれこれ言葉のフレアを撒いて煙に撒くって訳にもいかないだろう。
「……タスク。私は魔力量に恵まれ、それなりに魔法行使も出来ます。そしてお父様やお母様から大魔導師の様々な逸話を寝物語に聞いて憧れもしました」
「爺さんと婆さんの歳を考えると伝説になる程昔の話じゃないでしょうね。もしかしたら直に見ていた可能性が有るかもですね」
「そうなんですよ。ところがそんなお二人の活動情報がある時期からパッタリと途切れてしまうんです。世界的に影響のあるお二人だったのであれこれ憶測が飛びましたが、暫くして、再び、ジン様の名前を聞く様になったそうですが、シルクレーテ様の話は依然として全く情報が無く……」
今は日本の東北の片隅で温泉宿<ふじの湯>の女将をやってるからねぇ。それに婆さんの記憶だと自分だけ戻ってこられないって言っていたし、なにか条件でも有るんだろう。そんな思索をしている間も王女様の婆さんに関するマシンガントークが続いていた。俺は適当な相槌を打ってやり過ごす。
「この村の存在は国の一部の上層部しか知らない情報の所為もあって、数十年過ぎるとその存在が噂話や都市伝説の類に昇華されてしまいました。個人的にはここへ一度訪ねたいと願った場所だったのです」
「その気持ち判るっ!歴史に名を残した偉人達の歩んだ道に訪れるとか、造った歴史的建造物の探訪とか心躍るよね!」
実際の日本でも存在は知っているけれど、色々な理由で立ち入り禁止になっていて簡単に訪れる事が出来ない場所も多々あるからなぁ。宗教的価値のある場所とか、長崎の軍艦島とか、硫黄島とか。ここも王女様にとっては或る意味そう云った場所なんだろう。
うーん。ウチの婆さんに付いて凄い語ってるんだけれど、これって婆さん、大魔導師シルクレーテ推しみたいなヤツなのか?俺と話してみたい、じゃなくて本当は婆さんと話したいって感じだ。ちょっぴり悲しいぜぇ。
「今年から領都にある魔法学園を学び舎として通っているのです。才能ある者も多く刺激になるのですが、派閥や柵等で、こういった話を出来る者が少なくてですね」
あ、話題が変わった。なるほど、何故、一国の王女様が辺境伯の収める土地へ来ていたかと思っていたら学業に従事する為ね。爺さんはお飾りみたいな事を言っていたけれど、案外、傭兵は金銭だけの関係。派閥や柵に組しない勢力で且つ、近場って理由もあったんじゃないかと思ってしまう。
「ところが私はそこにきて護衛に付いてくださったジン様からお子さんやお孫さんの存在を聞かされて一度会ってみたいと、でも娘夫婦は遠い異国で暮らして居ると聞いて諦めていたんですがまさかここでお会いできるとは思っておりませんでした」
その通りなんですが遠い異国って、確かに。でも実際は別館裏の風化した遺跡群にある謎の扉を抜ければ直ぐそこらしいんですが、しかも「本当はココとは違う別世界なんです」なんて話せないんだろう。
「そこで、タスクにお願いが有るのです」
魔法談義をしたいと言ってから一方的な婆さん推しの展開でどうなるかと思っていたけれど、王女様のお願い、かぁ。……女性からのお願いは余りいい記憶が無いからなぁ。男冥利に尽きるモノだったり、頑張って奮起してもいい内容だったら考えても良いんだけれど、王女様のお願いだから返答には極力気を付けなきゃイカンでしょう。これ。
「タスクとアキラさんお二人に私の友人、になって欲しいのです」
「ティアマト様!?」
「姫っ!」
あれ、既視感発生。……もしかして、さっきの「堅苦しいのは嫌いです」は「友人になって」を遠回しの言葉、だったんだろうか。王女様に大変申し訳ない事をした。
でも姉さんの騎士団勧誘より円やかだけれど、上司部下の上下関係で指示を出されるより、友人としての縁を頼りに、下手するとなし崩し的に無償で「困っている時は助けてね」って出来る凶悪カードでもあるんだよ。しかも「友人になって」というのは、断るのに一番困るんですよ、なんてえげつない。そして、対面に居る王女様は色々な意味でとてもいい笑顔しているんだよ。
とは言え、実際、断る理由もないし、ここに居る分デメリットも無さそうだし、裏を読んだところで明後日には向こうに帰るんだ。なので俺の答えは一択。姉さんは逃げたので知らない。そもそも砕けて話してる時点で友達扱いなんだろう。胸の辺りに右の手のひらを置いて恭しく頭を下げる俺。
「ティアマト第一王女様より、僭越ながら友人になれとの拝命賜りました。一生懸命勤めさせて頂きます。ありがたき幸せにございます」
「ちょっ、なぜそこまで畏まるのです?!それは友人の態度では有りません。それにさっきからそうですが、私の事はティアと呼んで構いませんし、もっと砕けて話していいのですよ」
「王女様は王女様なので王女様と呼ばせて貰います」
……時事ネタとかあまり好きじゃないんだけれど、どこぞの政治家Jr.みたいな返答をしてしまった。
「アキラさんの様に愛称呼びで構わないのに……」
「流石は俺達が見込んだ麻呂だな、一筋縄ではいかない男だ!」
「こいつは駄目だ、唯我独尊だ、人の話を全然話を聞いていない」
「はっはっはっ、二代目殿は本当に天邪鬼じゃな」
おいっ、そこの三人、特にベン。麻呂とか変なあだ名付けるな!ちくしょう、自爆したとは言え酷いよなぁ、もう。他も苦笑いしながら傍観者顔しないで!!……俺のマインドゼロよ。
こういう時はさっさと話題を変えるのがいいだろう。婆さんの話題で凄く脱線した気もするし魔法談義まで戻すか。って、ほぼ最初っから脱線だったのかよ!
「と、ところで、王女様の得意な魔法はなんです?今朝、大きな魔杖を抱えていたじゃないですか、多分水属性の魔法に特化した物だと思うのですが……」
「えっ、私、ここへ来てから一度も魔法行使した事が無いのですが、何故判ったのです?」
「ああ、今朝、王女様と初めて会話を交わした際に持っていた魔杖から青い魔素の光が見えて……って、あれ?」
魔素が見えたって言ったら吃驚した顔をされたぞ?
「魔素って、マナ変換する前の元になる魔素の事ですか?ちょっ、ちょっと待ってください、魔素って、目に見えるモノなんですか?」
「えっ?」
「えっ?」
「……それな、二代目殿にしか見えていないんじゃろ。そもそも魔法の適正の優れている人間ですら魔素なんてシロモノは見えんのじゃからのう」
なんかシャウラの口からサラッと衝撃の事実を告げられた気がする。なんだろう、考えられるのは魔眼<龍の瞳>の影響だろうけど、最初から普通に見えていたからみんなも見えているもんだとばかり思っていた。拙ったかもしれない。
「ご、ごめん、嘘嘘、魔素なんて見えない。見た事もない。王女様の魔杖から青い色が漏れていたなんて冗談だから……」
「今更、そんな事を言っても遅いですよ。魔素に色が付いているなんて、今世紀最大級の重大な発見じゃないですか!!」
「で、でも他の人間が確認出来ないんだから、俺が嘘を付いている可能性も有りますよ、ねぇ?」
「そうやって、友達に嘘を付くんですか?」
うわぁ、早速、友達行使来たわぁ。しかも、なんか王女様の身体の周りに青い粒子の魔素が渦巻いているし。怒ってらっしゃる?
魔力量に恵まれて魔杖も無しに体内で魔素を活性させてマナ変換出来るのか。手を翳すなりして詠唱を始めれば直ぐにでも魔法行使が出来そうな圧を感じる。これだけでも結構な力量がある。
近場に居た騎士の兄ちゃん達が少し後退りしている。シャウラは何処吹く風。女官のお二方も片付けの手を止め何事かとこちらを窺っている。
「と、兎に角落ち着いて。王女様の魔力が暴走してるって……」
「ほらぁ、見えているじゃないですかぁ。嘘を付かないで下さいよ」
「……あっ」
王女様が咎める様な言葉を発すると周りで渦巻いていた青い粒子が霧散した。……やられた。
「……意図的にでしたか。暴走、じゃなかったんですね」
「魔法学園の初期の授業で体内の魔力コントロールを取得させられて、今の芸当も出来る様になりました。魔法行使の一歩手前でしたが」
「やっぱりマナ変換まで持っててましたか。てっきりそのままなにかの魔法行使をするのかと思いました」
「よく気が付きましたね、ただ詠唱が大変なんですよ。出来れば<ウォーターボール>で頭を包んで窒息ギリギリまで持っていって締め上げたんですが、ふふふ」
「…………」
うわっ、怖ぇー。この王女様、シレっと言ってるけれど思考が怖ぇーよ。そりゃ、騎士の兄ちゃん達も後退りますわ。
なんか「さぁ、全部吐けーっ」って言われても溺れて飲み込んだ水しか吐けずに苦しそうに咽ていると、また同じ魔法を行使されて繰り返す嫌な光景しか想像できない。それなんて拷問?
今から友達の撤回して……駄目だろうなぁ。彼女はあまり怒らせない方がいいのかもしれない。何故こうも俺の周りには怖い女性しか居ないのだろうか?
……早く部屋に戻ってお布団に入って眠りに尽きたいですよ。
読んで頂き有り難うございます。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので面白く読めるかは判りません。
120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。
読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。




