第041話 怨恨みて散る
更新は気分的に、です。
我が妄想。……続きです。
俺は今、広場で遊んでいた子供達から木剣を借りて右手に握っている。目の前にはダイフクさんの娘で髪の毛をポニーテールに結んだ少女、サクラさんが同じ様に、右手で木剣を握って相対している。
第二外壁南門の物見櫓で爺さんと話した後、村の広場まで戻ってきたら<オクノモリ商会>から出て来た彼女とばったり出会ってしまった。そして、絡まれた。姉さんみたいに目と目の光波通信が出来なかったのが原因っぽい。その技術を取得するのは嫌だけれど。
「お前、タスクつったっけ?話は聞いている。ちぃとばかしウチと手合わせしてくれないか?この通り、お願いだ」と、多分、彼女なりの丁寧なお願いをしたのだろう。胸倉を掴まれて持ち上げられている時点で俺に拒否権は無さそうだった。なんか行動と言動が不一致なんですがね。と言うか、誰が何の話をしてこうなったんだよ?とばっちりもいいトコだ。
その流れで村の広場でチャンバラごっこをしていた子供達から木剣を借りて模擬戦をする羽目になった。借りた木剣は子供達が遊ぶには些か大きくて長さが有る、大人向けの本格的なヤツである。流石、傭兵団員が居る村の子供達、小さな身体に見合わずしっかりと振り回している姿を見るに中々にやるじゃないか、将来が楽しみに思える。
しかし、爺さんの方は冗談だったから模擬戦という名のバトルをせず安堵していたけれど、思わぬ伏兵が現れたものだ。俺は避けた筈の道を結局辿る運命にあるのか。今度から二重三重の伏兵の罠に気を付ける様にしよう。俺の気持ちとしては同じ事を二度も犯さない主義なんだ。と、言いながら繰り返すのもデフォなのだけれども。と、心の中で一人ツッコミをする。
まぁ、いいさ。さっさと適当に負けるなりして彼女の自尊心を煽て挙げて終わらせよう。見届け人無しで観客も木剣の持ち主である子供達と魔物の解体作業中なお母さん方だけだし、ね。なんとかなるだろう。
さて、サクラさんは如何動いて来るか?前回の姉さんと同じ様に中段で構えて待つ。開始の合図は、無い。そして自身の呼吸が合ったのか動き始める。横に二つの視線を感じた。
げぇっ、……何でだよ。何で集会所の窓からこっち見てんだよ、姉さんっ!それにシャウラまで!!硝子窓に顔をくっ付けて鼻息で部分的に曇っている。負けたら色々と言われるの目に見えるじゃん。そんなの嫌じゃん。……途端に負けられなくなった。
色んな意味で思考が加速する。視界に映った世界はサクラさんと共にゆっくりと動いている。緩慢な動作で木剣の切っ先が振り上げられる。今回、彼女は声は出していない。駆け引きやフェイントは無しか。純粋で真っ直ぐな剣んだけれど、魔物には通用しても人間相手には厳しいかもしれない。
相変わらず予備動作が大きい。その分力強く振り下ろせるんだろうけれど、ワンテンポ遅れている。今の瞬間で彼女の喉元に突き入れられたけど、折角だし一撃受けてみようか?なんて悪魔が耳元で囁いた。
剣先の軌道から身体の軸を少し外れる様にずらしてサクラさんの太刀筋に合わせて迎撃の構えに移行する。刃を受け流す様に剣を横に寝かせて、側面に当たった瞬間を狙い力を入れて角度を微調整、「コッ」と音が鳴るか鳴らないかの刹那、振り下ろしの軌道を逸らす。そのまま力を抜いて刀身全体の側面を使い「スガー」っと滑らせる。木剣同士がぶつかった音は、最小限に押さえられ、気持ち悪いぐらいの静かな一瞬のやり取り。彼女は無駄な力を使っていた分、勢い余ってつんのめり前方に向かってバランスを崩した。
それに合わせ俺は受け流した刀身を反して、刃先をそのまま跳ね上がったポニーテールと後ろの首筋の隙間に差し入れ、軽く当てる。
思考が減速し、時間は通常の流れへと加速する。向こうにいた頃から偶にあったこの感覚。昨日の晩に婆さんが戦う際に使っていた身体強化に似ていた。ふむ、もしかしたらそれに近いモノかもしれん。と、都合のいい様に思ったり。
そんな事を考えつつも残心は忘れずにサクラさんは首筋に木剣の刃を当てている。瞬きも無く、大きく目を見開いて歯を食い縛っている。頬に冷や汗が伝ったの見えた。……あ、やっちゃった。
「サクラねーちゃん、頑張れー」
「……あ、あれぇ、始まったと思ったら終わってる?!」
「なんか、おねにーちゃんすっげー」
……おねにーちゃんってなんぞ?!木剣を貸してくれた子供達の無邪気な掛け声が聞こえた。解体作業で遠巻きに見ていたお母さん方もざわざわしている。と言うか、今回も前回みたいに泣かないよな、俺対処出来ないよ?んー、逃げよっかなー。でも目撃者多数だから逃げらんないよなぁ。
如何し様か悩んでいると、サクラさんは自分の持っている木剣を後ろに払う様にして、俺が付きけていた木剣をコツンと音を鳴らして弾いた。ポニーの髪の毛も一緒にバサッと広がるが直ぐに纏まった。そして小さく「……なん木剣同士が触れた感覚なかったけど、実体あるやん」と呟く。
「……アンタなぁ、やっぱ強かったんね。正直、見下してて、済まんかった」
それに続き、搾り出す感じで、それでいて、はっきりと聞き取れる高さの音で口にした言葉。お、おぉ、素直だ。前よりも成長している!
だが、しかし「やっぱ」って事は誰かになんか言われたんだろうなぁ。誰だよ、そんな面倒くさい言葉吐いたヤツ。大変迷惑なんですが、なんてしょっぱい考えをしてしまった。俺、淡白なんですよ。ラーメンも薄口あっさり派です。
「次は必ずウチが勝つんや。アンタ等姉弟に負けんからなー、覚えときやー!!」
謎の自己弁護をしていたら、サクラさんはやられサブキャラが言いそうな台詞を一方的に捲くし立てて、更に「うおおっ、領都でも王都でもええ、父さんに頼んでいい師匠紹介して貰うんやー!!」なんて雄叫びを上げて持っていた木剣を放り投げ、第一外壁を抜け西門の方へ土煙を上げながら走り去っていった。おお、凄っげぇ前向きだ事。いいね、羨ましいわぁ。……ただ、君のお父さんな、逆の東門方向に居るんだけれどね。
しっかし、俺達姉弟、揃って面倒臭そうなフラグが立った気がする。そもそも俺に関してはこっちに来て恋愛フラグすら無いんだが。所詮、異世界ハーレムなんてアニメや漫画、ネット小説の中だけなんだと実感した。俺にとっては遠い世界の出来事、夢物語なんだよ。解ってる、解ってた。これはモテない男の僻みなんだよ。……自分で思っててちょっと悲しくなった。
ションボリしつつ、放り投げられた木剣と俺の持っていた木剣を子供達にお礼を言って返す。「おねにいちゃんも大変だねー」って子供達に同情され「だよねー」なんてやり取りをして、再びチャンバラを再開して遊んでいた。
子供達の邪魔にならない様に広場の端の方へ寄って黄昏ていたら、姉さんは凄い勢いで走って来た。気が付いた瞬間には、既にジャンプをしていて勢いよくドロップキックの体勢で飛んでくる。
そんな簡単に地面から身体を離すと立ち回りが制限されて臨機応変な対応が出来ないと思うんだ。むしろ軌道が固定されて読まれてしまう分、簡単に迎撃されるから危ない気がするんだけれど。相変わらずの考え無しな猪突猛進っぷりである。
両足が顔面目掛けた軌道だったので、俺は見切った風に身体を反らして少して避けたんだけれど、通過するギリギリで姉さんが咄嗟に伸ばした右手に襟首が捕まえられてしまった。
「ぐえっ」
……変な声が出た、抜かった、もっと大きく避けるべきだった。つか、姉よ、貴女は空母艦載機かなんかですか?右手を母艦着艦時のアレスティングワイヤーにフックを引っ掛ける感じで襟首を掴みましたよね、酷すぎじゃね?
襟首を引っ張られた勢いに抵抗すると首と意識を持ってかれそうな気がしたので、横のGが加わった瞬間に身体全体を脱力させる。その結果、俺と姉さんは二人して勢い余って縺れながらゴロゴロと地面を転がる。……痛いなぁ。
「……なにすんだよ、馬鹿姉ぇ」
「馬鹿はアンタよ、なにやってんのっ!輔。女の子に対して俺TUEEEE!!やってんじゃないわよっ!」
「えっ?えっ?あ、あぁ……」
「変に勝つと色々と拗らせて絶対面倒臭くなるタイプじゃんっ!」
「あ、やっぱそう思う?」
「思うから言ってんのっ!なんかあった時、輔が責任取ってよね!!」
「う、うぇぇ」
負けられない戦いだと思って勝ったら怒られるのか、判らん。責任を取るのは嫌だけれど、その意見には同意する。今後はフラグを回収しない様に気を付けよう、そうしよう。
俺は姉さんにマウントポジションを取られ身動きが取れない。そして文句を言われた。そんな俺達の状況に指して関心も無いとばかりに優雅に歩いてくるのは赤いドレスを纏ったシャウラ。
「お主達は何時もじゃれあうのう」
「シャウラ、見てないで助けて」
「亮よ、その辺で勘弁してやったら如何じゃ?」
「……判ったわよ」
シャウラの面倒臭そうな窘めの言葉に渋々と答え、俺の上から腰を挙げ立ち退き手を伸べてくる姉さん。それに掴まり身体を起こして身体についた埃を払う。
先程、第二外壁の南門に居た爺さんと話、明後日、向こうの世界に戻る事を姉さんとシャウラに告げた。
向こうに帰れる事を知った姉さんはジャンプをして、両手を振り上げはしゃぎ喜んでいた。シャウラはなんの感慨も感じさせず無表情に「そうか」ひと言だけ口に発した。そして、俺達三人は館への道を歩き出した。
読んで頂き有り難うございます。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので他の人が面白く読めるかは判りません。
120%の適当加減さ。中途半端な知識を妄想でブレンドして、勢いと雰囲気だけで誤魔化そうとしています。
読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。




