第022話 ボク達の気持ち
続きです。
残されたのはシルヴィアさんと俺達3人。そして彼女が口を開く。
「あとは貴方達だけなのだけれど、確実に魔物との厳しい戦闘が起こる事が予想されるので、女性と子供達と一緒にこの館に避難していてくれると助かります」
「シルヴィアさん、ボク達にも手伝わせて欲しい。いいよね、輔」
「流石に現状を聞かせられると、はい、判りました。とは、いえないです」
例え、この館のゲスト扱いだとしても直ぐそこに魔物の大群が迫っているかもしれない状況で、自分達だけ安全な場所でただ見ているだけと言うのは、後ろ髪を引かれる。数日とは言え村にも愛着も出てきたし、助っ人とまでは行かないまでも、多少なりとも手伝いをしたいと言う思いはある。ただ……
「村の人達の力になりたい」そんな思いで言ったのであろう姉さんの言葉に、俺も勢いに駆られ言ってはみたものの、多少の不安はある。この村の人間だけで大量の魔物に対抗出来るのだろうか?堅固そうな第二外壁の石垣を魔物が簡単に越えてくるとは思えないけれど、俺達が加わっただけで大丈夫なのだろうか?不安はある。
「おや、タスク君は何か危惧する事でも有るのですか?何か有るのであれば、今のうちに話した方がいいですよ」
そんな考えをしていたのが顔に出ていたのか、シルヴィアさんが何か心配事でにあるのかと聞いてきたので、思った事を話してみた。
「村にいる人間だけで魔物の大群に立ち居向かうのは大丈夫なのかと。ましてや、こっちに来て間もない俺達が参加して足を引っ張らないかと心配で……」
「相変わらず心配性だね、輔は。大丈夫だよ、ボク達爺さんに鍛えられているからなんとかなるよ」
「姉さんの方こそ向こう見ずで楽観的な猪突猛進のいのし……黒犬だと思う」
「おっと、魔王の人。ボクの悪口を言うのはそこまでだ!」
「うるさいっ、狂犬にランクアップするぞっ!お座り!!」
「今度こそ、その性根直してやる、正座しなさい!!」
話の途中でギャーの、ギャーの、と2,3分程、二人で騒いでしまった。どうやら姉さんも学園での二つ名を知っている様だった。そんな俺達を呆れ顔で眺め、遠目をしながらシルヴィアさんとシャウラが会話をする。
「うむ、子犬のじゃれ合いか。大変な自体じゃと言うのに、こやつ等は変わらんのぅ」
「……そう、ですね。シャウラ様は如何お考えですか?」
「アキラの方は練習風景しか見ておらんがそこそこやるんじゃないかの。二代目殿に関しては、最中に我もフォローするし、頭数に入れて問題は無いじゃろう」
ここ数日、シャウラとの執務室のやり取りでシャウラ「さん」から「様」に変わっていた。そして俺に対する当たりも少し弱くなっている。シャウラが何かを吹き込んだのか、或いは突然現れた見ず知らずの人間に対する警戒心から牽制も含めて、あの態度になったのかもしれない。と、推測する。まだ気は抜けない。
俺と言葉の鍔迫り合いし遣り合っていた姉さんがその会話を耳聡く聞きつけ割って入る。そして俺もそれに乗る。
「ここに来て少ししか経っていないけれど、この村の事好きだし、困った事があったらお互い様だと思うんだ」
「……シャウラがそう言ってくれるのなら、俺も微力ながら出来るだけの事、やらせて貰います」
「何時もの練習通りにやれれば、如何って事は無いぞ」
「危険が無い訳ではありませんが、一応、この村は過去にそれを防いだ実績があります」
シルヴィアさんが続けて語る。過去に幾度かの侵攻は有ったが、その都度第二外壁を越えられた魔物は無く、三箇所の出入り口を重点的に守る事で魔物の侵入を防ぎ追い払う事が出来た。それと村人の男衆は元々傭兵団として各地を転戦して渡り歩いた猛者達なのだとか。対人か対魔物の違いは有るけれど、荒事に関しては滅法強いらしい。非常時が故なのか、いきなりの情報開示である。
現在は若干、西の帝国がキナ臭いらしいのだけれど、大陸東側のここローウェン国を始め、連合諸国周辺は落ち着いているので出張る程の紛争も無く、有っても何人か派遣して体裁を取っているとの事。中には各地、各国へ密偵として赴いている者も居り、隠れ蓑としてオクノモリ商会を使ってるといった裏話も聞かされた。そう云った情報収集を基に、国や貴族からの要請があれば条件如何に依っては参戦する事も有るのだと言う。
負け戦は嫌だから、結構予防線を張っている様だ。て言うか、爺さんって冒険家が副業で、傭兵団が本業だったのか。
そう云った者達が魔物の氾濫を防ぐ篭城戦を張るので簡単には食い破られはしない。
しかも村の立地としては、南側は畑になっているけれど、それを囲む第二外壁は魔物も簡単に越えてくるのに厳しい高さになっている。俺達も村の散歩の際に見たけれど中々の石垣だったと記憶している。
そして同じ様に村の裏側も、木々に隠れて判りづらいが切り立った崖となっており、森の獣はおろか魔物も登ってこられないぐらい天然の険しい岩壁になっていると言う。
つまり半分ぐらいは天然モノだけれど、ほぼ要塞に近い造りになっているので、要所さえ押さえれば篭城に打って付けの場所なのだそうだ。当然、生活用品や食料品もたんまりと備蓄していると付け加えられる。
先日読んだ過去の文献の記述に有った、在へイムロン王の時代に森の中心地とはいえここに城砦を築いた理由もその辺に有るのかもしれない。戦争に因る財政が圧迫されなかったら放棄されず、この場所の状況も全然違う物になっていたのかもしれない。今となっては歴史のIFっぽい話になってしまうのだろうけれど。
シルヴィアさんは不安視する部分は少しでも軽減する様に話し終える。そして君達も手を挙げたのだから、臨時とはいえ、その一部になったのだから、任せたぞ、と力強く見据えて頷いてくる。
「……ただし、なるべく私の元から離れない様にしてください。貴方達に何か有ったらお師匠様に、お館様に顔向けが出来なくなりますので」
「シルヴィアさん。ボク達、足引っ張るかも知れませんが、宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
「我も付いておる、安心して任せるのじゃ」
「はい。アキラさん、タスク君、シャウラ様。こちらこそ、宜しくお願いします」
シルヴィアさんを残し、俺達は別館の食堂から最後に退出し各々部屋へ戻り準備をする。
小一時間ほどで支度を済ませ部屋を出たら姉さんとシャウラも準備を終えたのか丁度出てきた。先日オクノモリ商店で買っていた黒いロングコートに<更綱>を帯刀している。従業員のお姉さん方から頂いたのか足もブーツで決めてなんともハイカラな出で立ちだ。
シャウラは何時もの赤いドレスを身に付けスカートを翻している。普段と代わり映えしないけれど補助なのでそれでもいいかと思ってしまう。
俺も枯草色の外套を羽織って、魔杖<スコルピオン>を腰に差している。魔杖の扱いとは程遠い装備の仕方だ。頭にはマリンキャスケット風な帽子を被っている。
これは、何処かのコスプレ会場なのか。なんともアンバランスな格好をした3人組が一緒に連れ立って別館を出て、集合場所の村の広場へと向かう。
神社の参道を思わせる小道を下る最中、別館へ避難誘導する自警団の男衆に連れられた非戦闘員である女性や子供、お年寄りの人達とすれ違う。安全な場所への避難とはいえ、彼等彼女達もバックアップ要員として何かしらの仕事がある様だ。こうなってくると、ある意味村の総力戦の様相を呈してくる。やっぱりそれぐらいの非常事態なのだろう。
そんな道すがらシャウラが「折角じゃから練習の成果のお披露目じゃな。二代目殿が開始の狼煙を上げるのじゃ」なんて無茶振りな話をしてくる。
最初のお手伝いの話しから地味にハードルが上がっているんですが、それ。
読んで頂き有り難うございます。
構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので他の人が面白く読めるかは判りません。
読み辛い部分も多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。
更新は気分的に、です。




