第003話 別館1
続きです。
2020/10/02 文章が長いので分割しました。
ロビー兼食堂で他のお客さんに邪魔にならない様に端の方で昼食を取った後、再び母さんは婆さんに連れられ事務机のある奥へ消えていった。
俺と姉さんは周さんの淹れてくれた食後のコーヒーを飲みながらそのまま寛いでいた。
「別館…ね」
「別館…な」
姉弟二人して周さんから聞いた別館という単語を同時につぶやいていた。
昼食時にチラッと母さんと婆さんに別館に付いて聞いてみたのだけれど、
婆さんは「超現実的な精神の修練場」、「ガフの小部屋、魂の器」とか母さんは「人の想像力を試す、時と心の狭間の世界」とか。
なんとなく上手くはぐらかされた様な、それでいて漫画の影響かよって思うぐらいに並べられた単語で更なる疑問の壁にぶつかるのだった。
「えっと、二人して何言ってるか判らない。俺は別館の事を聞いたつもりだけれど」
「少し特殊な場所なんでの、適当に放り込む訳にもいかん場所なんだわ」
「最初は爺さんと云う保護者同伴有きな話だし。今までやってきた事を踏まえれば問題ないとは思うんだけれど、ちょっとねぇ」
その煮え切らない態度が反って怖いんだけれど、別館って千尋の谷に落とすっぽい話なんですかね。
「まさかのR-15展開?!やったね、きっと親子同伴の風俗なお店に御招待だよ、よかったね、輔」
「なんだよ、それ。そんな親子同伴の風俗なんて俺だってお断りだよ」
「いいから、R-15ぐらいで止めときなさいって。親が嫌ならボクが付いて行くから。輔にはまだR-18は早い!18禁はダメ、絶対!!」
「……はぁ」
この姉は何がやったねよかったね、なのか。そもそも親子同伴の風俗ってなんだよ、ゲーセンか?そもそも風俗って言ってる時点で18歳にならないと駄目だと思うのだけれど。
そして姉さんも双子なんだから俺と同じ適用年齢なんだし、少し考えて発言して欲しい。
「母さん。こうやって子供は勝手に大人になって行くのねぇ、なんか複雑だわぁ」
「わたしゃ亮の将来の方が不安だよ」
頬に手を当てて溜息を付く母さんと遠い目をして耳年増な孫の将来を悲観する婆さんに俺は心の中で同情と同意をしていた。
「まぁ、急だったけれど今回は爺さんが抱えた事案だからねぇ、しばらく時間が掛かりそうだから気を張らずゆっくりしていくといいよ」
「二人とも今回は合宿無しっぽいから、鬼の居ぬ間に自主トレでもしてればいいいんじゃない。いえ、やるべきね」
爺さんの問題だから気にするなって感じで婆さんは話し、現在進行形で自分が修羅場っているのに、娘息子がブートキャンプから開放され遊んでいるのが気に食わない的な不機嫌っぽい感じでアドバイスしている気がする。
そんな天国と地獄の両極端な提案をする婆さんと母さん。そしてやれと強制させられると急にやる気がなくなる不思議。
遊ぶにしても周りは自然あふれる山奥で、時間を潰すアイテムもほぼない状態だとやるしかないんですがねぇ。
と言った具合で上手くはぐらかされた様な気がするが、ふじの湯の周辺にはそれらしい建物がないので別館の謎は深まってしまったのである。
ふじの湯のフロア制服であるロングメイドのスカートをひるがえしながら、周さんはロビーのカウンターを中心に昼食の注文を取ったり、調理したり、食後のテーブルの後片付けをしたり忙しく働いている。
辺りを見回すと数人のお湯治客も食事を摂るなり、ロビー兼食堂脇に飾られている謎のオブジェを興味深々に鑑賞し、あれこれ駄弁りながらリラックスしていた。
綿造りの如何にもな柄の民族衣装っぽい工芸品やら木製のトーテムポール、謎のお面から何かしらの動物であろう置物、ちょっとリアルなお人形さんも数体。
謎のオブジェに関しては世界を股に駆ける爺さんのお土産だと、以前母さんや婆さんが言っていたのだけれど、以前より少し増殖している気がする。
物に寄っては数が揃っていて値札も付いているので、ふじの湯のお土産品扱いにもで出来るのだろう。
ロビーの端の方とは云え、結構な場所を取り一つの爺さん専用のコーナーと化している。
なんか壁に掛けられた綺麗な装飾の刀剣類とかも並べられて在るんだけれど全部本物なのだろうか?
どうやって持ち込んだのだろう。税関とかで引っ掛かるんじゃなかろうか?
そんな具合に色々と思い馳せていると同じ様にロビーを見ていた姉さんが話し掛けてきた。
「あの隅にある人形、婆さんが趣味で作ったんだってさ」
「ええっ、マジで?!何処かの民芸品とかじゃなかったの?」
俺の知らない情報を話す姉さんに思わず本当ですか?って表情で振り向くと僅かに笑みを浮かべながら言葉を返してくる。
「ボクも前から気になってて、母さんに聞いたらそう言っていたから間違いない筈。しかも本当は等身大で作りたかったらしい」
だったら爺さんの等身大の人形を置いておけばいい宣伝になるんじゃないかなと思ったのだけれど、爺さんの姿形は怖いし誰得なのか判らないので心に止めておくだけにする。
「皆が寝静まる夜になったら突然動き出始めて甲高く笑ったりしてないよね」
「いっきにホラーハウスに早変わりって、温泉宿が寂れて、笑い話にもならないよ。生活の糧にしている婆さんと爺さんは特に」
爺さんより婆さんの方が優先になるは俺達家族のルールだったりする。周さんもそんな感じだが
お土産物コーナーを眺めながら会話をしていると、向かいに座わっていた姉さんがコーヒーカップの中身を飲み干し「そろそろ動こうか」とつぶやく。
読んで頂き有難うございます。
投稿に慣れていないので試行錯誤しています。
自己満足しながら楽しんで書いているので他の人が面白く読めるかは判りません。
なので多々読み辛い部分も有ると思いますが、そこは平にご容赦を。
仕事が昼夜交代勤務の関係で更新は不定期です。




