第011話 商品購入1
続きです。
勢いよく扉を開けて入ってきたのは、如何にも駆け出しの冒険者風な格好をした黒髪ポニーテールの少女だった。
ダイフクさんの前までやってきてようやく俺たちが居るのに気が付いた様で、
『あれ?父さん、こいつ等誰?』
『サクラ、馬鹿っ、お客さんに対してこいつ等って失礼だろうっ!』
『……すんませんでしたぁ』
黒髪ポニー改めサクラと言う少女はダイフクさんに怒られ、不承不承と云った感じで俺達に謝ってきた。
気にするな、俺達は異世界の言葉を知らない事になっている。幾ら扱いが酷くても態度に出なければ気にしない。なんて偉そうに心の中で思ってしまう。
『タスク君とアキラさん。この村の新しい住人だ』
『……両方女かと思った。こんなひ弱っぽそうだけど大丈夫なん、この村でやって行けるん?』
『お館様の客人だ。しばらく館の方で生活するそうだから日用品と衣類を買いにきてくれたんだ』
『……へぇ。お館様の、ねぇ』
サクラは明らかに獲物を狙う猟犬の様な目でこっちを見ている。実際、俺達、見た目もひ弱っぽいのでやって行けるかって聞かれるとちょっと不安なんですが、それは。
ただ、経験上この様な人間は大変面倒臭いのでスルーしようかなって思っていたら横の困ったちゃんが余計な事を言いました。
「輔、言葉判らないけれど、この女から嫌な臭いがする。早めにシメよう」
「やだよ。俺は平穏な生活を送りたいの、へんな波風を立てないで頂きたい、貰いたい」
「ぶーっ」
……シメようって、アンタ。俺と双子で同い年なのに、なんとなく元号2つぐらい前の不良な人の言い方っぽい。いやいや、「ぶーっ」って言ってもそれは却下です。
つか、言葉が判らない筈なのに、彼女の纏っている空気で嫌いとか、やはり姉さんの直感は恐るべし。
向こうも向こうで絡んでくる気満々のご様子でダイフクさんと話をしている。
『父さん。こいつ等何話してるん、言葉判らないんだけど?』
『……親父殿、爺さんの国の言葉、だな。』
『じーさんの国って、伝説の修羅の国出身か?!ならさっ、見た目に反して、それなりにヤれるんだよね!!』
ちょっ、伝説の修羅の国って、日本は異世界でどんな風に思われてんだよ。しかも『ヤれるんだよな』って何を断定してヤる気満々なんだよ。
しかも、なんかウチの姉さんとサクラと言われた娘さんが睨み合いの赤外線通信を始めているし、ますます昭和後期のヤンキーっぽく顔近づけてるし、お前等そのままチューして全て無かった事にしてよ。
それをダイフクさんは腕組みをして無表情で眺めているだけ、俺はヤレヤレだぜってな感じで二人を見ている。
二人が顔の位置を変える度にツーサイドアップとポニーテールの髪の毛がふらふら揺れて、なんか見てて楽しい感じがする。なんだこれ、現実逃避なのだろうか?
ダイフクさんも現実逃避を始めたのか、こっそり俺になんか語ってきた。
「スマンな。ウチに娘が3人いるんだがよぉ……」
長女キーナさん。一番頭の出来が良いらしく、親父殿、初代の補佐で王都に行っているのだそうだ。
次女ツヅラさん。別館で従業員をやっている。料理関係メインで性格も穏やか。この二人は、それはもう健やかに、お淑やかに、育ったのだそうだ。
で、目の前の三女サクラさん。今年15で成人済み。剣技に適正があったらしく将来王国の騎士様になるんだ!って言ってやんちゃに育っちゃったそうだ。
最近は少しまともになってきたらしいのだが、偶に昔を思い出したかの様にやんちゃな頃の行動に戻ってしまうのだとか。
どうやら、この世界は15歳で成人の様だ。俺や姉さんもそう云った扱いになりそうだな。心に手帳にメモしておこう。
話を戻して、そのサクラさん。先日、何故か急に方針転換して冒険者になるって言って街のギルドに登録に行って今しがた戻ってきたとの事。
当初の予定だと、受かったら幾つかギルドの仕事を請け負って、経験を積んでくるって言っていたらしい。
少なくとも1ヶ月ぐらい帰るつもりはないって出て行ったそうだ。ちなみに街に出掛けてから1週間経っていないらしい。
……末っ子だから甘やかされて育った分、外に出たらホームシックにでも掛ったんじゃなかろうか?
状況が動いたのはそんな会話をしていた時だった。
『模擬戦で勝負よっ!』
「解ったっ、受けて立つ!最初はグーねっ!!」
「えぇっ、なんでそうなるのっ?!」
「……んっ、なんか目から光波通信を傍受した」
赤外線通信じゃなくレーザー通信だった!しかも、そのひと言に込められた思いはどんだけの大容量なんだよっ!!
……更に、一方的に間違ってて、どうも異世界語暗号通信は解読できなかった模様。まぁ、言葉を知らないと量子通信でも不可能だろうけれど。
ダイフクさん額に手を当てて「あちゃー」な感じになっている。あ、もしかしてこれって何時もの事なんだ。
一応、ダイフクさんにサクラさんが何を話したのかを通訳して貰い、「サクラの勝手な思い込みで言っている事だから相手にしなくていいよ」って言ってくれたのだけれど。
まぁ、ウチの姉さんは昭和のヤンキーなので売られたケンカは買うのですよ。俺と同い年なんだけれどね。
学園でもそうだった。主に俺が売られたケンカを全て横から高く買取りしていたのだけれど。学園で仲良くしている幼馴染にその事を相談した時を思い出す。
姉さんが<黒犬>で、俺がそれを使役する<魔王>って不名誉なあだ名が付いているって聞かされた時は「なんでやねんっ!」って、思わず関西弁で叫んでしまったわ。
ダイフクさんが店の奥に在った武器コーナーから模擬戦に使う木剣を二振り持ってきた。
姉さんに「盾とか防具必要だよね?」って訊ねていたけれど「ちょっと柄が短いけど何とかなりそう。これだけあれ充分」なんて返していて、彼はとても不安そうな顔をしていた。
サクラさんも『ふっ、負けた時の言い訳にでもするつもりなんでしょう』なんて挑発めいた事を言っていたのだけれど、そこは流石、通訳をしなかった。
でも、姉さんは言葉のニュアンスでなんとなく感じ取っていた様だったが。鼻息荒く、サクラさんと一緒に外へ出て行った。
溜息付くダイフクさんと俺も二人に続いた。しかし、まさかダイフクさんも自分の商会で娘がケンカを売るなんてな、なんて皮肉。
先程まで実演販売のデモをやっていたオクノモリ商会の店先に在る広場へと場所を移す。
広場では散った筈の子供達が昼食目当てなのか、遠くまで行っていなかった様で、保護者のお母さん達と一緒に遊んでいる。
俺達が店内から模擬戦用の木剣を持って出てきたのを見て何かを囁き合っている。子供達は『サクラ姉ちゃん頑張ってーっ!』『どっちも負けるなーっ!』なんて応援をしている。
ダイフクさんの応対を見ても、慣れている感じを受けるから、案外こういった事がよく有るんだろうなぁ。定番としては今は見かけないけれど相手は村の同い年ぐらいの男子辺りを泣かしていんじゃなかろうか。
まったく以ってイベント事に欠かさない村の広場なのであろう。ただ当事者ではないけれど、衆人環視で模擬戦をやる羽目になったのは勘弁して欲しいものである。
俺の平穏に過ごす目標なんて有る様で無かったんや。
読んで頂き有難うございます。
自己満足しながら楽しんで書いているので他の人が面白く読めるかは判りません。
多々読み辛い部分も有ると思いますが、そこは平にご容赦を。
更新は気分的に、です。




