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俺が『見』てるセカイ、君の生きるミライ  作者: 六錠鷹志
第一章 異世界転移 と 出会い
19/33

E1 ………

 薄暗い場所を歩く男が一人。

 煌びやかな装飾(かざり)が施された衣装に身を包んでいる。。

 身長は高い方だろうか。

 足の可動域が広く、大きな歩幅のため歩きがはやい。


「………はぁ」


 男は一つ溜息を吐く。

 いくら無意味だと分かっていても、何度も出てしまう。

 自分の思うようにいかないと、どうしても………な。


「………ット」


 舌打ちを一つし、顔を上げる。

 少しでも、下がり調子だった気分を上げるためだ。


 (きき)足の右足で地面を鳴らすと、カーンという乾いた音が反響する。

 音の響きから、男が歩くこの場所はとても広い空間だと分かる。

 男はその響音を噛み締めるように聞くと、気分を良くしカ~ンカ~ン、カ~ンと何度も足を打ち鳴らす。

 まるで子供のような彼を咎めるものはいない。

 それは、薄闇の中に誰もいないことを意味している訳ではなく、彼の存在価値を意味していた。


 幾人もの支配者と共に長い年月、民衆を見守る(・・・)ーー

(いや)

 --民衆に見られ(・・・)続け、はや何年だろうか。

 その民衆の目に込められた感情は何だろうか。

 十二人いれば十二人の見方、捉え方があるだろうが、今の彼に向けられている『それ』はほぼ一つの言葉に収束した。


 【異邦人(よそもの)


 『それ』は感情を表す言葉ではなく、彼を批難する訳でもなく、反対に弁護するわけでもなかった。

 民衆にとって最も身近で、『死』の次にないしそれ以上に恐ろしいもの。それは、


ーー『わからない』だ。


 彼は民衆にとって正体がイマイチわからないぽっと出の男という印象だった。

 それだけなら、問題はなかった。

 彼は、単に『王』として扱われただろう。

 『彼』という個人(・・)ではなく、『王』という肩書(・・)として。

 しかし、彼はそうではなかった。

 そう、彼は『個人』として扱われる存在となったのだ。


 …………


 広間に乾いた音が飽和するころ、彼はある扉の前で立ち止まる。

 なんの変哲もない扉。

 彼は扉の出っ張りに手を引っ掛け左にスライドし、開く。

 中は先ほどまでの無駄に広い空間とは打って変わり、低い天井の狭く細長い場所だった。

 廊下と呼べるほど長くなく、相変わらず薄暗く視野が狭まっているが、扉を開けた位置から奥の壁を確かめることができた。

 彼は足を進めるとカチッ、と鍵の閉まる音が響くがそれを気にすることなく、奥の壁に設置された装置のボタンを押していく。

 いくつかのボタンが押され、最後に一際存在感を放つボタンを押すと同時、奥の『壁』が上へスライドし、この空間を別の部屋、『執務室』へとつなぐ。


 足元がひんやりと冷たい空気を確かめた。

 先ほどまでの広間とは違う感じの冷たさ。

 彼はその冷気が漏れぬよう、素早く『執務室』へ入ると同時、圧縮された空気が漏れ出すような音がし、後ろのドアが独りでに閉まる。

 『執務室』は相変わらず薄暗く、設置された複数の『画面(モニター)』は動的にどこかの場所を映し出し、その光が『執務室』を様々な色(カラフル)に照らしていた。

 『画面(モニター)』を椅子に腰かけ見続ける監視員たちの後ろを通り、進み、歩き、部屋のさらに奥の扉を開ける。


 扉を開けると、同じようにして『画面(モニター)』を見ていた男がこちらに気づき椅子を回転させ振り向く。


「ようこそ、我がラボラトッ」

「…………」

「少しぐらいいいじゃないか。ラスボス気取りしたくらいで殴らなくても」

「…………」

「ハイハイ、わかってます。『馬』についてっしょ」


 椅子に座ったまま阿呆(ばか)なことを毎度いう男は髪をワックスで固め、装飾の少ないシンプルな服装をしている。

 ワックスの男に『王』たる彼は、自身の黄みがかった目を細め、重たい衣装のマントなどを外しながら、うんざりしたような声を出す。


「…………はぁ、それはもういいのだが……聞かせろ」

「『馬』で失敗した奴は現場に任せて処罰しました」

「………ああ」

「あの『馬』は村の奴らで食べられてましたね」

「…………」

「あっとは、……おいしそうでしたね。今度、馬刺しでも食べに行きましょう」

「…………」

「…………むぅ」

「いい年こいて、何がむぅ、だ。中年の男がやってもキモイぞ」

「それを言うなら、そのだっさい成金野郎の服はなんだ、冗談は鏡見てから言えよ」

「非常に不本意だが、反論できんな。私も着たくて着ていない」

「そりゃそうだ」


 男2人はガハハと笑いあった後、本題へと入る。


「………それで、『黒ずくめ』の様子は?」

「特にな。『カラス』で監視を続けているがこれといったことはまだ。しいて言えば、『馬』の時のあれ(・・)くらいだな」

あれ(・・)とは」

「若干だが、『歪み』が確認できた。『馬』に轢かれる少し前にな」

「ただ、それだけでは中身が一切合切さっぱりだ」


 黄色の目を閉じ、握った右手で額を抑えると、ワックスの男に指令を出す。


「『歪み』が確認できたのはこれで2回になるな」

最初のやつ(・・・・・)を含めると3回じゃね」

「それは、こちらが見て(・・)確認していないだろう。『黒ずくめ』のものかわからない」

「………ってか、気になってたんだが、なんで『黒ずくめ』なんだ。あれは、学ランっていってだな…」

「『黒ずくめ』の監視レベルをDからCへシフトする」

「はぁ……あいあいサー」


 そうワックスの男は、若干顔がドヤってる男にゆるく敬礼のポーズをとったのだった。


『彼ら』は日本語で話しているとは限りません。

そう『彼ら』は………で話しているのです。

ーー『彼ら』の名前はちゃんとあるのですが………後ほど出てきます。よろしくで~す(-。-;)

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