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中 10

 受験結果がわからず、涼もほのかも口数が少なかった。そんな余裕などなかった。発表の一週間前はもう何も食べられなかった。高校に受かるのもそうだが、涼にはもう一つ大きな壁があるのだ。受験合格という壁をクリアできなければ何もかも水の泡だ。

 結果発表はほのかと二人で見に行った。不安で足取りが重い。ほのかもずっと下を向いていた。

 掲示板の前にはたくさんの男女が集まり、黒い塊のようになっていた。涼とほのかもその中に入り、もみくちゃにされながら自分の番号を探した。あまりにも人が多すぎて何も見えない。涼がいらいらしていると、となりにいたほのかが声を上げた。

「あっ、あった!」

 驚いて目を向けると、ほのかはきらきらと輝く笑顔で言った。

「涼ちゃんのもあるよ!」

「えっ、マジで?」

 涼は目を丸くした。体から力が抜けそうになった。胸の中がじわじわと熱くなり緊張の糸が一気に緩んだ。

 人々の集まりからようやく抜け出すと、ほのかは満面の笑みを見せた。

「やったあ!二人とも合格だよ!」

 大喜びのほのかにつられて、涼も笑顔になった。

「ああ……、よかった……。俺すごい緊張してたよ」

「あたしもだよ。ああ……本当、よかったあ……」

 二人同時に安堵の息を吐いた。それがおかしくて声を出して笑った。

 間違いがないか自分の目でも確かめた。涼の番号もほのかの番号もきちんと書かれている。

「また一緒に学校に通えるんだね」

 にっこりと笑うほのかに言われ、涼は頷きながら身を固くしていた。何とか一つ目の壁はクリアしたと心の底から安心した。

「あたし、涼ちゃんと一緒にいられて嬉しい。これからもずっと涼ちゃんのそばにいたいよ」

 この言葉にどきりとした。ほのかも同じ想いであってほしいと願った。

「じゃあ、帰ろうか」

 涼が言うと、ほのかは大きく頷いた。

 軽い足取りで帰り道を歩くほのかの後ろ姿を見つめながら、涼は考えた。とりあえず高校に通えることは約束された。だがもう一つの壁は涼一人の力で成し遂げなければいけない。涼の頑張りでよくも悪くもなる。簡単にクリアできる壁ではないと思えた。思わず拳を作っていた。いつ告白すればいいのか、何と言えば想いが伝わるのか……。不安はまだたくさんある。

 翌日、ほのかが何か持ってきた。鈴が付いた小さな雪ダルマのキーホルダーだった。白とピンクがあり、白い方を涼に渡した。

「何だよこれ?」

 そう言うと、ほのかは輝く目をした。

「合格祝いだよ。ちょっと高かったけど買っちゃった。一緒に鞄に付けていこうよ」

「ええ……」

 はっきりいっておそろいのキーホルダーなんて恥ずかしかったが、ほのかが残念そうな顔をしたので素直に頷いた。

「わかった。本当にほのかは雪が好きなんだな」

「うん。大好きだよ」

 幸せだというようにほのかは笑った。

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