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Sound of Magic ~カエルが鳴くから歌いましょっ!~  作者: ブルー・タン
第2章 3歳児お披露目珍道中編
90/124

89 王との接触

8/24 サブタイトルを変更しました。

俺は!俺はついにこの場所に戻ってきたぞっ!

……はい、すいません。

もちろん言ってみたかっただけです。

今、王城です。

前にここに来たのは2日前で、お披露目しました。

王城で通された部屋は、雰囲気からして謁見の間なんかのパブリックな用途の部屋ではないようだ。

食事用のダイニングテーブルと、寛ぐための安楽椅子のセットをメインに重厚で落ち着いた色合いの調度品が置いてある。

テーブルも安楽椅子もそれぞれ10人程度も座ればいっぱいになるくらいのサイズだし、個人的な来客を迎えるような部屋なんだろうな。

規模や調度品の格が全然違うけどライト家の館にも似たような雰囲気の部屋があったし、たぶん間違いないと思う。

案内してくれた人は、ここでくつろいで待ってるよう言って退室していったけど、これから王様に会おうってのに、くつろげる人なんているんだろうか?

と、思ってたら親父殿もお袋も超くつろいでた。

まぁ、お袋は実家に戻ってきたみたいなもんだし、親父殿は娘婿だからそれなりに気安い感じなのかもしれん。

もちろん俺は、安楽椅子に埋もれてくつろいでる体でいるけど、内心はメッチャ緊張してますよ。


「ロック~。お父様はプライベートではただの優しいおじいちゃんよ~。そんなに緊張しなくても大丈夫よ~」


ほら。

お袋に一発でばれる程度には緊張しまくってるわけですよ。

とはいっても、いくら自分の祖父とはいえ初めて会ったのは2日前だし、うちの親父殿は偉い人って言っても、なんだかノリが違うし、緊張するなって方が無理だと思う。


「うむ。王はこういった席で個人的に面会されるときは非常に気安い方だ。まぁ、会ってしばらく会話でもすれば緊張もほぐれよう」


そうだといいんですけど。

そんなことを話してると、扉が開いてさっき部屋まで案内してくれた人が中に入ってきた。


「そろそろ王が参りますが、そのままおくつろぎください」

「え?立たなくていいんですか?」

「はい。王は特にこういった個人的な面会の際は堅苦しい対応をされることをあまり好みません。王が入室されてもそのままでいらして結構です」


謁見の間でのお袋に対する態度とか見て思ってたけど、なんだか想像以上にフランクな王様だな。

おかげでチョット緊張が解けてきた気がするよ。

チョットだけど。


「失礼するぞよ。ミアスよよく来たのう。ディーンも息災のようで何よりじゃ。で、そっちがロックじゃな」


うぉ!王様がいきなり自分で扉開けて入ってきたよ!?


「お披露目ではみごとな演奏であったのう。あの場では中々言いだせなかったが、儂はじいちゃんとして非常に誇らしかったのじゃ」

「あ、ありがとうございます」

「ホ、ホ、ホ。そんなに固くならなくても大丈夫じゃ。どれ、まずは初めておじいちゃんとして会ったのだし、自己紹介が必要じゃのう。知ってるであろうが、儂がお前のおじいちゃんのイエモン・ドラ26世じゃ。」


逆にするとドライ○モンにしか聞こえませんが?


「この名前はこの国の二代目以降、代々王を継いだ時に受け継ぐ名前でのう。初代王がこの国の王は必ずこの名前を世襲するよう定めたのじゃ」


初代王様、その名前は能力的に四次○ポケット的な奴があるからですか?

ここは笑ってもいいところでしょうか?

助けて○○エモン!


「うーむ。代々、王家には言い伝えがあってのう。転生者にこの名前を教えると大体はロックのように変な表情になると言われておるのじゃ。率直に聞くがロックは転生者かの?」


王様、率直すぎます。


「え、あ、は、はい」

「そうか、そうか。前の世界のことなど色々と覚えてるものだと聞くがそうなのか?」

「え、あ、は、はい」

「……安心するのじゃ。別にロックが転生者じゃからと言って蔑ろにする気なぞさらさらないぞ。転生者とは言え、儂の初孫であることには変わりないしのう」

「……そうなんですか?」

「もちろんじゃ。さて、ロックよ。せかっく初孫が遊びに来てくれているんじゃから、まずは抱っこさせてくれんかのう?」

「はい」

「おうおう。抱っこさせてくれるか。では、こっちへおいで」

「お父様~、ロックはそれなりに大きいんだから腰には気を付けてね~」

「ホ、ホ、ホ。これでも若いころは鍛えておったのじゃ。ほーら、軽いもんじゃ。これで闇属性であれば王女を嫁にもらうこともあったかもしれんのが残念じゃのう」


イエモン王は俺を軽々と抱き上げると、ほっぺたをつついたり、ゆすったりしてほんとに孫を相手にするように接してきた。


「孫とはいえ、中身は大人なんて気持ち悪くないんですか?」

「何が気持ち悪いというのじゃ?多少、儂や親の知らん人生を送っているかもしれんが、そんなのは成長すれば誰しも一緒じゃ。ロックは気持ち悪がられたいのかのう?」

「いえ、そんなことはないですが……」

「ミアスやディーンはお前を気持ち悪がるのかのう?」

「いえ。家族として接してくれてます」

「それは家族なんじゃから当たり前じゃのう。そのお前の家族の一人は儂の娘じゃぞ?娘が腹を痛めて生んだ孫が、ちょっと前の世界の記憶があろうと儂にとっては初めての孫じゃ。可愛くないわけがあるまい」


そっか。

前の世界の常識があるから自分は変な存在なんじゃないかって思ってたけど、こっちの世界ではそういう考えなのかもしれないな。


「ところでロックよ。いつおじいちゃんと呼んでくれるのかのう?」

「……おじいちゃん」

「なんじゃ?」

「おじいちゃん!」

「ホ、ホ、ホ。おじいちゃんと呼ばれると言うのは、こんなにも心が温まるものじゃったんじゃな」


どうやらこの瞬間、俺を家族と言ってくれる人がもう一人増えたようだ。


お母さんの名前がミアスなのは、もちろんおんなじ理由で作者の気分です。

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