24 ヤナカの驚愕と健康診断
24話です。
投稿を始めて2ヶ月が過ぎました。
「どうした?襲撃か?」
「そう、襲撃!」
「どこだ?」
私達は立ち上がって防御準備にかかろうとした。
「ちょっと待ってね。ハーハーハー」
リノリは息を整えているので、私の飲みかけのお茶を渡す。
「ありがとう。タカチホノミネ丸の左右に敵が近づいてるの!」
「「!」」
「悪い、リノリ、もう一度ゆっくり説明してくれ」
リノリはお茶を飲み干して、椅子に座る。
「あのね。タカチホノミネ丸の近くに大きくない船が左右から近づいてない?」
ヤナカが黙って船と交信している。
「同じ形の船でしょ?」
「ああ、確かに接近中だ」
「それ、敵よ」
「他にはいるか?」
「他は……地上にいるよ」
「「えー?」」
その2隻は周回軌道上をゆっくり接近している。
惑星重力圏内でしかけてくる連中は、狂人か手練だ。
無人船を遠隔操作していることも考えたが、リノリは他にいないと言った。
俺のように地上から操作しているのか?
ヤナカはタカチホノミネ丸を操作してバリアを展開し、左右の敵艦に迎撃ミサイルとレーザーの2重攻撃の準備をする。
同時に電波探知と光通信探知を両艦に対して行ったが、遠隔操作の証拠は見つからない。
自動操縦の線も捨てがたいが、重力圏での戦闘では変数が多すぎて計算速度の低下が著しい。
やはり有人だ。バカなのか?
「そうか、タカチホノミネ丸が無人だと知っているのか。俺がバカだな」
地上から丸見えの場所の戦闘は2つの意味で危険だ。
1つは地上に落下した場合の被害。
もう1つはどちらが先に攻撃したのか。
間違えば犯罪者か多額の賠償金が待っている。
「ねえ、リノリ、あれ落としてもいいでしょ?」
年長組の4人が食堂の天井を眺めながら話を始める。
「ニムだったら当たるよ。撃っちゃえ」
「ソウナの方が上手でしょ」
リノリが賛成して、ミナがソウナを推す。
「じゃあ競争だ。私は右、ソウナは左だよ」
「武器は機関砲だけね」
ニムが嬉しそうにゲームを提案して、ソウナが条件を提案した。
みんな楽しそうだが、何の話なのだろう?
「よし。じゃあニムからね」
「あ! 撃ってきたよ。バリアお願い!」
リノリがミナに指示を出した。
「え? あー!」
ヤナカが何か叫んでいる。
かなり慌てているようだ。
「ほーら当たった! 次はソウナよ」
「いっくよー。ダダダダダダッ。当たった当たった!」
ソウナとミナがぴょんぴょんしながら喜んでいる。
「引き分けね」
天井を見たままの4人をヤナカがじっと見ていた。
「私もやりたかったなあ」
「ミナは今度だね」
「えー、次はいつ来るのよ?」
「外で落ちて来るのを見ようよ」
4人は宿舎棟から走り出て空を見上げて何かを探している。
ヤナカも後を追って上空を眺める。
「みんな。あれだ」
ヤナカが指差す方向に始点が近い二筋の白い線が伸びていく。
「「「「あー、ほんとだ!」」」」
「ねえ、ヤナカ。何が起こってるの?」
「俺にも理解できない。あいつ等の会話の通りのことが起こった」
「え? あの子達、天井を見てただけでしょ?」
「俺が操船していたタカチホノミネ丸が勝手に動いたんだぞ。上を見ろよ戦闘艦が落下中だ」
「地上に落ちたらヤバイよね?」
聞いていたリノリが振り返って目を丸くした。
「あれが落ちたらどうなるの?」
「街に落ちたらたくさん死人が出る」
「ヤバイよ!」
ニムとソウナが近づいて来た。
「「もう大丈夫?」」
「何が大丈夫? なの?」
「ほら」
2人が落下中の船を指差す。
白い軌跡を残して落下中の船が爆発して散り散りになってしまった。
「どうやった!」
ヤナカがニムの腕を掴んで引き寄せる。
「怖いよヤナカ? 船に頼んで自爆してもらったの」
「「???????」」
この4人はタカチホノミネ丸をコントラーラーも無しに、遠隔操作で敵を撃墜してしまった。
無人とは言え、ヤナカが遠隔操作中に発生した事件だ。先に撃ってきたのは敵側だし、戦闘ログもあるから罪は問われないだろう。
だが、今ここで起こった出来事は理解できない。
「リノリ、どうして敵が近付いているのが分かった?」
「いつもタカチホノミネ丸のレーダー席に座ってる感じなの」
言っている事は理解出来るが…。
「それで?」
「2時間くらい前からこっちを見ている人達がいてね。厭な感じの人」
誰かが見ている?
「そうそう。30歳くらいのおじさん!」
皆が性別と年齢まで言うが、見えているのだろうか?
「「「うん」」」
みんな同じ人物を見ているのか?
「じゃあさ。ニムもソウナもタカチホノミネ丸に砲手席に座ってたの?」
「「そう」」
「リノリのくれたデータを使って、2人で機関砲でダダダダッって」
「ヤナカ。どう?」
「タカチホノミネ丸の操作はおおむね正しい。船に頼んだら自爆してくれるのか?」
ヤナカの言葉に抑揚が無いような感じがする。
イロイロと計算機がバグっているのかも知れない。
「ヤナカと話せるんだから、他の船とも話せるでしょ?」
「「確かに!」」
言われてみればそうだが、どうやって?
「それじゃあ、俺が警備ロボットから離れるから、直接タカチホノミネ丸の俺に話しかけてくれ」
「「「「解った」」」」
警備ロボットが宿舎玄関に向かい、歩哨のように直立不動になった。
「ヤナカ? 聞こえる?」
「うん、そう、私達が知らないマギーお姉ちゃんの秘密ある?」
「「「「えー!」」」」
「何よ、秘密って?」
「司書長さんと大人の関係なの?」
「ちょっ! ヤナカ! 子供になんてこと!」
「本当に懲りないのね!」
「マギー姉さんのエッチ!」
「お姉ちゃん慌ててるよ。ヤナカ」
宿舎の中から医療ちゃんが手を振りながら出てくる。
「ヤナカ、戻ったの?」
「ああ、本当に話せるんだな。1000キロ上空だぞ」
「そうだ。なんてこと言ってくれたのよ!」
「こいつ等が知らないマギーの秘密だ」
「それで何でAIは自爆してくれたんだ?」
ニムとソウナが少し考えてから答える。
「帝国の戦闘艦は帝国国民を守る為にあるんだって」
「そのまま墜落したら人がたくさん死ぬからなんとかしてってお願いしたの」
「国民を傷つけるのは忍びないとかなんとか言って爆発した」
「最後に教えてくれてありがとうってお礼を言われたの」
2人は真剣な眼差しでヤナカに向き合い、リノリとミナも後ろで頷いている。
「AIに心が無いって本当?」
やはり聞かずにはいられない疑問をヤナカにぶつけてみる。
「自国民に敵対する行為は出来ない行動規範がある。しかし使用者の命令は絶対だ。盗賊のように自国民を傷つける行為と矛盾し続けるが、最後に使用者から開放されたんだろう」
「最後にお礼なんて、貴方みたいにAIらしくないわよ」
「自爆した今じゃ解らないな」
「あるよ」
リノリが言う。
「え?」
「ヤナカは心があるよ」
「「「そうだよ」」」
3人も同意する。
私も同意だ。
(もう何年の付き合いだってーの)
今日は廃墟に住む元街娼達の健康診断をタカチホノミネ丸で行う。
とりあえず5人を車に乗せて駐屯地にやって来た。
「凄えところだな」
「ザザに借りたのよ」
「「「「「ザザに?」」」」」
「ザザは私と中谷の友人よ」
車を降りた5人は広い基地内をきょろきょろして落ち着かない。
「昨日も言ったけど、今日は健康診断だから何も食べたり飲んだりしちゃだめよ」
「解りました。あのー、カリナの姉御」
「どうしたのアイナ?」
「ここに越して来てもいいですか?」
「そうね。私達がこの星を出発するまでなら良いわよ」
「「「「「え?」」」」」
全員が足を止めて目を丸くしている。
「どうしたのよ? シャトルはこっちよ」
「いつまでジアナ星にいるんだよ!」
スーが慌てたように聞く。
「最初は子供の無重力症治療が目的だったから2ヶ月だったけど、廃墟の再開発が始まったから判らないわね」
「でもここから出て行っちまうんだよな?」
「そうよ」
「私達をおいて行くのかよ?」
「え? そんな心配してたの? あとはシャトルの中で話しましょ」
「でもよー」
がっかりしたようなスー達をシャトルに案内する。
「みんなは初めて?」
「私は小さい頃に親と一緒にナンナ星から来たとき」
「ジェナはあるのね。これからリノリの操縦で宇宙に停泊しているタカチホノミネ丸って戦艦に行くけど、特に注意することは無いからゆっくりしてね」
「リノリちゃんが操縦? 孤児だったでしょ」
「そうよ。リノリは優秀よ。じゃあ頼んだはよ。リノリ」
「了解!」
エンジン音が大きくなり、ふわっとした感覚が体を包む。
「「「「「おお!浮いてる」」」」」
「ジアナ星宇宙管制局、こちら中谷商会所属114572B、これからアシアナーン基地より周回軌道上に停泊中のタカチホノミネ丸に帰還するため惑星離脱を開始する。指示を願う」
「114572B、 こちらジアナ星宇宙管制局。了解した。114572Bはアシアナーン基地からだとタカチホノミネ丸に方位015、仰角48、秒速1800メートルで離脱。そのまま周回軌道に出てからタカチホノミネ丸に接近せよ」
「こちら114572B 。方位015度で上げ角48度、秒速1800メートルで離脱する。ありがとう」
「こちらジアナ星宇宙管制局。どういたしまして」
シャトルは180度旋回して急上昇を始めた。
地上では何人かが手を振って送っている。
やがて重力が無くなっていき、みんなの髪が浮き上がる。
最初は楽しんでいた女達もすぐに慣れて、船外の景色にうっとりしている。
シャトルの何十倍もある巨体の腹が開き。
ゆっくりと自動操縦でシャトルが怪物の腹に飲み込まれていく。
みんなは息を呑んで沈黙していた。
「ここは食堂よ。好きな椅子に座って。重力がある区画だから両足を離さなければ大丈夫よ」
「「「「「フーッ」」」」」
緊張が解けたのか、重力で安心したのかみんなが溜息を吐く。
「タカチホノミネ丸にようこそ。この船はジアナ星のアシアナーン基地上空1000キロくらいのところを飛んでるのよ」
食堂の大型スクリーンにジアナ星を映し出す。
「ごめんね。軍艦だから窓が無いのよ。このライブカメラで我慢して」
「なんか凄いね」
「これから2人ずつ医務室で検診をするから、呼ばれるまでここで待ってて。ゲームならその棚にあるから遊んでてもいいわよ。艦内を探索してもいいし」
「「「はい」」」
マルグリットが行ったあと、みんながせわしなく室内を物色し始める。
「解らないことがあったら聞いてね」
リノリの言葉にみんなが手を上げる。
「マリアンナさん」
「リノリ達はここで暮らしてたの?」
「航海中はずっと船の中で生活したよ。はじめての時はジアナ星からナンナ星まで2ヶ月だったよ」
「「「「「へー」」」」」
2ヶ月と言われてもピンと来ないのが普通だろう。
「アドレアさん」
「どんな物を食べてるの」
「船になまものは持ち込めないからほとんどがドライフードよ。とっても美味しいのよ。検診が終わった食べてみる?」
ドライフードのアルミトレイをいくつか出してみせる。
みんなが集まって各々見ている。
「これにお湯を注いで食べるの。アドレアさんのはチキンソテーねフィルムに書いてあるでしょ」
「本当だ。こっちはビーフステーキだってよ」
「贅沢なのね」
「私達が引き取られるまではこれを食べてたんだって」
ビスケットレーションとレトルトのスープが出される。
アルミのパックに包まれたゴツゴツした物体と、コップくらいの大きさのチキンスープと書かれただけのレトルトパックだった。
「これだけ?」
「カリナはこれで半年くらい暮らしたって」
「リノリちゃん達の為にこんなに豪華な食事を?」
「そうよ」
「スーとアイナ。来て」
2人が検診に呼ばれていった。
健康診断も終わり、重大な疾患を持つ者は居なかった。
全員が若干筋力不足なのが気になる程度。
念の為に性病用の薬を数日分渡して終わった。
「今日は泊まりだからゆっくりしてね」
まずは昼食にドライフードとキチンスープにオレンジジュースを出す。
試食用にビスケットレーションもテーブルに置かれた。
「みんな好きなメニューを選んでね」
みんなは決めていたらしく、全員がビーフになり、リノリは魚、私がポークになった。
調理器のカウンターがゼロになり湯気の立つトレイが出てきた。
「うまい! これがドライフードか」
「うん、美味しい」
ボリッ。
「「「「「!」」」」」
リノリが美味しそうに硬いビスケットレーションを齧っている。
「それ、美味しいの?」
「ほんのり甘くて美味しいよ。孤児だった私達には贅沢なお菓子」
「そうだな。昔はこんな物でも贅沢だったな」
スーは一本摘んで口に運ぶ。
硬そうな音でビスケットレーションが砕けていった。
「確かに少し甘みがあるな」
ニコニコしながら2人は硬いビスケットレーションを咀嚼している。
読んで頂きありがとうございます。
リノリ達の新しい能力が見つかりました。
21話辺りからナンナ星でリノリが代表の会社を作った話が出て来ますが、そのような話は見つかりませんでした。農園の契約のために作った会社のつもりだったのですが、ボツにしたことを忘れていたようです。もどれないのでそういう体で行きます。
ごめんなさい。




