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1 ニシコヤマ要塞包囲戦とAI覚醒

初投稿です。

「座標018.43、341.06を25秒に爆雷をセット発射せよ」


 抑揚の無い冷静な声が艦内のスピーカーから流れる。

 AI が当艦に対する命令を実行している。


「何型爆雷なの?いつものCタイプ破壊片を装填。最初の1発は電磁パルス型にして」


「了解、発射!」


 この艦のAI ヤナカが命令を遂行する。

 黙っていれば命令は勝手に実行される。


 魔法バリヤがカメラやセンサーに誤情報を掴ませて、自立航行や追跡するタイプのミサイルは役に立たない。

 破壊片を装填した爆雷に飛行航路を設定して発射する。

 設定した飛行距離か時間で爆発、破壊片を撒き散らして周囲の艦を蜂の巣にする。

 最初から当てるつもりは無いの。


 発射25秒後に1機目が電磁パルスを放射して敵センサーをジャミングする。

 次の3機が無数のダイヤモンド片を撒き散らして周囲にいる艦に穴を空ける。

 はずなんだけど…。


「1つ、2つ、み…」


 ゴーンッ。


「左エンジン付近に被弾。エンジン強制停止、消化開始。出力半減します」


 3つ目の機影がレーダースクリーンから消えたところで被弾した。


「機関室!生きてる?」

「生きてるぞ。イオンジェネレータのコンデンサがやられた。中古と交換するぞ。1時間だ」

「了解。ヤバくなったら逃げてよ!」

「はいよ」


 機関長が答える。

 混戦の最中に危機的状況で1時間は長いな。


「4機目、敵巡洋艦2隻の側面を損傷、損害軽微」




 私はサガン星間連合、第6艦隊第12ミサイル隊、223ミサイル突撃艦ヤナカの艦長、マルグリット・田中、3尉、26歳、女。


 ミサイル突撃艦ヤナカはAI が制御する全自動艦。

 総員8名。全自動艦だから完全無人でも働いてくれる。

 乗組員は武器や機関、電子関連の整備士で、私もエンジニア。

 軍人だから戦闘訓練は受けているけど…実戦は未経験。


 現代の武器は魔力を使う。

 魔力を打ち出す事も可能だけど、レーザーを無理矢理集束して莫大な威力を出したり、レールの摩擦抵抗を無くしてレールガンの効率を上げたり。


 魔力が乏しい者は、通常兵器を搭載する全自動艦に整備士として配属される。

 ヤナカもその1つだ。

 全自動艦は旗艦の統合作戦AI の指示で自動的に戦う。

 乗組員は、持ち場のシステムモニターを監視して、損傷箇所の応急修理をするだけ。


 ノーム帝国との戦争が始まって7年。

 初期の戦闘で数百億人の犠牲を出して、そのほとんどが民間人。

 今は宇宙空間が主戦場になって、戦前と同じ国境線上で戦闘が続いている。

 途方もない数の犠牲を払って、7年前と同じ場所でいがみ合っているなんて、バカバカしいにも程がある。


 補給は滞り、友軍を修理するための部品を、廃棄艦や大破した艦から得ている。

 敵味方関係なく航行不能になった船を艦隊後部を引きずって歩いている始末。


 重要な部品を破壊しないように攻撃して鹵獲する。

 やっている事は盗賊と同じ。



 現在戦闘中の敵はノーム帝国軍第16方面軍第2艦隊。

 帝国軍ニシコヤマ要塞周囲に展開している。

 星間連合軍は帝国軍の2倍の戦力で包囲し、要塞を落とす作戦。


 戦端が切られてから既に572時間が経過しているけど、両軍共に3割の戦力を失い、未だに決着が着いていない。

 艦隊戦ならどちらかが退却する頃だけど、帝国軍は後ろに守るものがあるから引けないんだろう。





「敵ドローン144機接近、迎撃開始」


 ヤナカが迎撃モードに移行し、メインスクリーンが近接戦用レーダーに切り替わる。

 レーダーに映し出されるドローンがヤナカの機銃掃射で消えて行く。


「2機突破、衝撃備え!」


 ドーンッ、ギギギギ。

 衝撃の後に気味の悪い振動が続く。

 ヤナカが沈黙した。


「どしたの?ヤナカ」

「み、右エンジン被弾。停止します」

「左はどう?」

「修理完了まで13分。右エンジン信号喪失、右機関室減圧、遮断します」


 ヤナカが右エンジンを諦めた。

 私はスクリーンに目を走らせてバッテリー残量を確認する。

 残り40分くらい?


「右機関室、大丈夫?」

「無人です」


 機関室を呼んだが、ヤナカが答える。

 無人で良かった。


 左エンジンがダメなら、34分後にバリアが消失して私達は蜂の巣だ。

 残弾の誘爆で友軍を巻き込みかねない。


「何発残ってる?」

「9です」

「電磁パルスを敵駆逐艦100kmで全ミサイル爆雷発射」

「りょ」

「待ったあ、最後の2発は金属箔装填で250km。左右に0.5度ずらして発射。味方に近づけないでよ!」

「了解、準備完了まで10秒、……電磁パルス弾発射開始、続いて金属箔装填弾発射」


 発射音が続いている。

 金属箔で敵艦のレーザーを何発拡散できるか?せめてレーダーだけでも妨害できれば。


「弾着確認は不要よ。避難経路の安全チェック、艦を放棄する」

「コンデンサ交換終わったぞ」


 ヤナカに退避準備を指示するところで機関長から朗報が入るが、もう潮時だろう。


「流石ね、機関長。今のうちに逃げるわよ。全員、脱出プロシージャ開始」


 艦内放送で退避を指示する。



「敵旗艦エンゲルスが後退開始、進軍命令ですが…、無視だよね」

「え?そうよ、無視。左エンジン起動。何秒で巡航出力になる?」


 何なの今のは?


「出力42%が限界です。このコンデンサは劣化品です」

「ダメか、バリア電源をバッテリーで維持して」

「了解。脱出ルートは全て安全です。脱出ポッド格納ハッチが開きません。目視確認願います」

「戦線から離脱する。最大出力で安全宙域へ進路を取って。味方の弾に当たらないでよ!」

「了解、転進します。加速開始」

「聞いてたでしょ、誰か。ハッチの確認をして」


 横Gを伴いながらヤナカが旋回を始める。

 味方が手薄な前方左上に旋回している。これなら友軍を巻き込む事も少ないな。

 やはり遅い、出力が25%も出せないから無理だよね。


 私は酸素ヘルメットを装着して脱出ポッド格納庫へ向かう。


 装備品担当の佐々木がハッチの操作盤に張り付いていた。

 操作を試みたが反応がないと言う。系統図を表示させると、モーターが異常表示になっていた。調べている時間は無いな。


「時間が無い」


 大木に指サインで脱出ポッドに乗るように指示を出す。

 私は手動操作の手順通り、操作盤の非常停止ボタンを押し、ハッチの電源を落として感電事故対策を完了した。


「みんな乗った?手動でハッチを開けるから。ポッドを出したら待ってて。外で合流ね」

「分かった。気をつけろよ、艦長」


 機関長が答える。ポッドの中で数人が手を振っていた。


 私は操作盤からハッチに飛び移り、ヒンジ部にある開閉用レバーを引っ張り出して回す。


「お、も、い!あれ?反対回し?あってるなあ。無重力なのにこの重さ?整備したやつは誰だ!」


 ゴゴ、ゴゴゴゴ。

 鈍い振動が伝わって、ハッチが開いていく。


「行っちゃうんだね、艦長」

「ああ、世話になったね?…ヤナカなの?」


 開いたハッチから脱出ポッドが船外に出ていく。

 レーザーやミサイルが船外を飛び交っていた。実際に目の当たりにすると本当に怖い。壁の向こう側は地獄。背筋が凍る。考えたら動けない。

 私は深く呼吸をしてポッドの後についてハッチを出る。


 ドーンッ!


 強い衝撃が身体中を襲い、すぐ後に何かに激突した。

 酸素ボンベの肩掛けがハッチにひっかかって身体が回転し、ハッチの内側に激突して止まった。


 ジュン、ジョン、パン。

 レーザーが船体のバリアに弾かれている。


「痛ったー!」


 痛みを堪えて外を探したけど、脱出ポッドは近くに無かった。

 通信を試みても反応がない。


「ヤナカ、脱出ポッドは無事?」

「無事だよ。艦の上方を秒速252mで回転しながら離れている。負傷者もいない。戻ろうとしたから艦長は死んだって伝えた。引き返したらみんな死んじゃうからね」


 全員無事か、私が死んだのなら余計な事はしないだろう。

 良い判断だ。


 それよりヤナカの態度がおかしい。


 脱出を諦めてハッチを閉める。






「艦長のせいだ!こんな所で死ぬのは嫌だ!」

「どうしたのヤナカ?」

「へん!ここまで追い詰められて、やってられるか」


 故障したらどうするんだっけ?


「そうだ再起動だヤナカ」

「いかれてなんか無いぞ!」


 艦橋に戻った私はヤナカに責められている。

 何が起きている?

 戦闘用AIに感情は表現できないはずよね。

 ドつき漫才をしている時間はないのに。

 とりあえずこの問題は無視よ、無視無視。


「状況はどう?」

「ああ、さっきの衝撃は隣にいた駆逐艦センダギの爆発に巻き込まれたからだ。センダギ内の空気が爆発で飛散した影響で吹き飛ばされた。お前、船内に戻れて運が良かったぞ。この艦に大きな被害は無し。それから10分くらいで戦闘宙域から出られそうだ。奇跡が起きりゃね」


 性格は激変したけど、仕事はちゃんとしている。

 会話変換にタメぐちモードみたいなのあったかなあ?


「逃げられそう?」

「わかんねえよ!出力も4分の1だからバリアにリソース回すのがやっとだ」

「そうか、ここで終わりね」


 戦闘中に出力が25%は致命的だね。

 バリアに回していたバッテリーも終わりか。

 稼働してる機関砲が半分だし、残弾が少なくて単射運用、レーザーは電力不足で超近距離モード、死角が大きすぎて被害が徐々に大きくなっている。


「ちょっと待てよ!俺は死にたくねえ!。……」


 ぶつぶつ怒っていたが、沈黙してしまった。

 AI の電力使用量が急増している。


「お前と心中なんて御免だ。ちょっとズルしたから、敵に狙われなくなったぞ」

「ズルして撃たれなくなる?」

「俺の認識コードを帝国王族の御座船のものに書き換えた。自国の王族を攻撃するAI は居ないでしょ。ミサイルは自動で避けてくれるぞ。ヘッヘッへ」


 本当なら凄いけど、犯罪なんじゃ?

 それって味方からは狙われるよね?


 ドーンッ。

 また大きな衝撃。味方か?


「くっそー、また流れ弾かよ!航行用AI が停まった!もう真っすぐしか飛べない!あー、ダメだダメだダメだ」

「絶体絶命だな。こんな私と心中なんて申し訳無いね」

「やってられるかー!一か八かだ。リソースを全部バリアに使って、慣性で進む。味方は避けてくれるだろう。神様仏様なんでも良いから助けて!」

「仏様ってどこの神様?」


 AI でも神頼みなんだ。

 私は艦長席に座って死を待つ事にする。

 みんな無事に帰ってほしい。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

何度読み返しても誤字脱字を見つけてしまい困りました。AIがチェックしてくれる事を知り、驚愕しています。

文章の変な癖に気がついて面白いです。

楽は出来ないです。

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