始まりの戦い、終わりの戦い①/リール視点
俺は剣先をアクトスに向け強く睨みつけた。
「セリンとライトは手を出さないで」
「大丈夫なのかい?」
ライトは心配そうに言ったが、
「どう思う?」
俺がそう返すと、ニッコリと笑った。
「ほどほどにね」
「ありがとう」
まだ心配そうに見ているセリンの手を引き、ライトが離れていく。
群衆はさらに増え、歓声はさらに大きくなっていた。どうやら建物の上にも人がおしかけているようだった。小さな路地は、さながらコロシアムの様相になっていた。
「や、やるのかこの野郎!!」
アクトスが少し後ずさりしたのが分かった。俺の威嚇に圧されいる。ならばと更に一歩前に出た。すでに間合いは俺に有利だ。
一気に距離を詰めようとしたした瞬間、ファクターの魔力に高まりを感じた。
「拘束!!」
その言葉と共に左手が剣から引き離された。右手の拘束はリフレクトで無効化したが、ファクターは続けて両足の『拘束』を試みてくる。年を重ねてひねくれた魔法を使っていた人間とは思えない。想像以上に真っすぐでいい魔法を使う。
両足に『拘束』がかかりバランスが崩れた。剣を天に向けて投げ、空いた左腕で地面を捕らえ、そのまま体を捻る。地面に両足で着地する前に『拘束』を魔力で全て破壊した。
「死ね!!!!!!!!!!!」
着地する瞬間を狙ってアクトスが剣を振り下ろしてくる。リフレクトは使わない。
「ウインド:剣!!!」
無数の風の刃をアクトスに向かて放つ。アクトスはその刃を叩き落とすために俺への攻撃を諦めた。ファクターが準備していた攻撃魔法もそちらへの防御で、一度リセットされたようだ。
空から落ちてきた剣が地面に突き刺さる。俺はそれを素早く抜くと、ファクターより更に後方にいる―――意識を取り戻したバルドルに向かって思い切り振り下ろした。
「ははっ!! ガキの力で倒せると思うなよ!!」
バルドルが高らかに笑った。ついさっまで意識を無くして、惨めな姿を大衆にさらしていた人間とは思えない自信の回復スピードだ。
だが、その言葉に嘘はない。実際に子供の腕力であることを忘れていた。鍔迫り合いに負け、しっかりと弾き飛ばされてしまった。
「プレーミア:火焔……」
魔力を剣に移し替える。剣が炎を纏う。筋力の不足は魔力で補えばいい。
そのまま魔力を放っていれば、きっとバルドルは死ぬだろう。そう、22年後の戦いのように。
ただそんな事はもう無意味だ。俺自身に殺意を帯びた復讐心がないのは当然だが、群衆が盛り上がり、もはや見世物と化したこの戦いで、バルドル殺すことのメリットは何一つないからだ。
右手に残った僅かな魔力をファクターに向かって放つ。背後で魔力の増大を感じていた。『ウインド:剣』の対処が終わったのだろう。魔力を探知し、背後に向かって放つ。ファクターの杖が弾き飛ばされたのが分かった。
そのまま間合いを詰め、バルドルに向かって剣を思い切り振り下ろす。小細工はしない。バルドルはきっと―――。
バルドルは剣を合わせに来た。そうだ―――避けないことは分かっている。
俺の剣はバルドルと重なり合うことなく、柔らかい布地を切るようにその剣先を切り落とし、肩口へと吸い込まれていった。バルドルの身体がゆっくりと崩れ落ちた。身体に当たる寸前で魔力の質を変え切れないようにしているとはいえ、しばらく意識は戻らないはずだ。
そのまま反転し、剣先をファクターに向ける。ファクターが放ったいくつもの『魔力の弾』を全て剣先から放った『火焔』で叩き落とし、そのまま直撃させた。数十発の小さな『火焔』を受けたファクターが崩れ落ちる。
一瞬の内に二人を倒したことにより、群衆の歓声は最高潮になっていた。
「いいぞ! やっちまえ!!!」「そのまま復讐だ!!」「半殺しにされたって嘘だろ?!!」「4Sって本当にすごいな!!!!!!!!」「魔術師じゃなくて剣士の間違いだろ!!!!」そんな群衆の声が耳に届いてい来た。
そんな中アクトスは、先ほどまでの狂気が嘘のように、落ち着いた目で俺を見つめていた。
「やっぱり、お前が本当の勇者なんだろうな」
アクトスが静かに語りかけてきた
「俺はただの魔術師だよ」
「クソガキが。そこまでの能力があってそれを言うか。どうせ俺のパーティを乗っ取りたかったんだろう? ファクターも、バルドルも俺にはもったいない仲間だったからな」
そう言うと、アクトスは一気に間合いを詰めてきた。先ほどまでとは違う、動きも魔力も質が高まっているのが分かった。
俺は―――必死にその太刀を受け止めた。
「俺が勇者の器じゃないなんて、俺が一番知ってんだよっ!!!!」
アクトスがの慟哭が路地に響いた。
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