ファクターとの決着②/プレミア視点
「さあ! ファクターを倒すぞ!!!」
リール様の掛け声と共に一斉に兵が走り出す。地鳴りのような足音が響き渡る。
スパルナさんは空を翔け、ドルビーが仲間を守り、クリスさんが道を切り開く。みんなも昨日の疲れが残っているはずだ。それでも、命をかけて戦っている。
「久しぶりだな」
リール様の声がとても怖い。その言葉の先には、驚くほど冷静なファクターがいた。
「よくここまで来たわね。今謝れば許してあげてよくってよ? 特別に部下になる権利をあげるわ。あと、そうね、私を好きにする権利をあげるわ」
「好きにする権利は気になるが、喜んでお断りさせていただく。レッドやラグナロクのようになりたくはないからな」
「あら、彼らは私のために命を使えて喜んでいるわよ? あなたもそうなれる可能性を提示してあげたのに」
心底不思議そうな顔をするフォクターが本当に怖い。彼女にとって彼らの存在はなんだったのだろか?
「……一つ教えてくれ。なぜ昔、子供だった俺を半殺しにした?」
「なぜって? 言ったじゃない、あなたが無能だったからよ。 私の傷を治せなかったから。 それに、あれはただの指導。あなたが弱かったから勝手に死にかけてただけじゃない」
淡々とファクターは話す。
「そうかい。それなら俺も心置きなく【指導】が出来る」
その言葉が合図となり、ママが『無効化する魔力』の魔法を開始した。発動までには少し時間がかかる。
動きに勘付いたファクターは、近衛兵達を狂戦士化状態にし、同時にカトブレパスを召喚した。
召喚された2メートル程の、一つ目の獣がこちらを睨む。その瞳から放たれた魔力を受けた者は、為す術もなく石化するという話だった。
しかし、リール様はリフレクトでカトブレパスの『石化の瞳』を跳ね返しあっという間に倒してしまった。ファクターは2体目3体目と召喚を続けるが、リール様は簡単に対処をしていく。
狂戦士化した近衛兵達が迫ってきていた。私は、肉体強化の魔法である『想定される未来』を発動した。
ナイフを取り出し、狂戦士化した近衛兵を切り刻んでいく。人数が多く、ナイフはすぐに刃こぼれしてしまうが、壊れたナイフは『想定される過去』で復活させる。兵士達は止めどなく襲い掛かってくる。
「待たせたわね」
ママが『無効化する魔力』を発動する。
「何をした!! ちっ――魔力がっ」
ファクターが次の手として準備していた『彷徨う死体(ゾンビ化)』の魔法が途中で無力化されたのが分かった。だが、召喚に成功した少数のゾンビが襲い掛かって来る。
『プレーミア 火焔』リール様のその言葉とともにゾンビ達を焼き尽くされた。
「今だ! いけ!」
私はファクターに襲い掛かった。魔法が使えない状態の今がチャンスだ。ありったけの魔力を拳に集める。
その時だった。ファクターが少し笑ったような気がした。背筋に悪寒が走った。
私は急いで距離をとる。
「聖女の毒抜!」ママが呪文を唱える。
私は、自分の口、目、鼻から出血をしていることに気付いた。全く気付かなかった。
身体から毒が消えていくのが分かる。もう少し深く毒を吸い込んでいたら死んでいたかもしれない。
「せっかく綺麗な顔になっていたのに、残念ね」
ファクターが舌なめずりをしながら言った。
「なんで……私の魔法を無力化できましたの?」
そう尋ねるママの顔が、強張っている。
「あんたね、前に会った時に、この私に向かって魔力奪取の結界を使ったでしょ? その魔法の発展先に『無効化する魔力』があるのなんてすぐに分かるわ。その対策をしてこないなんてありえない。そんなことも予想出来ないなんて、相変わらず魔術師としても三流ね」
「くっ……」
魔力が無効化できない。そんな……。
「あら、プレミアまでそんな顔をして。せっかくアクトス様の優秀な血を持っているのに。セリンの血が邪魔しているのね。無能に育って。そうね、私がママになって鍛え上げてよっくてよ?」
「黙れ!!!」
私はバカにされても構わない。ただママを侮辱するのだけは絶対に許さない。
「気にするな!! 攻め続けろ! ファクターの言葉に惑わされるな!!」
リール様の声だった。焔を纏った槍がファクターの肩を貫いたのが分かった。
「があああああああああああああ!!! クソガキがあああああっ!」
ファクターの絶叫が響く。
「もう一度だ! ありったけをぶち込め!!」
その声に反応し、私は再び拳に魔力を集めた。
「プレミア! プレミア! あなたはアクトス様の子供なのよ? セリンはあなたをだましているのよ? お父様に逆らうの? 世界を救った、偉大なお父様を裏切ることになるのよ? 私ならあなたを救える。セリンの汚れた血からあなたを救ってあげられる!!!」
「うるさい」
頭を目掛けて、これ以上ない力を込めて、思い切り殴り飛ばした。
青空に飛び散る鮮血。
ファクターにもう喋る口はない。顔すらも分からない。
この戦いは終わった―――。私達はファクターを殺した。後はアクトスだけ―――。
終わった? 本当に? 憎しみの心はいまだに晴れてはいない。最後の侮辱が、頭からこびり付いて離れない。もう一度、もう一度だけファクターを殺せないだろうか? そうだ、時間跳躍すれはもう一度殺せる―――。
時間を戻して―――心が晴れるまで何度でも殺してやる。
殺してやる! 殺してやる! 殺してやる―――――――――――。
戻れ時間よ―――。
「プレミア、落ち着け」
優しい声に優しい匂い。―――心が少しづつ落ち着きを取り戻していくのが分かる。
「――――――――」
「な、落ち着け」
言葉が出てこない。
ああ、私は今、リール様に抱きしめられているのか。
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