時間跳躍/リール視点
「石は右手ですね」
俺は右手を開きプレミアに隠していた石を見せた。左手も開き、石が入ってないことを確認させる。
「正解。何秒戻したんだ」
「30秒です。それ以前は両手に石があるとリール様が話してました」
「正解。うーん気持ち悪い感覚だ。今の俺は話してないんだけどな。戻って来た瞬間も魔力に変化を感じないし、魔法の再現が難しいな」
「魔力の流れはこの方向ですね。あ、ヒール系に近いのかも」
「ヒール? うーむワカラナイ」
「むずかしいですよね」
プレミアが笑顔で言った。
あの面接から1か月が経った。今は仲間達と戦術的なトレーニングを行い、その空いている時間でガーディンから剣術を、そしてプレミアからは時間跳躍の魔法を教わっていた。
剣術に関しては少し手ごたえを感じ始めているが、このタイムリープに関して全くうまくいく様子がなかった。
「時間を止めることが出来るから、同じ感覚でいけると思ったけど、全然別物だな」
「私は時間を止めることが出来ないので、リール様が羨ましいです」
「止められる時間が数秒程度だし、強い相手だとそもそも効果が期待できない。使いどころが難しい魔法だけどね。ラグナロクに効果があれば、ちょいちょいと倒せて良かったんだけど」
俺はふざけた感じでラグナロクを切るふりをした。
「ふふっ。リール様なら時を止めなくても倒せると思いますよ!」
「今までのやり直しの中で倒したことがないんだろ? 期待されてるなあ」
この一か月、トレーニングをしながらプレミアから色々な話を聞いた。
何度やり直しても母親であるセリンがアクトスやその仲間に殺されてしまったこと。
逃げても逃げても無駄だったこと。
逃げずに戦うことで、セリンの殺される時期がどんどん遅れていったこと。
そして、ついにアクトスを追い詰めたと矢先、賢者の石によりメテオが発動したこと。
少しずつだけど、色々な話をしてくれるようになった。
「いつからタイムリープの魔法をつかえたんだ?」
「そうですね……」
プレミアは目を伏せ黙った。聞いてはいけない質問だったか。話題を変えるべきかもしれない。
「黙ってしまってすいませんでした。ママが……最初に殺された時です」
「そうだったか……」
「正直な話、もうハッキリと当時の事を思い出せないんです。気付いた時には時間が巻き戻っていて、最初は夢の中だと思ったくらいです。魔法を使ったというよりは、強制的に発動したという感じでした」
「戻れる時間の限界が――――冬だったか―――セリンが殺された日でありプレミアの能力が覚醒した日ということか……」
「そうですね。ただ―――なんというか―――私はやっぱり時間を戻していると思いたくないんです」
「どういうことだ? セリンを救うために何度もタイムリープの魔法を使ってきたんだろ?」
「えっと……なんか悪者みたいで嫌なんです。すごく良いことがあった人の出来事もなくなってしまうじゃないですか。だから私は―――ママが死んでしまうことになるこの時間は病気とか大怪我みたいな感じで―――時間を飛びながらこの世界を治している気持ちなんです」
「世界を治している……か」
「はい! 私はこの世界にヒールをかけているんです。そして、私自身がヒールなんです。アクトスという世界を壊している原因を取り除いて、ママが元気に生きている。そんな―――正しい世界の形になるまで私は何度でも戦うつもりです」
話を聞いただけでも100年はこの時間を繰り返しているようだった。何度も戦うという言葉が重く、想像が追い付かないところにあった。
「気持ちはよく分かったよ。話してくれてありがとう。―――もう一度だけチャレンジして今日は終わりにしようか」
「そうですね。疲れましたしね。じゃあここからスタートです。―――――――――はい、10秒間だけ石を両手に持っていました。今は持っていません。」
この一か月で色々な魔術の本を読んだ。そして分かったことは、タイムリープの魔法は『空想魔術』という実現不可能だけど実現出来たら面白いねというものだった。使用する魔力量が現実離れをしているという。
それはストップの魔法を使っていてなんとなく分かった。あくまで止めているのは対象だけ。大きな時間は流れている。それ自体を止めようと思ったら、世界中の魔力を集めても無理だろう。
じゃあなぜ時間が戻っているのか?
正しい世界がある、世界が間違っているという強い気持ち。この世界を治しているという考え。
世界を戻しているのではない。壊れた世界の欠片が散らばっている感覚。
そもそもこの世界は壊れているのか? 自問自答。問題ない。俺にとってこの世界は22年前にとっくに壊れている。
時間の欠片の中に飛び込み、飛び跳ねながら、別の欠片と繋げていく。そんな感覚。
「じゃあここからスタートです。―――――――」
プレミアの声が聞こえる。
「両手に石を持ってるのか」
プレミアは驚きのあまり目を大きく見開いていた。
時間が、戻り始めた瞬間だった。
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