救出作戦03/再会/リール視点
最上階である5階に到着した。周囲を警戒しながら通路を進むと、二人の兵士が扉の前に立っているのが見えた。他の部屋の前には警備がいない。あの部屋にいる可能性が高い。
「ストップ」
兵士の動きを止める。ここまでくれば慣れたものだ。
セリンとプレミアには見張りとなってもらい、ゆっくりと扉を開けた。中にも兵士がいるかもしれない。警戒は怠らない。
俺とスパルナが部屋の中に入ると、一人の少女が窓から空を眺めていた。黒髪が特徴的な少女で、年齢は10歳くらいだろうか。
「ラーちゃんっ!!!」
スパルナはそう言うと走り出し、ラサヤナを抱きしめた。
「ママっ!!!!!!!!! 夢じゃないよねっ!!!!」
「よかったっ! 無事で本当によかった!」
「ママもっ! すごく心配してたっ!!!」
二人は抱き合いながら泣き出してしまった。
よかった。本当に良かったと思う。黒髪の痛みと服に汚れが目立つが、やせ細った感じもなく怪我もなさそうだった。ラサヤナとどこかで会ったような気がしたが、きっと気のせいだろう。最近こんな感覚になることが多い。
「リール……本当にありがとう……」
涙を拭きながら、スパルナは笑顔で言った。
「よかったな。ラサヤナもよく頑張った」
「うんっ!!」
ラサヤナが元気よく返事をした。
「さあ帰ろう。家に帰るまでが救出だ。油断するなよ」
後は城外に出て馬車を回収、ミシリ―へ向かうだけ―――。
ドカン。
爆発音。扉の方だ。
不意を突かれたせいで耳鳴りがする。スパルナはラサヤナに覆いかぶさるように守っている。反射的に『リフレクト』を使ったものの、わずかに遅く、石や木片が二人の身体を傷つけているのが分かった。わずかな血液が空に舞った。
爆煙と共に、魔法により筋肉を膨張させたプレミアとセリンが部屋に飛び込んできた。なんとか体勢を立て直し、セリンは全体回復魔法を唱えた。
みるみる塞がっていく傷口。いつの間にか俺自身もダメージを受けていたようだった。プレミアも右腕が灰のようになっていたが、みるみると回復していく。あの傷が治るのか。
しかし傷は癒えたものの、プレミアの表情は青ざめたままだ。いや、逆にもっと酷くなっている。身体は小刻みに震え、何度も同じ言葉を呟いていた。
「ラグナロク……ラグナロク……ラグナロク……ラグナロク……ラグナロク……」
ラグナロク? どういう意味だ? プレミアは扉の向こう、ただ一点を見つめている。セリンも目を離さない。スパルナも何かに気付いたようだ。ラサヤナを自身の裏に隠し、身体を変化させていく。翼が生え、爪と牙が大きく変化していった。
完全な人化からキングガルーダ形態に近い姿になっていく。身体も今の倍以上になった。
俺も―――その異常な魔力に気付いた。今までに会ったことがない魔力の持ち主が、扉の―――爆煙の向こうに存在する。
次第に開ける視界。耳鳴りは止まり、周囲の音がハッキリと聞こえる。兵士達の声が聞こえる。どうやら城中の兵士達が集められているようだった。
ただ、そんなことはどうでもいい。俺達の目の前には、甲冑を纏った金髪の男が立っていた。
「ラグナロク……」
プレミアが言った。そうか、あいつの名前がラグナロクなのか。
1,000人の兵士よりも、たった一人のこの男を突破する方が難しい。それだけはハッキリと分かった。
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