ケガの理由、戦う理由/リール視点
スパルナと名乗った赤髪の女性はニッコリと微笑み俺の名前を聞いた。その笑顔だけでも明るい人物であることはすぐに分かった。
「リールと言います」
「いい名前ねっ。リールって呼んでいい? 僕のことはスパルナって呼んでいいから」
「どうぞ」
どう呼ばれてどう呼ぶかは特別興味がない。好きにしてくれ。しかし、横たわっていたキングガルーダは跡形もなく消えてしまっていた。となると、考えられることは一つだけだ。
「もしかしてだけど、スパルナがケガをしたキングガルーダなのか?」
「もちろんっ! まだ体のあちこちが痛いけど、この姿に戻れるくらいには回復したよ。本当にありがとね」
感謝されるのは嬉しいが、完全回復していないところに悔しさがある。攻撃系だけでなく、回復系のレベルもあげなくてはいけないなと改めて思う。
「帰ったら凄腕の回復術師がいる。その人に治療してもらえば、あっという間に元通りになるさ」
「なんか至れり尽くせりだねっ」
笑顔が眩しい。魔王と共に街を破壊し尽くした伝説の魔物とはとても思えなかった。話していて明るい気持ちになる。
「人間の姿になれるんだな。初めて知ったよ」
「僕くらいの力があれば簡単だよ。それに、魔王様が消えてしまった今の世界ではこっちの姿の方が生きやすいからねっ」
魔王様という言葉が少し引っかかる。やはり魔物は魔物。人間とは敵対する関係なのだろうか。
「そうか。さっきも言ったけど、人間に手を出したら本当に食っちまうからな」
ガルーダ相手であればそんなに違和感がない言葉であったが、人間の、それも若い女性に対して使う言葉としてはかなり不適切である。
「わかってるってっ! それに僕は人間の街を襲ったことはないし。まあ僕の父さんと母さんがやってたから、同罪だと言われればそれまでだけどさ……。僕は子供の時に人間に救われたから、基本的には敵対するつもりはないよ」
「基本的には、か」
「そっ、基本的には」
少し残念そうな表情が、人間に対して複雑な感情になっているのが分かった。
「例外があるってことが」
「だねっ」
「なんでこんなに大きなケガをしていたんだ?」
傷を治していて、そのダメージが魔法によるものであることはすぐに分かった。しかも、その辺りにいるような魔術師の攻撃魔法ではない。キングガルーダが持つ強力な防御力を貫く『常識外の魔力』によって与えられたダメージだった。魔術師ランク的には、少なくとも3Sレベルはあるはずだ。
「やっぱりわかっちゃうよねっ……。もし……もしだよ? 僕を助けて欲しいって言ったら助けてくれる?」
その言葉には強い覚悟があるようだった。「返答によっては殺す」その位の威圧感があった。
「場合によるな」
だからと言って「はい、助けます」とは言わない。このキングガルーダを助けると判断したのは俺自身だ。もし魔王関係で利用しようと考えているなら、責任を持って俺が殺す。
「そんな恐い顔しないでよっ!……えっとね、僕の子供を救い出したいんだ」
「子供? 救い出したいって、連れ去られたのか?」
「うん……。1週間くらい前に、すっごい強い奴が僕が住んでる村にやってきてね……。人間の姿をして、ひっそりとキングガルーダであることを隠して生きていたのに、なんだかバレててさ。僕の娘ちゃんを連れてっちゃった……」
「ひどい話だ……。それで助けるために戦っていたと。居場所は分かるのか?」
「カサティーユ城だよっ。今もそこにいるはず……。そこには村を襲っためちゃ強い奴がいてさ、そしてやっぱり強くてさ……。なんかの魔法でドッカーンだよ……えへへ」
カサティーユ城―――。今の俺達が行こうとしている場所だ。もしその城の関係者が村を襲って、静かに暮らしていたスパルナの娘を連れ去ったとしたら絶対に許せない話だ。
「分かった、手を貸そう。絶対にその子を助けよう」
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