火焔/リール視点
「反射!!」
小さな魔力に毒が付与されている。きっとそれを吸い込んたんだ。
観光客の男性は吐血を繰り返している。
リフレクトでは毒を反射するだけで周囲に影響が出てしまう。早く対策を打たないと。
「セリン! 毒系の魔法だ!! 倒れた人を治せるか!!」
「もちろんですわ!!」
男性を抱えると呪文を唱えた。両手から光が溢れ出し、男性を包み込むと、みるみるうちに容態が回復していく。
流石、戦いに慣れている。不意を突いた攻撃にも慌てることがない。
「ママ!!!」
走ってやってきたのはプレミアだった。
「魔力の出どころは、塞いだよっ!」
「ありがとう。あとは任せなさい」
男性の頭を1回、2回と撫でると、セリンは立ち上がった。男性は頭下げ、すぐにこの場から離れた。セリンは「バイバイ」と手を振っている。
そして、そのまま右手を高々と上げ、言った。
「光と共に、世界に清らかなる風を『聖女の毒抜』」
セリンから放たれた魔力が広場を、いや村全体を『洗浄』していく。
毒をまとった魔力が全て消えた。
「ファクター……ではないな」
趣味の悪い攻撃からしてファクターかと思ったが、それにしては魔力の質が低い。部下の魔術師だろうか。
「はい。初めて感じる魔力です。あ……一つ知ってる魔力がありますね……」
知っている魔力か。俺も感じていた。この混乱に乗じて3人の悪意がこの村に入り込んでいる。その内の一人はよく知った人物だった。
「お久しぶり、ということですわね」
セリンも気付いたようだ。
広場の入り口を見ると、二人の魔術師を引き連れた筋肉質の大男が、何とも気だるそうに入ってきた。剣と盾が一体型となった大型の武器を軽そうに振り回している。
「よーう。久しぶりだなセリンちゃん」
やはりバルドルか。
相変わらずデカい声だ。22年経ってだいぶ髪が薄くなったようだが、老けた感じはない。
「国王軍の将軍様が直々にご苦労様なことですわ。わたくしはあなたに何の用事もありませんのに」
「つれないなー、セリンちゃんは。若い頃は素直でいいこだったのに。年取るとノリが悪くなるねえ。そんなんじゃ若い男に相手にされないよ?」
「間に合ってますわ」
「はっはっはっ!! 特殊な趣味の男だねー」
会話を聞いてるだけでもイライラする。セリンが侮辱されているのが我慢ならない。
「うるせえよバルドル。おしゃべりに来たならさっさと帰れ」
「なんだー? おやー? 無能の魔術師さんじゃありませんか」
「先日は店を壊してくれてありがとう」
「どういたしまして」
「俺たちを殺しに来たんだろ? 時間の無駄だ。さっさとやろうぜ」
「馬鹿か。将軍様が直々に手をくだす訳ないだろう? 俺様はお前達がいたぶられる姿を見に来ただけだ。おい!」
バルドルがそう言うと、後ろで待機していた魔術師二人が前に出てきた。
「そうだなー。ドラゴンに食いちぎられる姿が見たい」
ドラゴン? どういうことだ?
部下の二人は呪文を唱え始めると、空に裂け目ができた。
「グオオオオオオ」
咆哮と共に現れたのは、ドラゴン二体だった。
「やれーー! あははは! 餌があるぞー」
ドラゴンを久しぶりに見た。魔王の時代はよく暴れていたことを思い出す。
そこまで強いドラゴンではないのは、魔術師の召喚能力が低いためだろう。
「空属性の上位魔法ですね。任せてください、私一人で倒せます」
プレミアの声が力強い。自信があるのだろう。
能力の使い方に特徴があるという話だし、どのように戦うか興味がある。だが、
「一体だけやらせてくれ」
もっと戦いの感覚を取り戻したい。
右手に魔力を溜める。魔力は大きな火の塊となり、右腕全体にまとわりつく。魔力をひたすらに圧縮して、火へ変換する。その作業を繰り返す。
ここまで魔力を高めた攻撃魔法を使うのは本当に久しぶりだ。
右腕が唸りをあげる。「久しぶり、またよろしく頼むよ」そんな言葉をかけたくなる。
「プレーミア、火焔!!!!!!」
空を切り裂く音、火焔が纏う風、そして火焔そのもの、刹那、黒煙。
ドラゴンは細胞一つ残らず消え去っていた。
読んでいただきありがとうございます。ブックマーク本当にありがとうございます。




