五芒星能力判別~セリン~/リール視点
椅子に腰かけるとメイドさんがコーヒーを運んできた。
自分で淹れるコーヒーとまた違う。特に香りがいい。かなりいい豆を使っている。セリンが下着の姿なのは気にしないようにしよう。
「それではリール様、早速お聞きいたしますわ」
セリンはコーヒーを一口飲み、言った。
「待ってくださいセリン様。その『リール様』というのがあま性に合わなくて『リール』と呼び捨てでお願いします」
「あら、そうでしたか。それでしたら私のことも『セリン』とお呼びくださいませ。そして丁寧な言葉使いも必要ありませんわ」
「そちらがよろしければ」
「もちろんですわ。ねえプレミア、リールの希望です。これからはリールとお呼びしましょう」
「私は……」
プレミアは体をもじもじさせている。
「私は……『リール様』とお呼びしたいです……」
頬を赤らめながら、そう俺に問いかけた。何やら随分と期待されているし、気に入られたものだ。そんなに可愛い顔で頼まれたら流石に駄目とは言えない。
「わかった。それでいい」
「やった……!」
「やりましたわね」
二人ともとても嬉しそうだ。仲がいいのがよく分かる。
「話を変えてすまなかった。話はプレミアから聞いた。アクトスから賢者の石を奪いメテオを止めるんだな」
「その通りです。ただ、重要な言葉が抜けてますわね」
プレミアからこの話を聞いた時から、察しはついている。
「国王であるアクトスを殺すんだな」
「その通りです。ただ、今は一国の王。そう簡単にはいきませんわ。かなりの危険が伴います。そこでですが、リールの能力を調べさせていただきたいの」
命をかけた戦いになるだろう。能力を知りたいというのは当然だ。いざ戦いが始まって「想定外の能力でした」は通用しない。
「どうぞ。好きにしてくれ。何でもしますよ」
「ふふふ、楽しみね」
そう言うと、メイドさんを呼び、何やらお願いをしているようだった。
****
少し待つと、メイドさんが大きな布を持ってきてテーブルに広げた。これは俺も知っている。魔術師ギルドでもランク付けに使用されている、五芒星を利用した魔術師が持つ能力の判別方法だ。
布全体に魔力を送り込み、まず五芒星(上向きの星)か逆五芒星(下向きの星)で光と闇を判別する。上なら光を頂点とし火・水・風・土の属性に振り分けられる。下なら闇を頂点とし、空・重・時・命に振り分けられる。これにより、魔術師の得意不得意がほとんど分かるようになっている。
「先にわたくしがやらせていただきます。こちらのご紹介もしないとおかしいでしょうから。その次にプレセア、最後にリールにやっていただきますわ」
それで何も問題ない。俺は頷いた。
懐かしい感覚だ。五芒星の判別を行うのは22年前、10歳の時以来だった。そこで4Sという評価をもらったが故に人生が変わったしまった。
「いきますわよ……んっ………」
セリンが魔力を集め始めた。布の上に魔力を集めると、魔力が自動的に五芒星を描き出す。描き出された五芒星は、2、3回転すると上向きか下向きで止まる。
セリンは予想通り上向きだった。回復魔法を得意とする魔術師は基本的には光属性だ。
「んっ……んんっ!」
さらに魔力を高めている。ここが意外と疲れることを思い出した。能力の高さも判別しているので、自身が持つ魔力を限界まで送り込む。
左辺上部の『水』と右辺下部の『風』が大きく反応した。能力的には2Sから3Sの間、属性は『水』と『風』、若干の『土』といったところだろうか。流石の大魔術師だ。能力の高さ、属性の広さが回復術師として最高レベルだ。
「ふう……。いかがでしたか?」
「これ以上の回復術師はいないな」
「ふふ、照れますわね。次はプレミアね」
「かんばる!! あっ……がんばります!!」
プレミアは「むん」と腕まくりをすると、布の上に手をかざし魔力を集め始めた。
読んでいただきありがとうございます。またブクマ、評価していただきありがとうございます。




