予想外
サーッと草原の草がなびく。
周りには大きな一本の木。それ以外は何も無い。
見晴らしの良い草原に二人の仮面を被った者が立ち尽くす。
「・・・」
「・・・」
「どうしてこんなとこに逃げたと思う?」
「・・・おびきだしたのだろ?」
「何だ、気付いてるんじゃん」
すると、木の裏からスッと逃げ出したもう一人の男が現れる。
その男も同じウサギの仮面を被っていた。
そして二人は同時に仮面を外すのだった。
「ルイ、ご苦労様」
「ちょいと大変だったんだぜ?」
ルイは手をヒラヒラとさせ、やれやれといった様子だ。
「・・・追いかけていた方が黒髪。木の下に隠れていた方が金髪。偽物を追いかけていたみたいだな」
「まんまと騙された訳だね~。どんな気持ち?」
「・・・」
「言っておくが、僕達は君を許さない。大事な仲間をあんなひどい目にあわせたのだから。あんなか弱い女の子を」
ジークは言葉を紡ぎながらも怒り度が徐々に増していっているのが目に見るように分かった。
ルイも同じ気持ちだったがつい最近自分の暴走のせいで、リンとジークに迷惑をかけたのを反省しており制御ができていた。
「ジーク、抑えろよ」
「・・・うん」
「こっからだろ?」
「そうだね」
ジークは息を整え、怒りをおさめた。
「二対一だぜ?それにここまで来る途中で分かっただろ?俺、結構強いよ?」
「・・・二人に増えようが変わらない。金髪の男を殺す。それだけだ」
猫仮面はそう告げると、細身の剣を取り出した。
しかし、一般的な剣とは違った形をしている。
「へ~、珍しい形だな。ナイフも普通のナイフじゃなかったし、お前何者なんだ?」
「お前には関係ない。お喋りはここまでだ」
そう言うと、猫仮面は戦う姿勢をとった。
「そうだな。かかって来いよ」
「言われなくとも!!」
猫仮面は二人の方へと、物凄い速さで接近した。
しかし、ルイとジークは微動だにしない。
それだけでなくルイの方はほんの少しニヤリと笑った。
「残念。試合終了だ」
ルイは右手で指をパチンと鳴らした。
「・・・!(罠!?)」
猫仮面が気付いた時にはもう遅かった。
猫仮面の足元が崩れていく。
(これは・・・落とし穴!しかもかなり大きい。だが舐められた物だ。こんな穴、私の脚力があれば簡単に飛び超えられる)
猫仮面は空中でクルッと回ると、着地の構えを取りながら下へ落ちていく。
それをルイとジークはジッと上で見つめていた。
そして穴の底に猫仮面が着く手前でルイは穴底へ向かって言った。
「ただの落とし穴の訳ないだろ?」
「・・・何!?」
すると穴底で、
バシャアアアン!!!!
と音が鳴り響いた。
ルイ達は落とし穴の中に大量の水を貯めていたのだ。
猫仮面もいくら自慢の脚力があっても空中では何も身動きできず、そのまま水へと落下してしまった。
「僕が頑張って穴を掘って、そこにルイが魔法で水をたらふく入れたんだ。どうかな?お水の味は?」
「お前がとんでもないスピードを持っている事ぐらい宿屋で襲われた時から気付いてたさ。足の力で床を変形させる様な奴なんて滅多にいないっての」
ルイは苦笑いした。
「そんな奴と真っ向勝負は少々怖いとこあったからね。逃げられてもそれは面倒だし。だったら地面踏めないとこへとご招待してやろうと思った訳だ。下が水じゃあ早々には上がってこれないだろ?」
変わらず穴底に向かってルイは喋りかける。
「略して
猫を溺れさせろ!落とし水大作戦!!
だ。壁を昇ろうにも上から俺達からの嫌がらせ攻撃があるのを忘れるなよ~」
「作戦名初めて聞いたよ・・・」
ジークはトホホとした表情をしながら頭を掻く。
猫仮面からは相変わらずアクションが無い。
「ってな訳で流石に降参するんだな。っていうかさっきから聞いてんのか~?」
なかなか返事が聞こえない。
そこから3分程待っても猫仮面からの返事は何もないのだった。
「ルイ、流石におかしいと思う」
「そうだな」
「もしかして下で何か魔法でも詠唱してるんじゃないのかな!?」
「マジか!」
「底の方を火かなんかで照らせないかな?何も見えない」
「待ってろよ~」
ルイはそう言うと手のひらの上に淡く光る物体を魔法でだし、それを穴の中へと放り投げた。
そして二人がまた中を覗き込むと
「・・・何か一生懸命動いてるな」
「何をしてるんだろうか」
「作戦名通り溺れてるんじゃないの?」
「・・・・・ルイ!!耳を澄まして穴底の音を聞いてみてくれ!」
「何だよ?」
「おべぇぼぼぼ!!!ぼぼべおぼっっ!!おばぼぼぼ!!!!」
「ホントに溺れてるじゃねぇか!!!」
「ルイ!助けよう!」
「クソッ!正直気が引けるがリンの前で土下座させる為にはそうするしかないか!」
思いもよらない事態にあたふたしながらも、二人は自分達が作った落とし穴に自ら飛び込むのだった。




