特攻……からの邂逅
いつもなら涼しいと感じる夜のそよ風だけれど、冷や汗のせいかいつもより冷たくて、少しツムギは肌寒かった。
低い唸り声を上げたアカクイドリの二回目の特攻は、一度目より速度が増していた。
もともと、アカクイドリは特攻、旋回する度に速度が増す性質を持つので、戦闘が長引けば長引くほど不利になる。
昼間の冒険者たちが一度目の攻撃を捌けても、その後傷を負ったのはこの性質の為であった。
メードルは再びアカクイドリの攻撃を捌く。
身のこなしは子供とは思えないほど正確だ。しかし、アカクイドリの数は多く、一度に密集して2、3羽来ることがあり、そうすると完全には避けられない。
二度目の特攻を受けたメードルの着ていた革の鎧は、ところどころ切り裂かれ、革の鎧で覆われていない場所は、血で濡れていた。
速度が増したことにより、アカクイドリの攻撃威力も上がって、深い傷も負ってしまったようだ。
それだけでなく、一度目の特攻と同じく、アカクイドリとのすれ違い様にメードルが振るった短剣はアカクイドリを仕留めたが、仕留められたのは2羽くらいで、一度目のとき狩れた7羽を大きく下回っていた。
メードルがアカクイドリを仕留めた数が少なくなった理由は3つある。
一つ目は、アカクイドリの特攻の速度が上がった為。
二つ目は、アカクイドリの血糊で短剣の切れ味が下がった為。
三つ目は、メードルが傷の影響からか、集中力が乱れ短剣の魔力強化の練度が低くなった為である。
速度と攻撃力の上がっていくアカクイドリと、傷が増え集中力も乱れ、攻撃力の下がっていくメードル。
このままではジリ貧だ。
(助けないと……! このままじゃ、危ない! でも、どうやって……)
ーー僕はまだ、生きた動物を攻撃出来てもいないのに。
ツムギは未だに動物を狩ったことも、攻撃が当たったこともない。
それで、どうやってメードルを助けようものか、考えた。
だが、今は考え事をするほどの時間はなかったようだ。
「……っ!」
三度、宵闇に轟く、低い声。
アカクイドリは、三度目の特攻の合図を行った。
(考えている暇はない! ……僕は、攻撃出来るか分からない。だけど、僕の無色透明な魔力じゃダメだ)
ツムギは集中し、己の中にある魔力の質を変える。
今回は、火、水、地、光の四属性を持つ、汎用性の高いネールの魔力を模倣した。
そして、アカクイドリの特攻は始まる。
ツムギはちらりとメードルを見た。
(僕に、気付いてない……?)
もうツムギとメードルの距離は5メートルにも満たない。
そんな近距離にも関わらず、メードルは一切ツムギの方を見ず、ただひたすらにアカクイドリに睨みつけていた。
その瞳に、怯えの色はなく、あるのは「絶対に狩る」という強い意志だけだった。
その姿に、思わずツムギは息を飲んだ。
(助ける、なんて傲慢だった。メードル君はほんの少しも、助けを求めていないのに)
そして、メードルと先頭のアカクイドリは接触した。
ーー速い。
アカクイドリの動き、目に残像が過る。
刹那の間、ほんの少しの動きで躱すメードル。
そして、振るわれる短剣。
後続を意識していたからか、与えられた傷は浅い。
二羽目、三羽目、間隔を開けずに来る。
二羽目を避けるのに体を動かしたが、避けた方向に三羽目。
短剣でいなそうと、その刃を振るうメードル。
そのとき。
アカクイドリの前に現れる水の球。
三羽目の速度が落ちる。
突然のことにメードルは驚く。
しかし、チャンスだと短剣を振った。
絶命するアカクイドリ。
直後来る4羽目。
今いる位置から避けやすい。
剣を振るう時間が確保できたメードル。
そして、すれ違い様に狩る。
剣が続けざま入ったことに、多少の油断が産まれた。
五、六、七、八。
密集して、来る。
しゃがんで避ければ七羽目の攻撃が当たる。
右に避けたら六羽目に当たる。
左に避けたら五羽目に激突する。
五、六、七羽の中央から八羽目が来る。
(どうする)
考えるメードル。
そのとき。
地面が隆起する。
五羽目の動きに合わせ、剣を振る。
その勢いのまま、メードルはしゃがむ。
六羽目が頭上を過ぎる。
七羽目が隆起した地面にぶつかった。
そしてなくなる地面の隆起。
動きの鈍った七羽目に、剣を振るう。
そこに来る八羽目。
避ける。
擦り傷ですんだ。
…………
その後も、アカクイドリを捌くメードル。
危なくなったら的確に入る補助のお陰で、アカクイドリの特攻が終わる頃には全体の約半数を狩っていた。
特に、後半はほとんど狩り逃しがない。
後半になればなるほど、欲しい場所に欲しい補助が入るようになって、あたかもメードルは自分で魔法を使っているような錯覚に陥った。
それくらい正確で精密、無駄がなく、自分の最大限の実力を引き出してくれる魔法の補助。
(こんなレベルの高い魔術師、この村にいたのか……! 一体、誰がーー)
自分を補助した魔術師を探すべく、辺りを見渡したメードル。
そして、目に入った。
「ーーっ……! なんで……、なんでお前がここにいんだよ……?! 悪魔の子供がぁっ!!!」
自分の一番嫌う、狩人の子供が。
ブックマーク、ありがとうございます。
期間を開けての投稿だったので、ポイントが減るかな。と思ったのですが、逆に増えていて、とても嬉しいです。
余談でした。




