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三十六時限目「卑しい外道の惨敗、即ち海原を翔ぶ五羽の圧勝について」

自慢の配下()がやられっぱなしの現状にキレたコリンズによる無意味なテコ入れのブーメランがジェニファーたちを襲う!

「くそ、どういうことだ……やられっぱなしじゃないか!」


 僕ことジョン・コリンズは、悲惨な現状を憂い叫ぶ。

 こんなのあんまりだ。酷すぎる。我が最高の友達ともあろう者達が、あんな奴らに惨敗するなんて。


「おい我が友たちよ、これは何かの間違いだ。そうだろう?

 きっとまだ本気を出せていないんだ、お前達は。

 そしてお前達に本気を出す切っ掛けを与えるのは恐らく僕の役目だ。

 だから僕はお前達に与えよう、本気を出してあいつらに勝利する切っ掛けを。


 さあ、受け取るがいい! これが新たなる力だぁぁぁぁ!」




「何だあれは……コリンズめ、また何か妙な事をやらかすつもりだな」

 私、ジェニファー・ホークスは推察する。

 遠目からなので詳しくはわからないが、配下ともども妙な動きを見せているので間違いはないだろう。

『だねー! よくわっかんないけど、でもどうせ多分大したことじゃないよ。今までだってそうだったでしょ?』

 といった具合に何ともハイテンションな喋りで語りかけて来るのは、ウェットスーツのような外観のフォーム『ファンファン・リバースライダー』を担当するコツメカワウソのスピリットアニマル、オター。

 性格はセルヴァ以上に陽気かつハイテンションで常に声が大きく、内田曰く精神年齢が幼いが故か楽観的で何事も深く考えず軽視しがちな所があるという。

「ああ、そうだったな……然しオター、よく考えろ。確かに今まで我々は常に優勢だった。だが敵もバカではない、常に負け続けていれば何か別の手段で勝ちに来るだろう」

『うーん……つまりどういうこと?』

「……ここは少し様子を見よう、ということだ。幸いにも内田のお蔭で変身の持続時間も伸びて来ているし――」

『大丈夫だってばー。ホークスは心配性だなぁ。そんなに私が弱く見えるの? だったら見せてあげる!』

「何? おい、ちょっと待て――」

『ノットリンク! オートバトルモード!』

 刹那、パロディドライバーから聞いたことのない不穏な字面の音声が鳴り響く。

 見ればドライバーは私の意に反して必殺技発動の準備態勢に入っており、更に連動してスーツまでもが私の身体を乗っ取って必殺技を強制発動させようとしているらしい。

「何だこの機能は!? か、身体が動かん! というか待て、配下どもが妙な動きを――」

 見ればコリンズの配下達が、示し合わせたように何箇所かへ寄り集まっているようだった。気のせいか、融合しているようにも見える。

 どう見ても危ない状況だ。あんな状態の相手へ迂闊に近寄るなど十中八九自殺行為だろう。何としてもオートバトルモードを、というかオターを止めなくては。

「おい、オター! 訊いているのかオター! あれは不味いぞ、奴らめ合体して巨大化する気だ!」

『え? 大きくなるの? ラッキー! 相手が大きくなれば、私の必殺技も当たりやすくなるってことでしょ?

 この技って一人の敵用だから丁度いいよ! それに、合体してるって事はその分まとめて倒すチャンスだよね?』

「ああ、まあ、確かにそれはそうなんだが然しだなオター、よく考えてもみろ。巨大化するということは――」

『いっくよぉぉぉぉぉぉ!』

『フレンドヒッサツ、ファンファン・スライダーキック!』

「行くなぁぁぁぁぁぁっ!」

 必死の抵抗も虚しく、私の身体はスーツに操られるまま虚空に現れた梯子を駆け上がっていく。

 そして頂点に到達すると同時に跳躍し、同じく虚空に出現した細長い板――敵目掛けて伸びるそれは、ほぼ滑り台と言って差し支えない――の上を滑るように下降していく。


 そしてあと一秒と待たずに寄り集まったコリンズの配下達へ飛び蹴りが直撃するかという、その瞬間。


『あれ?』


 配下達の融合は完了。

 大樹の根が如き極太触手の強烈な一撃が、下降中の私達に容赦なく叩き込まれる。


『きゃあああっ!』

「ぐぼろべっ!?」


 触手に薙ぎ払われた私達はかなりの距離まで吹き飛ばされた。当然変身も強制解除されてしまっている。


「ドライバーと私の身体が無事なのが不幸中の幸いか……」

『オターちゃんが咄嗟にダメージを肩代わりしてくれたんですよ。罪滅ぼしですかね』

「だろうな。助かったのは事実だ、説教の時間は減らしてやるか。

 ……然し内田、先程のあれは何だ? オートバトルモードとは一体? 怒鳴り付けたりしないから取り合えず詳しく説明してくれ」

『はい、それについては私も説明しておかなきゃと思いつつ素で忘れてまして……本当にすみません。

 オートバトルモードというのは、先程ホークスさんも体感されました通りのものです。簡単に言えばスピリットアニマルがドライバー装着者の身体を乗っ取って動き回ることが可能になる、というモードになります。

 本来は装着者の方が意識不明の重体とか、外傷などで身体が思うように動かないとかいうような状態に陥った際、スピリットアニマルが装着者の方を補助・護衛するのに用いるよう設計していたのですが……』

「ああいった真似も可能、ということか」

『です……すみません……』

「否、謝るな。確かに君にも責任はあるがあくまで悪いのはオターだ。何より今は眼前の問題を片付けることにしよう。あれらを何とかしなければ」

『ですね』

 決意を固めた私と内田の視線の先には、融合を繰り返し六匹の巨大な怪物と化したコリンズの配下達。

 融合したが故か、何れも先程よりは幾らか複雑で個性を感じさせる形になっており、苦戦することは火を見るよりも明らかだろう。

「……とは言ったものの、どうするかな。普通に向かったのでは先程の二の舞だが」

『大丈夫です。そういうことなら、切り札がありますから。前までの状況だと正直負担と消耗が大きすぎて使えませんでしたけど、今なら大丈夫な筈です』

 そう言って内田が指し示したのは、何れも白と黒をメインカラーとする五本のNETAカートリッジだった。

「これは……」

『オーシャンフライヤー・ファイブ……五つを組み合わせて同時に使うことで初めて力を発揮する、ペンギンの力を宿すカートリッジ群です。ドライバーのスロット全てが塞がってしまうので新しくカートリッジを追加することはできませんが、その分汎用性の高い技が揃っていて比較的状況に左右されない戦い方ができますね』

「ほう、それは面白そうだな。早速使ってみるとしよう」

 私は内田に指示されるまま、五本のカートリッジをドライバーに挿入する。


『カモンフレンズ! オーシャンフライヤー・ファイブ! アワースカイ・イン・ザ・オーシャン!』


 出来上がったフォームは、まさにペンギンをモチーフにしたウェットスーツ風のパワードスーツと呼ぶべきスタイリッシュな外観であった。

 スピリットアニマルは先程内田が言った通り全員がそれぞれ異なる種類のペンギンの力を司っている五人組であり、また彼女らは音楽を愛するアイドルグループでもあるという。更に言えば彼女たちは海鳥であるペンギン本来の性質に加えて工業や農業、スポーツといったような趣味の持ち主でもあり、戦い方や必殺技にもそれが反映されているとの事だった。


「では頼むぞオーシャンフライヤー・ファイブ。君らの力を見せてくれ……まずはカイザー、君だ」

『わかったわ……今日はいい波を呼べそうね……』

 最初に選んだのは、コウテイペンギンのカイザー。彼女はサーフィンの達人であり、これに倣って必殺技もサーフボード型の専用武器を使う。

 私はサーフボード型の武器を空中へ固定し、その上に飛び乗りつつボード後方に備わったスイッチを足で踏むようにして押し込む。すると必殺技発動の準備完了を知らせる音声が鳴り響き、続いて前方のスイッチを足で踏めばあとは発動を待つばかりとなる。


『フレンドヒッサツ! コーリング・ビッグウェーブ!』


 音声が鳴り響くと同時に、どこからともなく高さ何メートルという大波が現れる。ボードごと跳躍した私は波に乗り、そのまま勢いに任せて巨大化した配下の一体目掛けて突撃する。

 巨大化した配下は何本もある腕で必殺技を防御するか、或いは張り手か何かで反撃でもしようと考えているらしかったが、それが実に浅はかで無意味な行動であることはすぐに証明された。


 サーフボードでの突進は誘導弾の如き威力を誇り、多腕の巨大配下を完膚なきまでに粉砕する。

 更にサーフボードに推進力を与えた大波それ自体にも何らかの破壊力があるらしく、咄嗟に分離することで攻撃から逃れようとした配下達さえ残らず滅ぼしてしまった。


「よし、この調子で反撃される前に決めてやるとするか……次は君だ、オンジュン」

『はい、一生懸命頑張ります!』

 続いて選んだのはジェンツーペンギンのオンジュン。名前通り真面目で穏やかな性格の彼女は、然しその大人しい印象からは若干想像し難い趣味の持ち主である。

 その趣味とは――


『フレンドヒッサツ! ロケットラッシュ・フルバースト!』


――宇宙関連、取り分けロケットや宇宙ステーション等を扱う機械工学分野だった。

 そんな彼女の趣味が反映された必殺技は、虚空に召喚した発射筒から爆薬を搭載した小型ロケット――即ち誘導弾ミサイル――を連射し相手を撃滅するという実に単純明快なもの。

 対する巨大配下はどうやら体内から小型の配下を射出し全てのミサイルを打ち落とさんとしているようだが、それが無駄な足掻きであることは一目瞭然であった。

 結果として第二の巨大配下は第一の巨大配下同様呆気なく滅び去ることとなる。残る巨大配下は四体、コリンズも含めれば五体……まあ奴にわざわざ必殺技を撃つ必要は感じないのでやはり四体、といった所だろうか。


「次は君で行こう、マカロニ」

『おっしゃ任せな! 一丁ロックに決めてやらぁ!』

 続くのはイワトビペンギンのマカロニ。彼女の趣味はカイザーと同じく海に関するものだが、彼女は浜辺好きなカイザーとは対照的に海の沖合へ出ることを好む。

 即ちその趣味とは船釣り、取り分けカジキマグロやサメなどの大型魚を狙うパワフルなものを好む傾向にある。


『フレンドヒッサツ! フィッシャーボート・ハイパーアタック!』


 必殺技発動と同時に召喚されたのは、クロスボウにリールを組み合わせたような武器だった。そこから放たれるのは先端にルアーらしきものの備わった釣り糸であり、それらは巧みかつえげつない方法で巨大配下を捕らえ拘束する。

 拘束が完了した所で糸を切り、虚空から小型漁船風のマシンを召喚。その上に飛び乗り、漁船風マシンに乗ったまま猛スピードで突進する。更に進行中、エネルギー体で形作られた実体のない回遊魚やイルカ、サメなどが現れてはマシンへ追従し始める。

 後の展開は語るまでもないだろう。エネルギー体の回遊魚、イルカ、サメたちは次々と縛り上げられた巨大配下へ突撃していき、トドメとばかりに私の乗った漁船風マシンの突撃を受け、遂に第三の巨大配下も撃滅されることとなった。


「さあ、出番だぞボルト」

『え、あ、え? もう出番ですか?』

「ああそうだ。宜しく頼むぞ」

 四番手を務めるのはフンボルトペンギンのボルト。マイペースで天然気味な彼女はしっかり者のメンバー、取り分け先程必殺技を担当したマカロニによく世話を焼かれているらしい。ただそれでも実力が無いというわけではなく、寧ろアイドルとしてのポテンシャルは高いらしい。


『フレンドヒッサツ! シャイニング・アクアシューティング!』


 そんな彼女の趣味は『銃器』であり、オンジュン同様温厚な性格に反して攻撃的なものだ。玩具のみならず実銃をも扱った事があるらしく銃器に関しては幅広い知識を持つが、どちらかと言えば玩具の銃を好み、中でも『安上がりで扱いやすくデザインが自由だから』という理由から水鉄砲を好む。

 それ故にだろう、この必殺技で用いる武器も、夏場の玩具屋へ数千円ほどで売り出されていそうな水鉄砲を思わせる大ぶりかつ派手でSFめいたデザインの大型銃だ。

 如何にも玩具臭いデザインだが、然しその重みと威圧感は確かなもので、第四の巨大配下は狙撃されることを予想してか鋭い形状の小型配下へ分裂し、更に不規則な高速移動を繰り返すことで此方を攪乱しにかかる。

 なるほどオンジュンの『ロケットラッシュ・フルバースト』に葬られた同胞の失敗から学んだということなのだろう。確かに彼女のミサイルではこんな動きをされたら、もしかしたら突破されていたかもしれない。

 だが生憎今から使おうとしている必殺技は『シャイニング・アクアシューティング』、実銃に匹敵する絶大な破壊力を秘めた驚異の水鉄砲による必中必殺の早撃ちだ。


(その程度の動きが何になる……お前達の辿る結末は結局同じだ)


 トリガーを引き絞り、輝き透き通る液状のエネルギーが筋状の弾丸として発射される。

 それらは高速移動する小型配下の一匹へ直撃し貫通、小型配下を内部からバラバラに破壊しつつ複数に分散。

 分散したそれぞれがまた別の小型配下へ直撃しては貫通し破壊し分散。

 直撃、貫通、破壊、分散……直撃、貫通、破壊、分散……直撃、貫通、破壊、分散……あちこちで繰り返される破壊現象が、小型配下達を殲滅していく。

 更に私がトリガーを引いた回数は一回でない為、空中での惨劇はより派手なものになっていた。結果として第四の巨大配下は驚くほど何もできないまま無残に滅ぼされた。


「さあ、残るは一匹……行くぞクイーン」

『ええ、私達であのふざけた奴らをやっつけちゃいましょう!』


 最後の一匹を相手にするのは、オーシャンフライヤー・ファイブのリーダーであるロイヤルペンギンのスピリットアニマル、クイーン。肩書きに反してアイドルとしてはグループ内最若手であり、然し各分野への高い能力と向上心、優れた人格故他四名の推薦を受けリーダーに就任した経緯を持つ。

 内田曰く若手だけあり若干の粗は目立つがそれでも優れた人物であることに変わりはなく、メンバーの為ならば如何なる行動も厭わない献身的な人格者であるという。

 そんな彼女はアイドルとしては確かに若手で経験も浅いが、然し他の様々な分野に精通するマルチワーカーとしての側面もある。主には農業や工業、水産業、土木建築等の他格闘技やお笑いなど挙げればキリがないほどで、必殺技にもそんな彼女の数ある技能の一つが色濃く反映されている。


『フレンドヒッサツ! ユンボ・ザ・ハイジャンプ!』


 虚空から召喚されるのは、パワーショベルのアームだけを独立させたようなもの。即ち必殺技に反映されている技能とは、土木建築に於ける重機の運転技術であった。

 私はアームのバケット部分に飛び乗り、両足に力を籠めパロディドライバーの適当なキーを押す。するとアームは勢いよく駆動し、私を空高くへ上昇させる。

 ある程度上昇した所で私は身を翻し、パロディドライバーへ追加コマンドを入力する。


『フレンドヒッサツ! スカイハイ・ドリーマー!』


 片足を突き出すその構えは、即ち飛び蹴りのそれである。

 ほぼ垂直に、対象物目掛けて飛来するその有り様は、凄まじい勢いも相俟って人間サイズの隕石とも見て取れるだろう。

 地上で待ち構える最後の巨大配下はと言えば、逃げもせず防御の構えも取らず、ただ強靭な手足を用い此方目掛けて垂直に跳躍してくるばかり。どうやら真っ向勝負を挑むらしい。


(いいだろう、その勝負受けて立つ)


 巨大配下の跳躍は思った以上に力強く、


 もしかすれば若干苦戦するかもしれないなどと想いもしたが、



 やはりと言うか何と言うか、

 それも結局杞憂に過ぎず、


 最期の巨大配下もまた例によって空中で爆発四散、呆気なくその生涯を終え、遂にコリンズの配下は全滅することとなる。

次回、コリンズが変貌した驚くべき姿とは!?

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