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三十五時限目「卑しい外道と鉄腕美女の激突について」

すっげー待たせたけどその分前回よりはマシなエピソードになってると思いますので許して下さい。

「よくも……よくも言ってくれたなぁっ! 絶対に言ってはならん一言を!

 もう許せん……侵入者め、お前だけは絶対に許さんぞ! このジョン・コリンズが地獄を味わわせてやる!」

 そう言ってコリンズは懐から何かを取り出した。

 高々と掲げられた青一色のそれは、何とも異様な物体だった。



 形状からして恐らくNETAカートリッジの類なのであろうが、それにしてはやけに大ぶりで分厚く、パロディドライバーに装填できそうなサイズではない。

 更にそれだけのサイズなら何かしらの図柄が描かれていたり、スイッチなどの機構が備わっていてもおかしくない筈なのだが、そういったものも全くない。

 精々中央辺りへ白黒の円――例えるならまるで目玉のようなマーク――があるだけだった。


『!? い、いけませんコリンズ様! それを使ってあぐぅ!?』

「ええい、やかましい! お前らなんぞもういらん! ろくに働きもしない癖に媚び諂おうとしやがって!」

『し、然しそれは……禁断の……使えばご自身の身に危険が及びまっぐふえ!』

「黙れ! お前らなんぞ要らんと言っただろうが! 口答えするな! いや寧ろ喋ろうとするな!」

 パロディドライバーを何度も踏み付けた後思い切り蹴飛ばしたコリンズは、汗だくで髪が乱れているのを気にも留めずに喚き散らす。


「依代が無く消滅しかかっているから助けてくれと願うから!

 こっちが貴重な魔力と明確な存在意義を与えて世話してやったというのに!

 揃いも揃ってろくに働きもせず!

 働いたところで大した成果を出すこともできん!

 口答えはする!

 休憩はする!

 呼んでもすぐに来ない!

 勝手な真似はする!

 かと思えば指示がなければ何もできない!

 挙句労働環境が悪い待遇を良くしろなどと不平不満は言う!」


 血走った眼を見開いて喉が潰れそうな勢いで怒鳴り散らすコリンズの形相は、例えるなら地獄で餓鬼に成り果てた亡者のようだった。


「至高の一族から生じた至高の天才魔術師であるこの僕の管理下で眷属として存在できるというだけで既にこの世の何にも替え難い唯一無二絶対無比の幸福でありそれを何も言わず享受することこそお前達に許された唯一の救済措置であるというのにお前らはそれを拒み分不相応に高望みをし何の努力もしないでただ自分達の権利ばかり主張しやがってもうお前らみたいな役立たず信用できるかそれよりこいつの方がずっと真面目に仕事をこなしてくれるだろうよそうだそうだよ最初からそうすれば良かったんだお前らみたいなゴミなんか雇わずこいつに頼ってれば何ら苦労も失敗もせず完璧に上手くこなせてたんだそういうわけだお前らまとめて全員滅び去れえええええええええええええっ!」


 コリンズは青い物体を掲げながら叫ぶ。


「いざ来たれ、我が真なる魂の友たちよ! この我に背く邪悪なる愚物どもに裁きを下すがいいっ!」


 掲げられた物体が、低い音を立てながら不気味に脈打つ。それに合わせて大地も脈打つように揺れ始め、やがて地中から何かが姿を現した。


「なんだ、あれは……!?」


 地中から姿を現した無数のそれらは、実に異様な姿をしていた。

 ただ"異様"とは言っても、複雑な形をしていたわけではなく、寧ろ特徴らしい特徴は殆ど見られない。

 大きさは実に様々で、掌に乗るような小ぶりな個体から小屋ほどもありそうな巨大個体まで多岐に渡る。

 色もまた千差万別であり、赤や青、緑、黄、紫、橙、白、黒と見知った色が揃う。更には、例えば一口に赤と言っても色味や明暗などで絶妙な差があり、そのカラーパターンは軽く見ただけでも数十通りはあるようだった。

 また、形状も単純なものばかりではあるが幾らかのパターンがある。

 あるものは球であり、またあるものは四面体であり、更にまたあるものは六面体であり――決して単純な図形・記号の域を出ないが、だからこそ人工物じみていて不自然と言う他ない。


 そして、それほどまでに多種多様なそれらにあってほぼ唯一の明確な共通点こそ


(目玉、か……?)


 そう、目玉だった。

 否、厳密には目玉のようなものであり、実は別物なのかもしれないが、ともあれ目玉だ。

 コリンズによって呼び出された異様なものたちは、何れもどこかの一点に白と黒の円を重ねたような目玉らしきものがあったのだ。

 それはちょうど、コリンズが連中を呼び出すのに使った青い塊にあったマークと同じと言えた。


(呼び出されたままじっとしている……一体どれほどの力の持ち主なのか、そもそも何者なのか、不明な点が多過ぎる……)

 だが、どれほどの力を持つ何者であろうとも、この数量では恐らく此方が押し切られるだろう。それだけは確実だ。

(周囲からは優秀な戦士だ、抜群の戦闘センスを持つと言われる私だが……要は『身体を鍛え高性能な武器を手にした単なる人間』に過ぎず能力に粗が多いからな。確かに義手には剣やハンマー、機関銃や真空波発生装置など色々な武器とて出せるには出せるが、正直な所普段からそこまで頻繁に使うわけでもないんだな。

特にこういった連中相手では今一決定打に欠けるきらいがある。なので最善は何らかの決定打を得るか、確実な逃げ道を確保するかだが……)

 後者を実行に移すことはほぼ不可能だろう。私は諸事情から魔術の存在と概要を理解してはいるが、習得はしていない。空間全体が魔術によって構成されているらしいこの空間から逃げ出すことはほぼ不可能と言えるだろう。

(となれば前者だが……さて、どうしたものか……ん?)

 うぅむと頭を抱え考え込んでいると、ふと何かが私の爪先に触れた気がした。気になり足元に目を遣れば、何やら黄色い長方形の物体が転がっていた。

(これは……ミニカー、か? 形からして大型車……それも動物園やサファリパーク等の施設内を巡回する動物型バスのようだが……)

 そう、それは確かに小さな車の玩具だった。独白ではミニカーと形容したが、冷静に考えればそこそこ大ぶりなので小型の模型かラジコンかもしれない。

(然し、一体どこから? というか何なんだこれは。見た所自走してきたようだが……ということは操作者がいるのか?)

 などと考え込んでいると、バスの窓にあたる部分が微かに点滅し、虚空に立体映像が映し出される。

 最初不定形だったそれは段々とヒト型に近付いていき、やがて見覚えのある少女に姿を変えた。

「……内田?」

 思わず声に出てしまう。

 そう、小さなバスから現れた立体映像とは、嘗てコリンズのパロディドライバーに宿り奴から奴隷以下の扱いを受けていた少女・内田であった。

『はい、内田です。名前、憶えていてくれたんですね。嬉しいです』

「ああ、うん……いや、待て。色々と待て。状況が今一飲み込めん。これは一体どういうことだ?」

『あらら、困惑してます? まあしょうがないですよね。僕が貴女の立場だったらきっと、もっと取り乱すだろうなって思いますもん。

 けどすみません、状況が状況なので悠長に説明もしていられないんです。余裕ができたら改めて説明しますから、今はどうか僕に――いえ、僕らに協力してくれませんか? あの人を放っておくと色々と大変なことになってしまう。悪化する前に止めてしまわなきゃいけません』

 実に予想外で、かつ願ってもない提案だった。断る理由が見つからない。

「わかった。是非とも協力させてくれ。私も君と考えは同じだ。

 して、どうすればいい?」

『有り難うございます。じゃあ最初に――』


 内田の指示に従い、私は模型サイズのバスを展開し変形させていく。するとそれは液晶画面と幾らかのキー、そして五つの薄平たい挿し込み口がある機械的なブレスレットへ姿を変えた。

 これぞ自身の依代にして自身そのものでもあるパロディドライバーだと、彼女は語る。


「カートリッジ含め、先程とは随分形が違うようだが」

『契約に使われた魔術で強制的に歪められていたんです。本来の形は彼にとって何かと好ましくなかったんでしょう。

 その時はそれでも仕方ないとか思ってましたけど、こうなったら話は別です。あの人との契約も強制解除されたみたいですし、もう付き従う理由なんてありません。どこまで存在を維持できるかはわかりませんが、少なくとも消滅するまでの間は一緒に戦わせてください』

「ああ、構わんとも。寧ろ君らのような見方がついていてくれるのは私としても心強いことだ。宜しく頼むぞ、内田君」

『此方こそ宜しくお願いしますね……えっと……』

「ホークスだ。ジェニファー・ホークス」

『はい、ホークスさん』

 かくして言葉を交わした私達は、早速コリンズの軍勢を滅ぼすべく立ち上がる。




「ああ……何だあいつら、動いて来る気がないから変な気を起こして現実逃避でも始めたのかとおもったが……どうやら違うらしいな」

 アホどもの動向を敢えて見張っていたこの僕ジョン・コリンズは、そろそろ始末してもいい頃合いかと思い従順な友たちに命令を下す。

「行け、我が真なるフレンズよ! 奴らを消し去り、僕に勝利を持ってこい!」

 命じられるまま友たちは突撃を開始する。

 ああ、これだ。これでいい。これこそ僕が求めていたものだったんだ。




『カモンフレーンズ! スポッティ・ジャンパー! レッツエンジョイ・ハンティーング!』

 パロディドライバーの挿し込み口にNETAカートリッジを装填すると、内田の声とは違う陽気なシステムボイスが鳴り響く。

 立て続けにドライバーを通じて未知なる暖かなエネルギーが体内に迸り、私ジェニファー・ホークスは『装甲パロディスト』へ姿を変えた。

「ほう、これが装甲パロディストか……」

 その姿を一言で言うなら、ネコ科の肉食獣を象ったSF風のパワードスーツといった所か。或いは私も好きな特撮ヒーローの一種とも言えるだろう。斑模様の飛び跳ねる者スポッティ・ジャンパーという名に違わず、全体的にヒョウ柄を思わせる斑模様の装甲版が特徴的だった。

『初めまして、お姉さん。私はサーバルキャットのセルバ。内田ちゃんに代わってこのスポッティ・ジャンパーであなたをサポートするスピリットアニマルだよ!』

「此方こそ初めまして、セルバ。私はホークス、ジェニファー・ホークスだ」

 内田に代わり私を補助するというスピリットアニマル――内田曰く、個々のカートリッジに宿る補助AI――のセルバは天真爛漫で明るく仲間想いな少女で、若干拙い喋りながらも初めてこの形態を扱う私の為に様々なことを教えてくれた。


(まず彼女曰くこのスポッティ・ジャンパー最大の特徴は何と言っても――跳躍ジャンプ力っ!)


 地を蹴り、水平に跳躍する。

 その勢いたるや凄まじく、人とか獣なんてものを通り越し、最早人間サイズの誘導弾。

 強化された結果とは言え、それでも生身ではそうそう体験し得ないであろうスピードに、私は内心戦慄する。


「凄いな、これは……」

『でしょでしょー!? すっごいでしょー!? このスピード、このジャンプ力があればどんな相手だって追い付けないし、戦うのにもすっごく便利なんだよー!』

「ほう……確かにこれは使い勝手が良さそうだな」

 圧倒的なスピードを得た私は、迫り来るコリンズの配下達の攻撃を華麗に避けながら的確に攻撃を叩きこんでいく。スポッティ・ジャンパーの籠手には鋭い爪のような刃が幾つか備わっており、配下達は豆腐や心太のようにいともたやすく切り刻まれていく。


 このまま上手く行けばコリンズの軍勢は案外容易く全滅させられるのでは?


 などと思いもした私だったが、ここでその認識が甘いのだと思い知らされることとなる。


「さあセルバよ、共に征こ……う?」

 ウォーミングアップがてらある程度配下達を切り殺し、さあここからが本番だと気合いを入れた――その刹那。どういうわけか私の全身へノイズのようなものが走り、変身が強制解除されてしまった。

「なっ? どういうことだ、これは……」

『すみません、長い間魔術で歪められていたのをいきなり元に戻した所為で不具合が発生、カートリッジの効果持続時間が圧倒的に短くなってしまってるようです。エネルギーの再充填が済めばまた使えるようになるのがせめてもの救いですね……。

 ともあれ急いで復旧してますが正直元に戻るかどうかも不明瞭なので、以後は長時間のカートリッジ使用を控えて頂けると助かります』

「わかった、ではそうしよう。お互い無理のない範囲で頑張ろうじゃないか」

 まだ八方塞がりというわけではない。やりようは幾らでもあるはずだ。心を奮い立たせ、私はNETAカートリッジを装填する。


『カモンフレーンズ! バスライク・ツインホイーラーズ! チェイス・ザ・ジャーニー!』


 バスライク・ツインホイーラーズは、アライグマとフェネックギツネという二種類の獣の力を宿すフォームであるという。それ故スピリットアニマルも複数内在しており、気の強いアライグマのラク・サンと冷静沈着なフェネックギツネのネックという二人組だ。

 因みにラク・サンの"サン"は敬称の"さん"ではなくれっきとした名前の一部だと言う。


『よぉーし、このラク・サンとネック、ひと呼んでツインホイーラーズにお任せなのだ!』

『時間がない時には打って付けの大技があるからねー』

「大技?」

『そうだよー』

『どんな相手だろうと一発で片付く最強の大技なのだ!』

「ほう、それはいいな……どうすれば使えるんだ?」

『うん、それじゃあまずは――』

 私はラク・サンとネックの指示に従いパロディドライバーのキーを押すと、虚空から自転車の車輪に取っ手を取り付けたようなものが二つほど現れ両腕にマウントされる。

「これは……」

『それは「バスライク・ホイール」』

『ツインホイーラーズをツインホイーラーズたらしめる最高の武器なのだ!』

「これが武器……どう使うんだ?」

『うーん、主に手に持って車輪を回転させながら相手を殴ったりする武器なんだけど、使い方が独特だから地味にめんどくさいんだよねぇ。だから本当は練習してからがいいんだけど……』

『今回は練習してる時間もないから必殺技で一気にカタをつけるのだ!』

「おい、大丈夫なのか。必殺技である以上ある程度使いこなせていないと変な動きになってしまうんじゃないのか」

『だいじょぶだいじょぶ。ぶっちゃけドライバー操作したらあとはその武器投げるだけでいいから』

『ホイールの中にも色々入っててわりと自動的に敵まで飛んでいくから大丈夫なのだ!』

「そ、そうか……」

 果たしてそれでいいのかと突っ込みたい気分だった。だが何分時間が無いので仕方ないと割り切り、指示通りにドライバーを操作していく。

『フレンドヒッサツ! バスライク・ツインホイーラーズ!』

 必殺技が発動可能になったことを知らせる音声が鳴り響いた辺りで、私は配下達の群れ目掛けて二つの車輪型鈍器を投げつける。それらは空中で高速回転しながら飛び回り、逃げ惑う配下達を容赦なく、切り裂くように轢き殺していく。


「想像以上だな……」


 その驚くべき破壊力に思わず声を漏らす。時を同じくしてエネルギー切れにより変身は強制解除され、私は次のカートリッジを選び取りパロディドライバーに装填する。

次回、パロディドライバーの更なる力!

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