十六時限目「大仕事を終えた教師達を待つ更なる大仕事と屋内プールの惨劇について」
7000字オーバー。下ネタ注意。でもわりかし綺麗にまとまった方……だと思いたい。
あと創太郎が結構主人公してるよ! 少なくとも松葉とか繁とか昇よりは主人公してるよ!
「やあ……何とか、終わっ、たね……」
「ええ……どうにか、終わり、ましたね……」
五月も下旬に差し掛かったある日。私こと清木場創太郎と常木先生は、例によって社会科準備室でくつろいでいた。
いや、くつろぐなんて優雅で余裕のあるようなもんではないな。疲れ切ってダラけてた、という感じだ。こんな独白を見た読者はきっと『何でそんなに疲れてるんだ? お前ら猫夢魔と竜人なんだからちょっとやそっとじゃ疲れないだろ』なんて思うことだろう。
確かに片やケットシー型サキュバス、片やドラゴニュートたる私達二人の体力は、自慢する程でもないが中々のものだ。肉体労働の仕事も数多くこなしてきた。
ではそんな私達が一体何にそこまで疲れてたのかと言えば――この時期の高等学校では有り触れた行事であろう――中間考査に関する諸々の作業であった。
問題作成から生徒達への事前指導や試験監督、そして採点……試験監督まではまだ何とかこなせるのだが、採点に伴う気力の消耗は他の作業と比べものにならない程凄まじく(しかも私達は揃って『どんなバカにでも限界まで下駄を履かせて可能な限り赤点は回避させてやりたい』という思いが強く、毎度毎度『本来なら赤点の答案にどうやって下駄を履かせてやろうか』と、採点どころか問題作成の段階からあれこれと策を弄するので余計苦労する羽目になるのもあって)、定期考査の採点の度に社会科準備室でダラけるのは恒例行事と化していた。
「いや然し、こうして採点をする度思うんだが……何で高等学校の定期試験て奴じゃ教科書や授業ノートの持ち込みが認められてないんだろうね」
「またその話ですかい。あんた定期考査期間に入ると毎日四時間に一回ぐらいの頻度でそれ言ってません?」
「仕方ないだろ、本当にそう思えて仕方ないんだから。
定期考査で教科書や授業ノートの持ち込みが許可されれば生徒の成績や学力は恐らく向上するだろうし、それらの重要性が高まるわけだから生徒はより授業へ集中するようになる。
新制度や教材なんてものを導入する必要もなく、ただ生徒に『許可する』と告げさえすればそれで済む話だと思うんだが……」
「そうそう都合のいいことばっかじゃないでしょう。納得させなきゃならない連中が多過ぎる。
そもそもその制度導入した所で成績悪いヤツは悪いままだし採点だって楽にゃならんじゃないですか」
「まあそうだがね、然しだとしてもそうすることによってこうして無理に下駄を履かせなきゃならない奴は少なくとも減るんじゃないかってことさ」
「ああ、成る程。それならわりと負担も減るっちゃ減るわけか……ま、何にしてもこれで期末のある七月までは平和に過ごせるってわけだ」
「いや全くだよ。期末までゆっくりしようじゃないか」
なんて具合に語り合っていた私達は、このまま来月から暫くの間はいつも通りゆっくり過ごせるだろうと思い込んでいた。
まして、翌日になってあんなことになろうなどとは想像さえしていなかった。
「……何だってこんなことになってしまったんだろうねぇ」
「そりゃあ……そう決まったから、でしょうよ」
六月上旬。僕・常木譲とその恋人たる清木場君は、ある事情から県外の有名な観光地を訪れていた。
一体何がどうしてそうなってしまったのかを説明するには、時間を先月の下旬まで巻き戻さねばならない。
中間考査の採点を終えた日の翌日、僕と清木場君はある人物に職員室で呼び止められた。
色黒の肌に黒髪、尖った耳と全体的にすらりと細長い体格が印象的な彼の名はキース・ヴァッシーレ。
この捏海学園大学付属高等学校の教頭を務める、陽気ながら紳士的で人当たりの良いアフリカンエルフの中年男性だ。
一体何事かと尋ねてみれば、彼は僕らに任せたい仕事があるという。
その仕事というのは――
「先生ーっ、早く早くーっ!」
「引率が後から来るなんてアベコベですぜーっ!」
「ああ、わかったわかった」
「待っていてくれ、今行くから」
そう、生徒達の引率である。
ヴァッシーレ教頭が僕らに任せたのは、毎年六月と九月に行われる一年生の学科別県外研修に於ける引率だったのだ。何でも近頃は生体災害の頻発や先々月の賀集敦一味による学校占拠事件等があり保護者からは生徒の身を案ずる声が多く、これを受けた県教委から学校側に高名な生体災害応戦士やそれに匹敵する実力を誇る職員に生徒の引率兼護衛を担当させよとの要請があったらしい。
それで先の学校占拠事件で大活躍した(と世間からは認識されているらしい)僕らにお鉢が回ってきたってわけだ(そもそも過去に色々あった所為で彼も僕らがどういう連中なのかをある程度理解しており、こういう仕事に御誂え向きと判断されたというのもあるんだろうが)。
(だからって何で僕らなんだ……学校が必ずしも安全とは限らないんだからどうせなら学校の方に留まりたかったよ。捏海は行事となると過剰なほど準備や打ち合わせに時間割くんだもんなぁ)
まあ愚痴っていたって仕方がない。僕は一先ず生徒たちと共にこの研修を楽しもうと思うのだった。
(幸いにも研修中だって清木場君と一緒に行動できるんだ。それだけでも運がいいと思わなくちゃな)
学科別県外研修。
捏海学園付属高等学校一年生にとっての通過儀礼と言えるこの行事は、先程も述べた通り毎年六月と九月に実施される三泊四日の研修会だ。
研修というだけあり、校長や理事長は事ある毎に小難しい言葉を並べては『単なる観光旅行ではない』という主張を繰り返しているが、実際冷静に見てみると(と言うか冷静に見るまでもなく)この行事は『単なる観光旅行』に過ぎないというのが実情だった。
(上の面々は学習目的だ、なんてことを言っているが……日程の殆どを生徒が自由に設定可能だからその気になれば三泊四日の殆どを遊んで過ごすぐらいのことはわけないんだよな。
まあ学習目的とされる博物館・資料館見学等の方が寧ろ遊びだという生徒はそちらを選ぶが、学習目的の日程には『客を楽しませる工夫を学ぶ為に遊園地へ行け』とか『舞台演出の工夫を学ぶ為に演劇を見ろ』などというものもあるわけで、もうこうなると言ったもの勝ちという感じしかしないんだよな……)
その後僕らは生徒達に付き添ったり生徒達と別行動を取ったりしながらそれなりに観光地を堪能し、学生や教師を留めるにはもったいないんじゃないかというぐらいの高級ホテルで一夜を過ごす。
そこではまた僕と創太郎君の熱く濃厚なドラマがあったのだが、それについてはまた機会があればお話しするとしよう。
「ィやっふーい!」
「ヒャッハー!」
「おいお前らぁ、燥ぐのは構わんがプールサイド走るんじゃねーぞ。それから飛び込みも殆どのエリアで禁止だからな。他の客も居ることを忘れんなっ」
「はーい」
「わっかりましたー」
翌日の昼。ホテルに備わる広大な屋内プールで、私こと清木場創太郎は水着姿で燥ぐ生徒達に注意を促す。
「聞いてんのか聞いてねえんだかわからねぇな……事故って怪我なんてして欲しくはねぇんだが……」
「まあいいじゃないか、彼らだって元気が有り余ってるんだし。怪我もまた経験にして勲章だよ。傷付くことでこそ学べることもあるという奴さ。多少の怪我ぐらいどうってことないと思わなきゃ」
などと言うのは、私共々プールサイドで生徒達を監視しながらゆったりくつろぐ常木先生だ。
はた目からは適当な事を言っているようにしか見えないが、実際はいざとなれば身体を張ってでも生徒達を危機から救い出さんとする覚悟の持ち主である……と、いう事にしておいてほしい。
「だとしても死んじまったら意味ないんですから防ぐに越したことはないでしょう。
ところで常木先生……」
「ん、何だね?」
「プールサイドで生徒を監視すんのにそういう煽情的な格好はどうかと思いますが」
「んー? 別にいいじゃないか。ただのビキニだろう? それもちゃんと出す所は出して隠す所は隠すタイプの正統派だ。それの何の問題があるというんだ?
それに君だって僕からすれば十分煽情的な格好なわけだが」
「仮にも教育者が生徒の前でそういう格好すんのは問題でしょうが。妙な気起こした奴らが寄って来ねえとも限りませんし、他の教師や教委から後々どんな言いがかりつけられるか。
あとショートスパッツ型の海パン履いてる私を煽情的だと思うのってこの場じゃ殆ど常木先生だけだと思いますがね」
「心配する事はない。言いがかりをつけられようが対抗手段は幾らでもあるし、まして妙な気を起こした悪漢なんぞ退けるのは容易い事だ。もし僕より素早くて腕力のある奴が襲ってきても君が助けてくれるし。
あとスパッツ型海水パンツって素材が身体にフィットするから下半身の色々なラインや起伏が強調されるし露出の少なさが逆にそそるから下手な紐だのブーメランなんかよりよっぽどセクシーなんだよ」
「そりゃあんたが危機だってんなら私ぁ作者脅してでも助けますがね、だとしても――
刹那、私の台詞を遮って広大なプールから爆音が轟くと同時に間欠泉の如き強烈な水飛沫が上がる。
泳いでいた生徒や客達は悲鳴を上げながら逃げ惑い、幾人かは水煙の向こうから伸びてきた何かに絡め取られ捕まってしまう。
あの水煙の向こうに何かが居る……私達が身構えていると、捕まった幾人かの悲鳴を伴い不気味な声が聞こえてきた。
『ンヌギュフフフフフフ……素晴らしい……実に素晴らしいですゾ! この力……まさに本物! これがあれば朕の野望なんてあっと言う間に……ンヌーンギュッフッフッフッフッフッフゥー!』
やがて水煙が晴れ、その向こう側に潜む声の主の姿が明らかになった。
「な、何だあいつはっ……?」
僕、常木譲は水煙の向こう側から現れた物体の全容を見て、間違いなく驚愕していた。
「あれは体毛……いや、触手か? だとしても何故空中に……というかあそこの人面は……」
その物体を一言で言い表すなら『レッドイエティと思しき赤い毛玉のような生首から無数の触手が放射状に生えたような』姿をしていた。
幾束かの触手で若い女ばかり数人――本校生徒も何人か含まれている――を捕縛・拘束したその物体は驚くべきことに何らかのエネルギーによって空中に浮遊しており、その所為で高級ホテルの屋内プールはちょっとした魔境と化していた。
「何にせよ奴をどうにかしなくては……清木場君、捕まった女性たちを傷付けないよう奴を叩くことはできるかい? その隙に僕が彼女らを救出する」
「そりゃまあできるでしょうが……逆の方が良くないですか? 私なら彼女ら全員を一度に抱えて逃げられますし、常木先生の腕前なら奴如き苦戦もせず仕留められると思うんですが。ヘルズスパイラルだって呼べば来るんでしょう?」
「あぁ、まぁそうかもしれないし盟友達も勿論ラッキー君含め呼ぶことは簡単なんだけどさ……奴に捕まってるうちの女生徒をよく見てごらんよ」
「捕まってる女生徒……ああー、岸田に内藤、それにロートシルト……中高一貫で名の知れた『くっころトリオ』が勢揃いたぁ……」
岸田、内藤、ロートシルト――『くっころトリオ』の通称で知られるこの三人は、揃いも揃って才色兼備文武両道の才女として知られる一方末期の潔癖症かつ男嫌いでもあり、その上(所謂中二病というものの一種を患っているが故か)ファンタジーや歴史ものに在りがちな『女騎士』を演じることに異常とも言えるほどの拘りを持っている。
なので(目上、格上、強面、男前等の諸条件を満たさない)男が何らかの形で少しでも接触しようものならやれ騎士の誇りがどうだの汚らわしいだの屈辱的だのと大声で騒ぎ立てるのがお約束となっており、その中でもよく耳にする『くっ、殺せ!』というセリフに因み彼女らは『くっころトリオ』と呼ばれるのである。
「ね? 僕が助けに行った方がいいだろう? 君はその面構えだし向こうから怒鳴り散らされることはないだろうけど、奴ら女騎士を気取ってるくせに都合が悪くなるとすぐ非力でか弱い女学生ぶるからね。それならいっそ多少無理をしてでも僕が助けておいた方がいい」
「ま、それもそうですわな……そんじゃ常木先生、宜しくお願いします」
「ああ、任せたまえ」
「――有機的可変流体金属細胞、基盤S適用、形質A、C、E起動!」
お決まりの台詞で例の姿――銀色の身体に頭を緑色のワニに似せ、背には黄金色をした鷲の翼を生やし、尾を赤紫色に変えて蛇の如くしなやかにしたもの――になった清木場君は、勢いのある力強い羽ばたきで広大なプールの水面上に浮かぶ触手生首に向かっていく。
それと同時に僕も捕まった女性達を助け出すべく、プールの水面を駆け抜ける。
『ンヌギュフフ! ンギュフフフフフ! ヌンギュフフ!』
「くっ、殺せ……殺せえええええ!」
「嫌あああああああ! 嫌ああああああああ!」
「おっかあああさああああああああああああん!」
プールに響き渡る、鼻につく笑い声と女数名の悲鳴。中々の大声だが、この清木場創太郎渾身の咆哮に比べればどうということはない。
「……アリゲーター・シャウト……っ
……グルガアアアアアアアアアアアッ!」
手頃な位置で滞空、息を深く吸い込み溜め込んだ空気に力を乗せて放つ咆哮――常木先生により『アリゲーター・シャウト』と名付けられたこの技は、咆哮という空気振動を(詳しい原理は私自身も解明しきれていないが、少なくとも有機的可変流体金属細胞――以下OVFMとする――による何らかの作用によって)増幅させ強烈な衝撃波にまで発展させ対象物を攻撃するというものであるが、それと同時にエアゾル化させ呼気へ混ぜたOVFMの微粒子を散布し一種の"視えざる攻撃"を仕掛ける側面もある。
『ンぎゅッふグェッ!? な、何なのですゾ!? 一体何が起こったのですゾー!?』
(ちィッ、触手のみならずあの生首も軟体か。しかも衝撃波は届くがやはり、エアゾル化した細胞はこの距離じゃ届かねえ。
そも、女どもを絡め取っている触手を斬らねえことには話が進まねえ……ならば)
『ええいあの忌々しいいびつな化け物め! 畜生の分際で朕の聖域へ土足で踏み入ろうとは言語道断なのですゾー! こうなれば――
「イーグル……ストームっ!」
一旦上昇し、背の翼で起こしては触手生首めがけてぶち込む突風――これまた常木先生から『イーグル・ストーム』の名を貰った技だ。
一見相手を吹き飛ばすだけに見えるが、実際突風には身体から切り離されたOVFMの小片が混ざっており、薄平たく鋭い形状で金属化したこれらは風に乗りつつも私の意志で精密に動く刃状の飛び道具として機能する。
故に――
『のわンっぎゃああああああ!? 朕の、朕の触手がぁぁぁぁ!? というか折角捕まえた玩具がああああっ!』
私の狙い通り、女どもを絡め取っていた触手だけをピンポイントで切り刻む。悲鳴を上げながら落ちていく女どもを、同じころになって辿り着いた常木先生が次々と回収しては安全な場所に避難させていくのがわかる。
だが全員が全員助かったかと言えばそうでもなく――
『ンヌゥゥゥゥ! やらせはせん! やらせはせんのですゾォッ! これしきの傷……これしきの傷ゥゥッ!』
触手生首は私が切断した触手全てを瞬時に再生させ、常木先生が救助し損ねた女の何人かを再び絡め取ってしまう。
(まあ、そうだろうな。まあまた放てばどうってことも――
『そして貴様はさっきから邪魔ですゾォォーッ!』
「!?」
刹那、槍の如く束ねられた奴の触手が私の頭を貫く。
無論、だからといって命に別状はないのだが、肉体の制御機関たる脳を失うという事は再生されるまでの間他の部位が動かし辛くなってしまうということである。
故に私はその隙を埋めるべく尾に意識を集中させ、その先端部をコブラの頭に変化させ代理の頭部を作り出す。
「よっしゃ、あんまやったことねーから上手く行くかわからんかったが何とかなったな。
そんじゃ序でだし、コブラ・スピット――フッ!」
私は尾の先端に形成したコブラの頭(より厳密には口内の毒腺)から、毒液に見立てた液状のOVFMを触手生首の顔面目がけて噴射する。
これぞ常木先生が『コブラ・スピット』と命名した射撃技だ。複数の頭は制御がややこしくなり正直無用の長物なので滅多に使わない技だが、それだけに今回ここまで上手く扱えたのは奇跡に等しいと言っていいだろう。
『な、何ですゾあれわぶらっ!? むぐごー!? ふむぐごー!?』
触手生首の顔面に命中したOVFMは上手い具合に奴の眼鼻と口を覆い尽くし、放射状に生えた無数の触手を次々根元から切り落としていく。勿論その傍から再生していくが、常木先生が残りの女どもを救助するのに何ら支障はなく、私がこいつを始末するにもまたとない好機でもあった。
「そろそろ決めるか……スライム・アンカー!」
私は右腕を触手生首目掛けて長く伸ばし、奴の顔面に張り付けたOVFMを回収しつつそのまま鷲掴みにして引き寄せる。
『むご、むがが! ぐっ……この歪で安っぽい畜生め! 貴様如きが朕に! この朕にこんな真似をして、許されるとおぶらっ!?』
何やらゴチャゴチャ喚いている触手生首を一旦空中に放り投げ、鼻っ面に一発拳を叩き込む。
骨が砕けたり内臓が潰れたような手応えこそないが、痛め付けて黙らせるぐらいのことはできるらしい――或いはもっと強く、鋭く殴るなどすれば打撃も通るかもしれない。
「歪で安っぽい畜生、なぁ……てめえが言うかよ、ゴミクズ」
『な、何いいいい!? 言わせておけばいい気になりおってぇ! この椋木積雪を見くびったこと、後悔させてやりますゾ――
「言いてえこたぁそれだけだな、ゴミクズ」
『ほげ?』
「果たしてこれで殺せるかどうかは不確かだが……殺せてねえなら改めて殺し直すだけのこった」
『貴様、何を――
「ベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベス――」
一言『ベス』と口にする度に一発、先程の一撃より強く鋭い拳を触手生首へ叩き込む。
今度は確かな手応えがある。恐らく生体組織の弾力で軽減しきれない打撃のダメージが奴の内臓に及んでいるのだろう。
「――ベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベスベス――
ベスティア・ディ・メルダァァァッ!」
『ぼンぎっぴひィーっ!?』
シメに強烈な一撃を叩き込んでやると、触手生首は変な悲鳴を上げながら吹き飛んでいき、壁にぶち当たり真下にある深めのプールへ沈んでいった。
「そのまま地獄まで沈んでろ」
振り向き様に吐き捨てた私は、そのまま常木先生と合流する。曰く救助した女たちは全員無事らしい。
これであとは諸方に事情説明なり言い訳なり謝罪でもすればそれで済むだろう、などと思っていたのだが
『ぬううおおおおおおおっ! もう許さん! 絶対に許さんのですゾォォォォォッ!』
そうは問屋が卸してくれそうにもなく、私達は揃って呟く。
「「やれやれ、結局こうなるのか」」
次回、復活した触手生首と対決!




