異世界の真実
「どう?珍しいでしょ?」
彼ははにかみながら声を掛ける。
僕は彼に問いかけた。
「うん、ねぇ、僕の考えている事が解るの?」
「わかるさ!ここは想いが形になる世界だもの!」
「想いが形に?」
僕は彼の答えがよく解らなかった。
「君に素敵なものを見せてあげるよ」
彼は僕の先を飛んでいく。
僕は期待に胸を膨らませながら彼の後をついて行った。
深い深い森を抜けると真っ青な月が僕の目の前に現れた。
そこにはには大きな湖とそして月に寄り添う様に建っている塔が
世界の調和を保っている。
「え?もう夜?」
僕は彼に聞いてみた。
「ここは夜のエリアなのさ!
ここに来ればいつでも月と戯れる事が出来るんだ」
ずっと夜の世界…朝の訪れる事のない世界。
僕の目にはその風景は何だか寂しげに映っていた。
僕は余りにもこの風景に調和している塔に向かって歩きだした。
丁度塔から岸に向かっている橋を見つけたからだ。
(あの橋を渡って塔に登ってみよう!)
僕は意気揚々と歩いていったんだ。
気が付くと、彼はついて来ていなかった。
どうやら森に帰って行ったらしい。
もしかしたら彼は別れの言葉を僕に掛けていた
のかも知れないけれど、そんな言葉が耳に届かない程僕は興奮して
いたんだと思う。
長い橋を渡り湖の中心に建てられた塔へ向かう。
橋を渡り始めた途端、空の星が一斉に降り始めた。
流れ星のシャワーは橋の周りを光のカーテンに変えていった。
不思議な事に流れる星は湖の湖面を音も無く沈んでいく。
不思議で幻想的な風景が僕の目の前で展開されていた。
ついに僕は塔に辿りつく。
そして、当然の様に塔を登り始めた。
塔の中は殺風景でただ上に向かう階段のみが用意されているだけだった。
僕はひたすら上へ上へと塔を登って行く。
壁に張り付いた螺旋階段を気が遠くなる程登って行く。
余りにも長い階段だったので目眩がしてくる。
登っている途中で、宇宙のリズムやDNAの螺旋が僕の頭を流れていく。
もうすっかり目が回って危うく足を踏み外しそうになった頃
目の前に頂上の小さな明かりが見えて来た。
塔の頂上に出た僕は素晴らしい景色に言葉を失った。
「どうだい?気に入ったかい?」
辺りを見回す僕に声を掛けたのはなんと天空で光を放つお月様だった。
「びっくりしているね。当然かな」
確かに月が僕にメッセージをくれていた。
月に口があって喋っているのではなくて直接言葉が頭に聞こえて
来るんだ。
僕は同じ様に想いで月に話しかける。
(初めまして!夜の守護者よ!)
月は静かに語り始めた。
「夜の守護者か!確かにそうかもな
もう私の声を聞く者も少なくなったよ
こうして話しかけるのも随分と久しぶりだよ。」
(この世界はずっと夜のままなの?)
「そう、ずっと夜のまま…面白いだろ?」
(確かに面白い。普通じゃ考えられないけどね)
「何を求めてここに来たんだ?」
(強いて言えば、冒険かな?世界中の不思議が知りたいんだ)
「そうか、最近にしては珍しい若者だ」




