雪の唄
『おはようございます、鏡也様』
『…あれ!?』
僕は気が付けば、時の果てに居た。
『鏡也様、どうかなさいましたか??』
『…あ、いや…。何時の間にここに来たのかなって思ってさ』
『はい、それはですね…。先程鏡也様がお休みになられたので、私が呼んじゃいました』
『…あ、そう…』
呼んじゃいましたって…今までやっぱりこの子がこの世界に連れてきてたんだな…。
『そういえばさ、やっぱりこれって夢なの??』
『前も申しましたが、ここは現実でもあり、夢でもあります』
『…そうだね』
なんか釈然としない。
夢と現実が混同するなんてありえるだろうか??
『今日は何のよう??』
『はい。今日は鏡也様のお返事を聞きたいと思いまして』
『…返事ね…あっ!!』
そうか、すっかり忘れてた。
神の代行者になるとかいう話だな…。
『…どうかなさいましたか??』
『…あ、うん。その話さ、もうちょっと待ってもらえないかな??』
『そうですか、まだ引き受けてはもらえませんか…』
少女は明らかに落胆していた。
そもそもいきなり押し付けておいて、それはないだろう。
『…一つ聞きたいんだけど、良いかな??』
『はい、構いませんよ』
『無差別に選んだって言ってたけどさ、もし僕が断ったらどうするの??他の人に頼むの??』
『それはですね、ありません』
『…え??それはまたなんで??』
『神の代行者を選ぶのは一人と、神からの伝えがあります』
おいおい、そんな事を無差別に決めて良いのかよ。
よりによって僕って…。
『ってことはさ、僕を選んだのは君??』
『はい、そうですが』
『ふーん、どうやって選んだの??』
『それはですね、秘密です』
…秘密ね。
どうせあみだくじとか、地球儀回して適当に指差したところとかそんな単純な理由だからいえないのだろう。
『…そっか。そういえば代行者って具体的になにをすれば良いの??』
『それはですね…鏡也様に探して頂きます。そして世界を変えて頂きたいのです』
『世界を変える??』
意味が分からない。
世界を変える??こんなちっぽけな学生が??
ありえない。
しかも探すってなんだよ。
無責任にも程があるだろう!!
『はい、鏡也様には世界を変えていただきます』
『…僕が変えられることなんて一つも無いよ…』
『いえ、あなたなら出来ます!!』
少女の言葉は今までで一番強く、大きな言葉だった。
どうしてそんなことが言い切れるのだろうか…。
『…買いかぶりすぎだと思うけどね』
『いえ、そうでもございませんよ』
少女はニッコリと笑ってそう言った。
なんの根拠もないその言葉に僕は少し後ずさりをした。
好きな子に告白もできない僕が世界を変えるなんて到底できないと思ったからだ。
『…分かったよ。ちゃんと考えておくよ』
『はい、お願いします』
どうせ夢の話だ。
どう転んでも大きなことにはならないはずだ。
ならせめて、夢の中だけでも少女の希望に添えたい。
そんなことを思いながら、僕は急激に意識が遠のいていくのを感じていた…。




